糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2007年07月01日

3. 糖尿病における性機能低下

a. 疫学調査法

 そこでとりあえず、私たち男性学の立場から行った、少なくとも年齢別・神経障害の有無別に分類しながら、二つの対象群につきまとめた性機能障害調査成績を、少し古いものですが、現在でもこれだけしっかり検討した糖尿病症例の突っ込んだ詳細な性機能分析は見当たらないので、ここに紹介して、今後の臨床検討の参考に供したいと思います。

 私たちの図1のような、同一の自己記入法の札幌医大式質問紙を用いて、1990年代に行った調査成績を紹介します。上段Aは男性の基本的な性機能チェックです。Bはさらに突っ込んだ具体的な質問です。

図1 札幌医大式性機能質問紙の質問項目と得点

b. 対象症例内容の分析所見

 今回の疫学調査の対象は、札幌医大関連施設症例群(S群)と虎の門病院糖尿病外来症例〔担当:村勢敏郎部長〕(T群)で、両施設で調査を行いました。 同一質問紙で、性機能関連専門医が、性格の異なる糖尿病患者管理指導体制や生活状況の異なる2群を、これほどきちっと調査比較した成績は、我が国ではもちろん国際的にも類を見ないものと自負しています。

 図2にまとめてあるように、札幌医大関連施設症例の方が有意差は無いにしろ、全体として病態が進んでいる症例が多くなっています。このことが、以下に示す分析所見で、札幌医大関連施設症例の性機能低下が全般的にやや重度が高くなっていることに関係しているのかもしれません。

図2 両施設の対象症例における疾患状況の比較

c. 対象症例 性機能例内容の分析方法

 図3は、図1の質問紙を用いて健康男性に行った成績を、年齢ごとに回答得点の累積度数分布を基に点数の低いものから、ラインの下が10%、20%、25%、50%(中央値)、75%、90%の症例が含まれるように作図してあります。

図3 健康男性6,426例における性機能得点の累積度数分布図

左図の「性欲」の点数は図1の質問紙のうちの「視覚性欲」と「接触性欲」の合計、
右図の「勃起」の点数は同じく図1の「陰茎硬度」と「勃起持続時間」の合計。
以下の図も同様。

 このように、健康男性でも、各ラインが加齢とともに右肩下がりになっており、糖尿病症例の性機能を検討する場合も、しっかり個々の症例の“年齢にしたがって”、性機能状態を分析検討しなければならないことがわかります。40歳代と60歳代とは、健常男性でも差があるわけで、その点を十分考慮した判定が求められるのです。往々にして十把一絡げ的議論がなされているのは、男性医学的知識のない方々のやることです。

 そして、次項で挙げる図4や図5における、下方10%領域の症例分布割合が10%以上あれば、同年代の健常男性に比べて性機能低下率が高いことが示されていることになります。

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