HealthDay News

2022年05月06日

50年間の看護師人生と30年間の心臓病患者としての人生――AHAニュース

 Marilyn Rantzさんは、米国ミズーリ州で看護師として50年以上働いてきた。患者のケアはもちろん管理者としての役職も果たし、後半の30年間は大学の教授および研究者としても勤務した。さらに彼女は著書の発行を通して、ミズーリ大学に1億ドル以上もの財政的な貢献をしてきた。

 Rantzさんは、高齢者の自立した生活の支援に重点を置いた看護をしてきた。高齢者がペットとともに暮らすことができる専用住宅「タイガープレイス」の設立に尽力。また居住空間にセンサーを設置し、転倒などの異変を感知するシステムも構築した。米国看護学会はRantzさんの数々の業績を高く評価し2020年、彼女に「Living Legend(生ける伝説)」との称号を贈った。Rantzさんの経歴の素晴らしさをさらに際立たせているのは、彼女がそれらの実績の多くを、自分自身の心臓病の治療を続けながら成し遂げたという事実だ。

 Rantzさんの家系には心臓病が多かったが、彼女はそれほど気にしていなかった。それでも食事には気を付け、1950年代に始まったフィットネスブームに乗って、母親とともに白黒テレビを見ながら腹筋運動などをしていた。

 40歳の誕生日を迎えたのを機に、自分の勤務先の介護施設でコレステロールの検査を受けた。一般的な基準値は200mg/dLとされている総コレステロールが256mg/dLと高めだった。ただし当時の彼女は、コレステロールは心臓病の危険因子のひとつに過ぎず、他の健康状態と合わせて総合的に評価すべき指標であると理解していた。医師も再検査後に、経過観察で良いと判断した。

 6ヵ月後に博士号を取得した後、彼女は勤務中に首から腕に広がる痛みをおぼえた。心電図検査の結果は脚ブロックと呼ばれる状態の不整脈を示していた。2ヵ月後に心臓カテーテル検査を受けた。モニターを見た彼女は、ショックで泣き始めてしまった。そこには、左前下行枝という冠動脈の98%閉塞を含む、多くの閉塞箇所が映し出されていた。

 当時はまだステントなどの治療デバイスが登場するずっと前のことで、最善の治療法はバルーン形成術と呼ばれる、血管内で風船を広げるようにして閉塞部位を拡張する治療法だった。Rantzさんの場合、そのバルーン形成術にも困難をともなった。やがて、ほんのわずかな体動でも胸痛が起きるようになり、ついに仕事中に倒れてしまった。その4日後、4カ所のバイパス手術を受けた。医師はRantzさんの夫に、「手術そのものは成功したが、おそらくあと10年ほどの時間しか残されていない」と伝えた。それは1991年6月のことだった。

 Rantzさんは心臓のリハビリに専念した。長年の看護で培った経験が役立った。その後のRantzさんがこれまでに、医師の予測をはるかに超えて精力的な活動を続けられている理由の一部は、ステント治療などの医学の進歩によるものだ。彼女の心臓には、2003~2014年にかけて5回、ステント留置術が施行された。

 2019年3月のある日、職場でこれまでにない胸の痛みを訴え集中治療室に搬送された。症状発現から2時間以内に2つのステントを留置され、事なきを得た。さらに2020年、そして昨年もステント留置術を受けた。

 Rantzさんはいま71歳だ。仕事はずいぶん減らし、週に2日だけ働いている。「個人としても職業人としても、彼女はヘルスケアのチャンピオンだ。彼女の行いは他の心臓病患者の励みとなっている」と、Rantzさんの元同僚で親友でもあるDonna Ottoさんは話す。

 Rantzさん本人は、「自分がどのような病気に見舞われるか、その選択は不可能だ。しかし、心臓病であれば自分で管理することができる」と言う。さらに、「かつてはあまり良い治療法がなかったが、医学は日進月歩だ」と、患者、そして看護師としての経験を人々に語っている。

[American Heart Association News 2022年5月6日]

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Photo Credit: Marilyn Rantzさん(右/本人提供)
[ Terahata ]

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