糖尿病の食事療法の原則は「適正なエネルギー量の食事、栄養素のバランスがよい食事、糖尿病性合併症の発症、進展防止を図れる食事、規則的な食事」とされていますので、患者さん個々の病態・病期・状態に応じた指示エネルギー量や生活環境に見合ったアドバイスが必要とされます。間食指導は、この原則を遵守しながら、どのように共存していくかが難しいところです。
ですから、食事療法として、患者さんの適正なエネルギー量の範囲内で、生活環境や食生活の嗜好を考慮しつつ、どのような妥協点が見いだせるかを探り、現実的に患者さんができることを見つけ出すということが1つのポイントになってきます。
ただ、現実的には、間食を摂らずに一生を過ごすというわけにはいきません。患者さんのQOLを尊重し、潤いのある“食生活”を得るために、間食がその役割を果たすのであれば、どうしたらよいかを患者さんと一緒に考える必要があります。食べる際は、“これを守って”“ここを注意して”という知識があれば、患者さんも“食べる”ということにもっと意識を持ってもらえるかもしれません。怖いのは、行動変容への知識や意識がないことです。食べ方の工夫としては、以下のようなポイントがあげられます。
1) 何を、どれだけ?
お菓子などの嗜好食品は、単純糖質や脂質が高いことが多く、少量でも高エネルギーの摂取となり、摂取エネルギー量が指示量をオーバーしてしまいがちです。ですから、摂取する食品の“内容”と“量”には注意が必要です。
どのような食品を選ぶとよいか、という部分では、昔から乳製品や果物が推奨されており、家庭でデザートを作ればその量も調節しやすいのでお勧めです。しかし、実生活では働き盛りの会社員、独身、1人暮らしの方など、患者さんの生活環境はさまざまで、市販品や専門店のお菓子、お店などを利用する機会は多いもの。ですから、購入する際の注意点をアドバイスしておくことが有用です。よく言われる注意点としては、
1日の指示エネルギー量の中から、食事量を控えたり、摂取品目を置き換えたり等の工夫や、どれくらいなら指示量オーバーの許容範囲となるか、また、摂取してよい日をどのように設けるかなど、医療スタッフが患者さん個々に検討し、アドバイスすることが望まれます。
2) タイミング
3度の食後に上がった血糖値が、下がろうとし始めた(もしくは上がったまま)時に間食を行うと、再び(もしくは、さらに)上昇してしまうので、高血糖状態が続くことになります。間食を摂る時間として多いのは、10時、15時、夕食後・夜中。最もよくないのは、夜中と言われています。血糖が高いまま就寝することになり、下がりきらないまま起床を迎えることになります。
どのタイミングにしても、摂取すれば血糖値は上がりますが、アドバイスとしてよく使われているのが、“3食の食事の一部として食べてしまう”、もしくは、“外出するなどの活動前やウオーキングなどの運動療法前に食べる”というアイディアです。前者は、1日の血糖上昇の回数を一定にすることと、食事と一緒に計算できるので摂取エネルギー量の把握と管理のしやすさという利点があります。後者は、食べた分をなるべく運動や活動で消費しようという意識と同時に、摂取カロリーを消費するのは困難であることを実感してもらう、という意味合いを持たせているようです。
このようなポイントを注意しながら、患者さんと一緒に間食について考えてみましょう。