糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2006年04月01日

1. 男の人生の活力と性

C. 性機能と生活活性・男らしさとの関係

a. 人畜無害の男は男らしさの衰え

 いずれにしても、初めに、最近の男性達には、男らしさが少ないのではと述べましたが、その現象の裏には、そのような男の隠れた生理現象の微妙な変化が潜んでいるように感じております。近ごろのストレス社会の影響で、中高年男性は生活上の心理的抑制により、脳の男性の生物学的性機能が抑え込まれてしまっていて、全体としての男らしさを低くしているというのは言い過ぎでしょうか?

図14

 前述したように、夜間睡眠時勃起現象は下半身の問題でなく、図14に示したようにそれをコントロールしている“脳における男性中枢”の問題なのです。ストレスでそれが抑えこまれ、早々となくなってしまっている方が多いのです。“男の形をしてはいるが、男気のないロボット”とか、“人畜無害の性的意欲のない優しい男性”となってしまっている裏には、そのような生理学的機能の減退、生物心理学的、さらに生物行動学的な非男性化問題が深く潜んでいることを忘れてはなりません。そこに男性更年期障害問題が深刻な問題として最近大きく取り上げられるようになってきたわけです。

 よく“男の性”と言うと、一般的な理解では、単にエロチックな視点からのみ見がちですが、もう少し根本的な“活気ある生き物・男性”という視点から“男の性”を考えてみなければなりません。冗談に“男は狼よ”と言われますが、まず狼のように力強く元気であることなのです。

 図15のような状態は避けなければならないのではないですか?

図15

b. 人生80年時代の男らしさ

 男のシンボルのよう有名のホセイドンの像(図6)のように、逞しく生き生きとした男性たるには、“男の性”をもう少し重視し、大切にしなければならないのではないでしょうか?

図6

 更年期問題はまた後の章で詳しく説明しますが、男の輝きを裏づける“男の性の活性”が強く求められているのです。ことに加齢による全身的な生物学的活性が徐々低下し、気力が衰えつつある中高年男性において、なおさら、この“男の性の生理機能”・“夜間睡眠時勃起現象”すなわち“朝立ち”の年不相応の低下は深刻な問題ではないでしょうか? 男性機能の維持・活性化の医学的対応のもつ意義は極めて重い意味をもつといって過言ではありません。

 かつて人生50年と言われていた時代とは違い、21世紀は人生80年となっております。昔は余生とされていた50歳後の人生が、生殖年代(20〜50歳)とほぼ同じ30年にもなった人生80年時代になっているのです。その新しい30年の人生、私は新世代と呼んでおりますが、この年代を、より生き生きと、生きがいのある生活にをするためには、前述の“食”と“群”の本能だけでは、人間としてのQOLは満たされないのではないでしょうか? それを繋ぐ男の生気の根源である性意識・機能の維持が極めて重要になると思います。

 その基本的な男性機能である夜間睡眠時勃起現象・朝立ち問題を、すぐ単絡的に具体的な性交渉と短絡的に結び付けて考えるのは、いわゆる“アダルト週刊誌的発想”と言わざるを得ませんが、早々と夜間睡眠時勃起現象を喪失している中高年男性が男としての気力を失い、大事男の人生の華の年代における活躍を台無しにしないように、治療しなければなりません。

 より活気あるものに再活性化・回復を図ることで、非常に自信が戻り、心理的に元気が出て、生活上の活動力も高くなることは、よく臨床上経験することです。もちろんそれがさらにパートナーとの具体的な性生活の復活に結びつく流れに繋がることになれば、生物学的に意義はより深いと言えます。いろいろな関係で、そこまでいかなくても、男としての自分の身体的復活をしたことの確認と自覚の心理的効果は予想以上のものがあります。

 ここまで説明してきた“性”の意義は、あくまで“食”に支えられた個人が、生き物としての基本的な活力を維持していることの証拠であり、生物学的機能であることを、臨床的な経験に基づきながら、考察してみたわけです。

[ DM-NET ]

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