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2020年04月22日

【新型コロナウイルス】男性は女性よりも重症化リスクが高い 肥満や糖尿病もリスクに

 米国のニューヨーク市は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大がもっとも深刻な地域だ。迅速な危機対応が求められている。
 市内の感染者の医療データの解析により、どんな人が感染すると重症化しやすいかが分かってきた。
 COVID-19が重症した人で多かったのは、男性、高齢者、肥満、糖尿病などの基礎疾患のある人だった。
重症化リスクが高いのは「男性・肥満・基礎疾患あり」
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、これまでの世界中の報告により、性別や年齢層によって感染しやすさが異なり、ウイルス感染の重症度や死亡率に大きな偏りがあることが分かっている。

 これまでの報告で、COVID-19が重症しやすいのは男性、高齢者、肥満、さらには糖尿病・高血圧・心疾患などの基礎疾患のある人であることが分かってきた。

 「New England Journal of Medicine」に4月17日に掲載されたレトロスペクティブ ケース シリーズでは、ニューヨーク市で2020年3月3日~27日に入院したCOVID-19患者の電子カルテのデータ解析が行われた。

 ニューヨーク市で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された393人の患者のうち、35.8%がBMI30以上の肥満で、人工呼吸器が必要となった患者の43.4%が肥満だった。60歳未満の肥満が重症化のリスクとする報告も出ている。

 その結果、年齢の中央値は62.2歳、60.6%が男性、35.8%が肥満だった。症状として多く見られたのは、咳(79.4%)、発熱(77.1%)、息切れ(56.5%)、筋肉痛(23.8%)、下痢(23.7%)、吐き気と嘔吐(19.1%)だった。

 人工呼吸器を使用している患者でも、男性と肥満が多く、多くで肝機能障害と炎症の兆候がみられた。また、他の患者に比べ降圧薬の使用が多く(95.4%対1.5%)、心房性不整脈(17.7%対1.9%)、新規透析導入(13.3%対0.4%)といった合併症も多く見られた。
なぜ男性は女性に比べCOVID-19が重症化するのか
 なぜ男性は女性に比べCOVID-19の影響を受けやすいのかは不明だ。専門家は、新型コロナウイルスが出現してから数ヵ月しか経過していない時点で推測するのは時期尚早だとしながらも、下記のことを指摘している。
 ・ とくに閉経前の女性は男性よりも免疫が優れており、感染に対する回復力が高い可能性がある。
 ・ 男性は女性よりも、肥満、喫煙、アルコールの過剰摂取の割合が高く、健康意識も低い傾向がある。そうしたことが免疫力の低下につながっている可能性がある。

 世界肥満連合(WOF)は、COVID-19が重症化した患者で肥満が多いことについて、次のようにコメントしている。

 新型コロナウイルス感染症は、肥満の状態にある人が感染すると重症化しやすい。BMI(体格指数)が25以上の人は、この感染症のリスクが高いとみられます。

 重症化して重度の呼吸不全となった場合に、集中治療室(ICU)に入室する必要が出てきます。最初の段階では鼻の管を通して酸素をおくり、さらに進行すると加圧酸素マスクを使用します。それでも効果がなければ、人工呼吸器が必要になります。

 肺に直接酸素をおくりこむための管を気管に挿入し、機械によって患者の呼吸を確保します。この気管挿管は、高度の肥満の人では困難な場合があります。

 COVID-19の重症患者に対する呼吸の補助では、医療者は多くのチャレンジを求められています。
糖尿病があると重症化するリスクが
 米疾病対策センター(CDC)が、米国のCOVID-19患者の健康状態について調べたレポートによると、感染した7,162例のうち37.6%(2,692例)が1つ以上の基礎疾患を抱えていた。

 基礎疾患として見られたのは、糖尿病(10.9%、784例)、慢性肺疾患(9.2%、656例)、循環器疾患(9.0%、647例)、免疫不全疾患(3.7%、264例)、慢性腎疾患(3.0%、213例)、妊娠(2.0%、143例)、神経障害・神経発達障害・知的障害(0.7%、52例)、慢性肝疾患(0.6%、41例)だった。

 重症化して集中治療室(ICU)に入った患者457例。このうち糖尿病を併発していたのは、非入院患者で6%(331例)、入院・非ICU患者で24%(251例)、入院・ICU患者で32%(148例)となった。

 ICU入院を必要とした患者で糖尿病を基礎疾患とする比率が増え、糖尿病があると重症化するリスクがあることが明らかになった。
重症化した患者は低所得層に多かった
 ニューヨーク市でCOVID-19が重症化した患者は、低所得層や貧困層、マイノリティに多いことも分かっている。

 同市では、通勤にバスや地下鉄を利用する市民が多いが、年収の高いホワイトカラーでは、感染が広がり始めた早い時期に、自宅で仕事をするテレワークに切り替えた人が多い。それが一因となり、世帯収入の高い地域で感染者数が少なくなったと見られている。

 一方、低所得層や貧困層の多くはテレワークが困難なサービス業に従事している上、仕事を休むと解雇されるリスクも大きい。そうした人々は感染の危険性を承知で、公共交通機関の利用を続けていた。

 低所得層、貧困層はアフリカ系やヒスパニックなどマイノリティに多く、こうした層ではもともと肥満や糖尿病、心血管疾患が多い。COVID-19の感染リスクが高い上に、感染すると重症化のリスクも高いというダブルパンチとなっていた可能性がある。

COVID-19 studies: Obesity boosts risk; diagnosing health workers(ミネソタ大学 2020年4月20日)
Clinical Characteristics of Covid-19 in New York City(New England Journal of Medicine 2020年4月17日)
Symptom Screening at Illness Onset of Health Care Personnel With SARS-CoV-2 Infection in King County, Washington(JAMA 2020年4月17日)
Preliminary Estimates of the Prevalence of Selected Underlying Health Conditions Among Patients with Coronavirus Disease 2019 - United States, February 12 - March 28, 2020(米疾病対策センター 2020年3月31日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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