糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2006年11月01日

2. “ED”という言葉について考える

その4

 このたとえ話からわかるように、男の性的能力を短絡的に、意識的な性欲興奮や相手があって行う性交渉そのものの如く考えるのが、男の生理の本質的視点を忘れていることになることが、はっきり理解できると思います。要するに、試合の時のバッターボックス上の能力の前段階として、監督がまず注目する試合とは無関係のトレーニング時の状況からの能力判定と同じで、医学的には、性興奮時の勃起能ではなく、それ以前の基礎的な生理的機能としての勃起能が問題なのです。

 勃起能の基本は「相手があって性交渉しようとする時の勃起能」(バッターボックスに呼ばれた時と同じ)でなく、いわゆる性欲亢進とは関係なく、男の本質的な生理機能である夜間睡眠時に起こる無意識的勃起現象(日頃の素振りに相当する)なのです。その基礎的な男の夜間における生理機能があるからこそ、覚醒時の“男の性”が動き得るのです。この誤解は、さきほども述べましたが、驚くことに、現在医学生が学ぶ標準的な生理学のほとんどの教科書でも、みられていることなのです。この誤解を解くのには、多くの生理学の大家の啓蒙から始めなくてならないのかもしれません。


睡眠時勃起現象 = 日頃の鍛錬

 女性が妊娠できるか否かは、しっかりと定期的に排卵・月経という、女性としての基本的な生理機能の維持あるや否やに関係するのと、全く同じような男性の基礎的性機能である夜間睡眠時勃起現象が問われるわけです。

 やや機能的に、また表現が異なるものの、一般的な“男の性”を考える場合の性機能は、性交渉とは全く無関係な女性の月経に相当する“夜間睡眠時勃起現象”と言ってよいのです。性的興奮により随時勃起できるためには、まず基本的な勃起能を維持していることが必要なわけであり、前表のA―1) 項の“最も基本的な夜間睡眠時勃起能”がありや否やということになるのです。

 なお、さらにもう一つ、男の性として問題になるには、A―2) の”性的欲望”が起こるかどうかということです。

“性的意欲”があってこそ、その男の性交渉が成り立ち、機能するわけです。先のたとえ話に戻ると、それは野球の試合に出てバッターボックスに立とうとする意欲ありやなしやということであり、その意欲があってこそ、バットを振る能力も選手として意味を持つというものでしょう。


日頃の鍛錬にも、試合に出るのにも、男性ホルモンが必要不可欠

 この心身両面での生理的動きがスムーズに連動することによって、男としての“覚醒時の性”が成り立つと言ってよいのです。そこには、まず性交渉という具体的な機会があるやなしやとは無関係の、男としての“基本的な性の能力”が問題となるのです。バッターボックスに立つのは、監督に呼ばれる機会に恵まれた時、意欲があって、その機会にしっかりと立派にバットが振れなければならないわけです。バ?ターボックスに立ってバットを振るべき意欲があってこそ、その晴れてのゲームのバッターボックスに立てるわけです。次にそこでしっかり上手に打てるや否やには、もう一つ心理的な問題が絡んでくることになります。まさに性交渉も同じ事情にあるのではないでしょうか? その意欲を生むものが男性ホルモンです。

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