糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2006年04月01日

1. 男の人生の活力と性

D. 個人の性機能維持と性生活・Skinshipとの関係

a. 広い意味での性を考えてみよう

 ただ問題は、個人として性機能を維持しておれば、それだけで良いのかということになります。

 先にも説明したように、性は‘個’を“集団・群れ”へ繋ぐ生物学的本能であるとすれば、男として女としての立場に立ったコミュニケーションに繋がらなければ意味がないことになります。やはり、具体的な男女の pair としての心、さらには身体的な skin ship にまで広がらねばならないと言えます。性機能は車のエンジンで、それが動かなければ大きな問題点であるわけで、それが作動して車全体が走らねば意味ありません。

 性意識から出発した積極的な couple におけるお互いのアプローチ、 skin ship の第一歩としての表現はいろいろあると思いますが、台湾では形式な“握手”でなく、握った手を引き寄せる“牽手” (図16)をすることが普及しているとのこと。自ら牽手している所を写真にとらせてくれた、あちらの大学の泌尿器科教授の友人から教えられました。

図16

 そしてそのレベルに止まらず、さらなるより強い skin shipである性生活まで進められるようになることは、非常に意義のあることではありませんか。日ごろの臨床診療上、常に感じていることは、中高年男性にとっての具体的な skin ships、さらには性生活復活の意義は、日常の男性外来の臨床で、まさに“男性の生物としての生存の確認”のようなものではないかとさえ感じております。一緒に受診してくるパートナーが、最近夫が笑うことが増えたとか元気がよくなったと感想をよく述べてくれます。男の心の問題にもつながるのかもしれません。

 人によっては、もう面倒くさいという方もおられますが、それには心理的問題だけでなく、身体の中の男性ホルモンの問題が裏にあるのではないでしょうか?

b. Pairで考え直そう、中高年の性

 それだけ生物学的行為が深層心理に強くかかわっていることが証明されているわけです。

 ただ往々にして、わが国の場合、むしろ中高年男性のパートナーの女性側の方が更年期を境に、かなりな方が性生活に全く関心がなくなり、あまり協力したがらないという男性側の述懐をたびたび耳にします。今後の女性側の性意識の積極的な協力的変化も求めるところはないかと考えています。

図17

 ここの中年夫婦にアンケート調査(図18)にも見られるように、男性側は比較的妻を“恋人”と長く思っているのに、妻側が夫をなんと“同居人”と思っている割合がかなり高いのには驚かされます。男性の revaitalzation(再活性化)ばかりでなく、女性側の心理的 Renaissance(文化的復活)も必要であり、ぜひ求められていると強調しておきたいものです。

図18

 男性たるもの、何も働き盛りの年代ばかりでなく、人生80年代の中高・熟年男性も含めて、all 成人男性が、男らしく、生き物としての男の機能維持の必要性を認識すべきではないでしょうか? 生き物の活力維持または復活することが求められていると言えます。やはり生き物としての食・性・群れの三本能が一応満たされることが、生殖年代を終えてもQOLの基本として必要なのではないかと感じています。

 以上、少し長くなりましたが、“男の性”の意義をいろいろな側面から詳しく説明させていただきました。ご理解いただけたでしょうか?

 多くの中高年男性の方々は、“性”は単なる享楽的なもの、と理解しておられ、それは若い時のもの、もう歳だし関心がないかのように考えておられる傾向があります。しかし、種々説明致したように男性個人にとって“性”は生き物として、極めて重要な意義をもっているものと言えます。さらにまた長寿化時代における更年期・熟年期のcoupleにおける問題として無視してはならない問題として、さらに重視されるべきものと信じております。

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