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2010年03月02日

インターネット販売の偽造薬に健康被害の危険性

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 インターネットで勃起不全(ED)治療薬などの医薬品を購入することは、それが偽造薬(counterfeit drug)であるという潜在的な危険性をはらんでいるだけでなく、未診断の糖尿病や高血圧症が発見されにくくなる弊害ももたらすという研究結果が、医学誌「International Journal of Clinical Practice」1月号に掲載された。

 研究著者である英ロンドンブリッジ病院のGraham Jackson氏らは、1995〜2009年に英国、米国およびスウェーデンの研究者らが実施した50件強の研究を対象に、特にED治療薬に焦点を置き検討した。偽造薬の増加にED治療薬が与えた影響は大きく、研究では1ヵ月に230万点のED医薬品が処方箋なしで販売されていることが示唆された。
偽造薬による被害を避ける方法は「購入しないこと」
 インターネットでの偽造薬購入のリスクは、一般で考えられている以上に大きい。Jackson氏は「偽造薬に含まれている医薬品成分や不純物が重大な健康障害を引き起こす可能性がある。最悪の場合は死をもたらすおそれがある」と話す。

 2008年には、血糖降下薬の混入したED治療薬を服用した男性150人がシンガポールで病院へ運ばれたことがある。うち7人が意識障害を起こし、4人が死亡したという。

 インターネットでの偽造薬の販売は増加しているが、Jackson氏は「危険なのはED治療薬の偽造薬だけではない」と指摘する。貧血治療のために偽造薬の注射を受けた妊婦2人が死亡した例や、バングラデシュでは車の不凍液として用いられるジエチレングリコールの混入した偽造薬を服用した小児が死亡した例もある。

 欧州連合(EU)と米国食品医薬品局(FDA)によって行われた捜査によると、偽造薬の捜査件数は2000年から2006年までに8倍に増加している。その売上は5年間でほぼ2倍となっており、2010年には750億ドル(約6,800億円)にもなるという。

 欧州で偽造バイアグラを利用した数は250万人にも上るという報告がある。バイアグラを製造する製薬企業のファイザーは、2005〜2009年に法執行機関によって送付された2,383の偽造薬と疑われるサンプルを解析した。ハンガリーから送られたサンプルには覚醒作用のあるアンフェタミンが含まれ、英国から送られたサンプルにはカフェインが含まれていた。

 偽造薬がもたらす問題は健康被害にとどまらない。「医薬品をインターネットで購入した患者が医師の診断を受けずにいることがある。病気の診断と適切な診療が遅れる危険性がある」とJackson氏は指摘している。

 偽造薬による被害を避けるための最良の方法は「購入しないこと」だという。インターネットで販売されている「健康食品」に、医薬品成分が含まれている例も少なくない。必ず医師の診断と処方を受けるよう注意が呼びかけられている。

 日本でも偽造薬や、医薬品成分を含む違法な「健康食品」による健康被害は、相次いで報告されている。なかには日本では承認されていない医薬品が含まれていた例もある。

Counterfeit phosphodiesterase type 5 inhibitors pose significant safety risks
International Journal of Clinical Practice, Volume 64, Issue 4, p 497-504

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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