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2013年06月24日

「主治医に医療費の相談も」糖尿病治療中の森永卓郎氏、語る

医療費とインスリンについて
トークセッションを開催
 セミナーの後半は、糖尿病ネットワークで行ったインスリン療法患者2,650人による調査結果を見ながら、糖尿病治療中の森永卓郎氏と弘世氏によるトークセッションが行われた。(以下、敬称略)

−−現在受けている糖尿病治療には満足されていると答えた人が多いですが、医療費に関しては8割もの患者さんが不満を持っていることがわかりました。

弘世:インスリンの種類、打ち方、回数、単位などにもよりますが、自己負担額は毎月5千〜1万5千円くらいの方が多いのではと思います。

森永卓郎氏

森永:糖尿病患者さんにとって医療費は、支払い続けなくてはならない“固定費”です。ここで嘘をついても仕方ありませんので正直言いますが、私はそこそこ収入があるので毎月数万円の医療費はそれほど痛くはないですけれども、普通のサラリーマンで1万円〜1万5千円が毎月出て行くとなると、生活が圧迫されてしまうのは当たり前です。その結果、自分の趣味や生活を我慢しなければならないとなると、人生の豊かさを削いでしまうということにつながると思うんですね。

弘世:私たち医者に「医療費が払えない」と言ってくる患者さんはほとんどいません。理由不明のまま受診をやめてしまう人の中には、医療費の問題を抱えていた人もいたのかもしれない。

森永:弘世先生がさきほどお示しされたように、経済全体を考えてみると合併症を発症すると桁違いに医療費が増えます。それは本人の負担だけでなく、7割は保険でまかなっているわけですから、国民全体の負担になるわけです。だから“患者さんが払える範囲内の医療費”というものも考えていかないと、国の経済全体がおかしくなってしまうと思うんです。

弘世:今回の調査を拝見して、私も反省しなくてはとつくづく思いました。治療のなかでもインスリン療法になると、使用する薬剤などは「先生にすべて任せます」と仰る患者さんが多いのが実情なのですが、だからといって関心がないわけではない。もっと説明して、納得していただく努力をしなくてはなりませんね。

−−インスリン療法を開始した際、使用するインスリン製剤はどのように決めたか?という質問に、9割の患者さんが主治医の勧める製剤を選択したと回答しています。また、インスリン製剤には価格差があることを約7割の患者さんがご存知なかったそうです。

森永:選択肢があると知っていたとしても、遠慮して言わないのが普通なのではないでしょうか。「もっと安い方法はないんですか?」なんて言えない人の方が圧倒的に多いと思います。私は全然平気なんですけどね(笑)。人に、“セコい”“しぶちん”“どケチ”としょっちゅう言われていて、有吉君には“ケチ狸”とあだ名をつけられたほど。医者には何かあるたびに「もっと安いのないんですか?」と言ってしまう。もう口癖ですね。でも主治医は、「いま稼いでるんだから、これぐらいちゃんと払いましょうよ」と諭されます。

弘世:医療費は交渉したり値切ったりするものではない、というイメージが強くありますからね(笑)。

森永:だいたい、インスリン製剤の値段なんて患者さんは普通知らないでしょ。病院の薬には値段が貼ってあるわけじゃないのだから。そういう意味では、この調査で“価格差を知っている”と答えた3分の1の人はすごいと思う。

−−現在、使用しているインスリン製剤と同等の効果で、より安価なものがあれば9割が“使用したい”と答えています。

弘世:“質が落ちない”というのが重要だと思います。つまり、健康のために質を値切ることはしたくない人は多い。だから、もし質が担保されているのであれば、という条件ならこういう結果になりますよね。

森永:逆に12.3%の“使用したいと思わない”は、どういう人なんだろうと思いました。高くてもいいということですかね?

弘世貴久先生

弘世:いま、ジェネリック医薬品が国の政策のもとで広く知られるようになりました。ですが、「ジェネリックはやめてください」という患者さんはけっこういるんです。つまりブランドに信頼性を求めている人もいるということだと私は思っています。インスリン製剤にはジェネリックはありませんが、「インスリンをジェネリックにしてください」と仰る患者さんがたまにいるんですね。そういう患者さんは、医療費を気にされているのだとわかりますから、価格が違う薬剤もありますよという話をします。人によって使用量も違いますが、年間数千円程度ですが差がでてくる薬剤もありますので。

森永:世の中の大部分の人がそんなに年収あるわけじゃないですからね。年収200万切っている人なんかでは、医療費は生活にもろにひびいてしてしまうと思います。

弘世:「医療費をもっと安くできないか」とほとんど言われることがないのは、患者さんは薬剤の価格差なんて知らないからというのもある。知っていたとしても患者さんの立場としては、主治医の勧めを断ってはいけないと考えてしまう。ですから、こちらからお勧めしてあげない限り、現状では難しいんだろうと感じます。

−−では、患者さんはどうすればよいのでしょうか。

弘世:患者さんは病院だけではなく、毎日の生活が本番です。治療は主治医に丸投げにせず、能動的に取り組んでいただけたらと考えます。いまは、患者さんでも病気のこと、薬のことなどいくらでも調べようがありますから。そしてわからないことや要望があれば、主治医や医療スタッフにどんどん聞いてほしい。その積み重ねが血糖コントロール改善、合併症抑制に必ずつながっていくと思います。

森永:今日の結論は“主治医に正直であれ”ということだと思うんです。患者はいろいろと隠そうとするものなんですよ。だめだと言われていても大食いしたり、お酒飲んだり。そして検査でバレて怒られたり・・・。お金のことも正直に「この額を出し続けるのはきついので何とかなりませんか?」と主治医へ投げかけてみるのが、まず第一歩だと私は思います。遠慮せず、恥ずかしがらず。皆、似たり寄ったりの生活なんですから。決してみっともないことではありません。言ってみたら意外と簡単で、心も懐も楽になると思うんです。

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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