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2009年02月26日

果物でビタミン補給 食物繊維、ポリフェノールも豊富

 果物にはビタミンやミネラル、食物繊維、抗酸化物質など、体にとって好ましい栄養成分も多く含まれるが、糖尿病患者には注意が必要な食品。

 果物は野菜とともに毎日食べたい食品だが、最近の果物は糖分が多いものがあり、また、フルーツジュースやドライフルーツといった加工品は糖分が添加されていたり、加工の過程でビタミンや食物繊維が失われている場合もある。皮まで食べる、糖分が多く甘い果物を避けるなどの工夫をして、果物を上手に食事にとりいれたい。
果物は体に良い―栄養機能
  • ビタミンやミネラルが豊富
     果物にはビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB群が多く含まれる。また、高血圧や脳卒中、腎臓病と深い関連のあるナトリウム(食塩)の排出を促すカリウムが含まれる。カリウムは野菜にも多く含まれるが、水に溶ける性質があるため調理によって溶出しやすく、煮こみ料理をすると約30%が失われる。果物であると生のまま食べられるので、腎臓病の治療を受けておりカリウム制限をしていなければ、メリットの多い食品だ。

  • 食物繊維
     果物にはペクチンなどの水溶性食物繊維や、セルロースなどの不溶性食物繊維も含まれる。食物繊維はLDL(悪玉)コレステロールの上昇を抑えるなど、好ましい効果を期待できる。ただし、果物の食物繊維は皮の部分に特に多く含まれる。海外では果物を皮ごと食べる習慣が多くみられるが、日本では皮をむいて食べることが多い。果物の皮を棄ててしまうと大切な食物繊維も失うことになるので、なるべく皮ごと食べたい。

  • ポリフェノール類
     果物には、活性酸素を不活性化する作用のあるポリフェノール類も豊富に含まれる。ポリフェノール類は果物の色素や苦み、渋みの成分で、フラボノイド類、カテキン類などがよく知られている。血液中にある悪玉コレステロールの一部が酸化されると動脈硬化を起こすが、そこにポリフェノールがあると、ポリフェノール自体が酸化されコレステロールが酸化されないようにする作用がある。果物のポリフェノール類も皮に多く含まれる。

  • 果物に含まれる糖分
     「果物は太らない」と思われがちだが、果物に含まれているエネルギーは多い。例えば、温州ミカン100gあたりにエネルギーが46kcal、炭水化物が11.0gが含まれ、中2個を食べると炭水化物はおよそ20gになる。

     果実の種類によって糖分の組成は異なる。果物に含まれる糖分は、主に果糖、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖の3種類がある。二糖類であるショ糖は、消化器官で単糖類に分解された後にエネルギーとして利用される。ブドウ糖や果糖を食事でとりすぎると血糖値が上がりやすくなる。

     果実の甘味の強さをあらわす甘味度は果糖がショ糖の1.1〜1.7倍高い。ブドウ糖の甘味度はショ糖の0.64〜0.74倍。ミカン、バナナ、モモなどではショ糖が多く、ウメ、キウイフルーツなどではブドウ糖が多く、ナシ、リンゴなどでは果糖が多い。ブドウなどでは果糖とブドウ糖とがほぼ同じくらい含まれる。

80kcalあたり果物の分量の目安
80kcalあたり果物の分量の目安 果物を1日80kcal(およそ200g)を食べることが勧められている。皮や芯付きの果物を食べるときは「皮、芯を含んだ目方」が目安になる。
「毎日くだもの200グラム運動指針(6訂版)」より
フルーツジュースは注意が必要
 最近の為替レートの変動の影響で、フルーツジュースの価格が下がってきた。「糖尿病からみるとフルーツジュースは注意が必要」という研究結果が米国で発表されている。野菜や果物を十分にとっている人では2型糖尿病の発症が減る傾向があるが、フルーツジュースであるとむしろ発症が増えるという。

オレンジジュース(濃縮還元)の栄養成分
「五訂日本食品標準成分表」より
 この研究は、野菜や果物の摂取と2型糖尿病の発症リスクとの関連について調べたもので、米国で実施された「ナース・ヘルス研究(Nurses' Health Study)」に参加した女性を対象に、食事についてのアンケート調査で、野菜と果物の摂取、緑色葉物野菜と果物の摂取、フルーツジュース摂取との関係について調査した。心疾患、がん、糖尿病と診断されたことのない7万1346名の看護師を対象に、1984年から18年間にわたり調査を実施した。

 その結果、緑色葉物野菜や果物をよくとっている人では、2型糖尿病の発症が少ない傾向があることが分かった。一方で、フルーツジュースをよく飲む人では糖尿病の発症が増える傾向が示された。リンゴジュースを1日3杯以上飲む人では、1杯未満の人に比べ発症リスクは1.15倍に、グレープフルーツジュースでは1.14倍になった。オレンジジュースを1日1杯以上飲む人では、1杯未満の人に比べ発症リスクは1.24倍になった。

 海外では100%果汁のフルーツジュースであっても、生の果物に比べ加工の過程で食物繊維やビタミンなどが失われていたり、ブドウ糖や果糖などが添加されている場合も多いことが指摘されている。ジュースであれば果物と異なり切ったり皮をむく手間を省き手軽に利用でき、水の代わりに飲むことができる。つい飲みすぎてしまうおそれもある。

 果物にはビタミンやミネラル、食物繊維、抗酸化物質など、体にとって好ましい成分も多く含まれる。糖尿病の食事療法では、新鮮な果物を1日80kcalとることが勧められている。80kcalは例えばミカンでは中2個ぐらい(270g)が目安になる。なるべくフルーツジュースやジャム、ドライフルーツ、缶詰のような加工品を避け、果物を皮まで食べる、糖分が多く甘い果物を避けるなどの工夫をして、上手に食生活にとりいれたい。

参考資料
毎日くだもの200グラム運動指針(6訂版) (農林水産省「平成19年度にっぽん食育推進事業」、2007年11月発行)
Intake of Fruit, Vegetables, and Fruit Juices and Risk of Diabetes in Women
Diabetes Care 31 (7): 1311-1317, 2008.
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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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