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2011年07月25日

ピオグリタゾン「全てでがんリスクを高めるものではない」 欧州でも添付文書変更へ

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医薬品/インスリン
 武田薬品工業のピオグリタゾン製剤(商品名:アクトス、メタクト、ソニアス)について、膀胱がんのリスクがあると指摘されていた問題で、日米欧の医薬品認可当局の対応はいずれも「医師への注意喚起」にとどまることがあきらかになった。

 6月にフランスで実施された調査で、ピオグリタゾン製剤(商品名:アクトス、メタクト、ソニアス)について、膀胱がんを発症するリスクがわずかに上昇したことから、フランス国内で新たな患者への処方を控えるよう、フランスとドイツの行政当局から通達があった。武田薬品工業はこれを受け「今後の治療方針に関しては、主治医の先生とご相談いただき、くれぐれもご自身の判断で薬の使用を中止しないようお願い申しあげます」と患者向け文書を公表した。

 6月23日の厚労省薬事・食品衛生審議会で、膀胱がんのリスクが上昇するおそれがあることに対し、「重要な基本的事項」として、「膀胱がん治療中の患者には投与を避けること。また、特に、膀胱がんの既往を有する患者には本剤の有効性および危険性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断すること」などの文言を、ピオグリタゾン製剤の添付文書の使用上の注意に追記することを求め、武田は添付文書を6月24日付で一部改訂した。

 欧州医薬品庁(EMA)は、ピオグリタゾンにより膀胱がんの発症リスクにどのような影響があるかを分析していたが、7月21日に添付文書の変更を推奨する旨を公表した。これにもとづき添付文書を改訂し、膀胱がん患者へ投与しないよう求める。フランスの医薬品当局はアクトスの回収を指示していたが、その後はEMAは欧州の統一方針として、回収ではなく注意喚起へ変更した。

 米国食品医薬品局(FDA)もピオグリタゾンを服用した全ての患者のがん発症リスクを高めるものではないとの見解を示しており、EMAの判断はこれを支持するものとなった。

 欧州医薬品評価委員会(CHMP)は、7月21日まで開催された月次会議で「ピオグリタゾンは2型糖尿病患者の治療選択肢として有用であり、膀胱がんの発症リスクにわずかな増加が見られるものの、添付文書に、新たな投与禁忌、使用上の注意、定期的な安全性と有効性の確認を追記し、適切な患者さんを投与対象とすることでそのリスクを軽減できる」との結論を出している。

 国内で認可されているピオグリタゾンを含む薬の商品名(先発医薬品)は以下の通り(2011年6月現在)。

アクトス錠15、アクトス錠30、アクトスOD錠15、アクトスOD錠30、メタクト配合錠剤LD、メタクト配合錠剤HD、ソニアス配合錠剤LD、ソニアス配合錠剤HD

 日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)は7月25日、「医薬品に関する評価中のリスク」として以下の情報を公表した。

 2011年7月21日に欧州医薬品庁(EMA)は、ピオグリタゾン塩酸塩による膀胱癌のリスクのわずかな増大について、添付文書での禁忌および警告等への追記により、膀胱癌の患者および既往のある患者等には投与を避けるように勧告しました。
  • 国内においては、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会での議論もふまえ、6月24日に添付文書が改訂され、膀胱癌治療中の患者においては投与を避けること等の注意喚起が行われております。
  • 今後、引き続き評価を継続し、評価結果については速やかに情報提供いたします。
  • これらの医薬品を服用中の方は、ご自身の判断で服用を中止したりしないようお願いします。ご不明な点は主治医に相談ください。
ピオグリタゾン塩酸塩製剤による膀胱癌のリスクについて(医薬品医療機器総合機構 2011年7月25日)
European Medicines Agency recommends new contra-indications and warnings for pioglitazone to reduce small increased risk of bladder cancer(欧州医薬品庁 2011年7月21日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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