ニュース

2024年04月09日

1型糖尿病患者に「CGM+インスリンポンプ」を提供 必要とする人が使えるように 英国で5ヵ年戦略を開始

 英国の公営の医療サービスである国民保健サービス(NHS)は、CGM(持続血糖モニター)とインスリンポンプを組み合せた「人工膵臓」を、とくにHbA1cが7.5%以上の血糖管理が困難な1型糖尿病の小児・若年患者、妊婦、成人患者が利用できるようにするため、5ヵ年の導入戦略を開始した。

 4.8億円(250万ポンド)の予算を投入し、イングラントの「人工膵臓」を必要とするすべての1型糖尿病患者が使用できるようにすることを目指す。

 「人工膵臓」の利用により血糖管理が改善し、糖尿病合併症を抑制できれば、将来の医療費の削減につながるとしている。現在、英国の1型糖尿病とともに生きる人は26万9,095人に上る。

糖尿病医療を変革し生活の質を向上する新しいテクノロジーを必要とするすべての患者に

 「人工膵臓」は、連続してグルコース濃度を測定し、血糖変動を見える化するCGM(持続血糖モニター)と、インスリンを自動的に投与するインスリンポンプを組合せて、システムが適切なインスリン量を自動で調整し投与する最新のテクノロジーで、「ハイブリッド クローズド ループ システム」として知られている。

 英国の公営の医療サービスである国民保健サービス(NHS)は「人工膵臓」を、とくにHbA1cが7.5%以上の血糖管理が困難な1型糖尿病の小児・若年患者、妊婦、成人患者が利用できるようにするため、5ヵ年の導入戦略を開始した。

 この新しいテクノロジーにより、英国の1型糖尿病とともに生きる人は、毎日のインスリンの自己注射、命を脅かす低血糖と高血糖から解放され、血糖管理を改善できるようになる。

 英国国立医療研究評価機構(NICE)は、NHSによる「人工膵臓」の展開を、昨年12月に承認した。NHSは現在、4.8億円(250万ポンド)の予算を投入し、英国のイングランドの「人工膵臓」の恩恵を受けられる1型糖尿病患者の特定に取り組んでいるという。現在、英国の1型糖尿病とともに生きる人は26万9,095人に上る。

 英国糖尿病学会(Diabetes UK)のCEであるコレット マーシャル氏は次のように述べている。

 NHSが英国の1型糖尿病患者を対象に、ハイブリッド クローズド ループ システムを大規模に展開するのは、とても意義のあることです。糖尿病とともに生きる人々にとって、糖尿病は厳しく容赦のない病気ですが、このシステムは全体的な健康状態と生活の質の両方を改善し、人生を大きく変える可能性があります。これはまさに画期的な瞬間です。

 英国糖尿病学会は、NHSやその他の政府や民間の機関とも協力して、人工膵臓を必要とする1型糖尿病患者に、できるだけ早く届けられるよう取り組んでいます。

 今回の「人工膵臓」の大量の導入は、NHSが主導して、1型糖尿病の成人と小児の計835人を対象に行った、パイロット研究の成功にもとづいている。

 NHSは現在、糖尿病の治療や検査などのために年間に、全医療費の約10%にあたる約1.9兆円(100億ポンド)を費やしている。人工膵臓の導入により、1型糖尿病患者の血糖管理を改善し、糖尿病合併症を抑制できれば、将来の医療費の削減につながると見込んでいる。

 NHSの糖尿病国家専門アドバイザーであるパー​​サ カー教授は次のように述べている。

 ハイブリッド クローズド ループ システムの全国的な展開は、英国で1型糖尿病とともに生きるすべての人にとって素晴らしいニュースです。この最新のテクノロジーは、糖尿病の医療を変革するだけでなく、影響を受ける患者さんの生活の質も大きく向上させると期待しています。

 この「人工膵臓」を実際に利用している、英国南西部にあるプリマスが出身のジェマ ラベリーさん(38歳)は、次のように語っている。ラベリーさんは、NHSによるパイロット研究に参加した。

 クローズドループは、ゲームチェンジャーになると期待しています。高血糖や低血糖が問題になる前に解決してくれるので、仕事関連のストレスが血糖値に影響をもたらすことを心配する必要がなくなりました。それまで私は夜間の低血糖に悩まされていたのですが、夜はぐっすり眠れるようになり、朝の日課が妨げられることもなく、糖尿病の管理はより安定しています。

 南西部にあるウェストデボンが出身のレス ワトソンさん(64歳)は、次のように語っている。ワトソンさんは、44年前に1型糖尿病を発症し、パイロット研究に参加しこの技術革新を直接体験した。

 この人工膵臓システムのユーザーインターフェイスはすっきりしていて分かりやすく作られていいます。複雑で過剰なオプションはなく、必要とする情報をすぐに確認できます。私は高齢者と言える齢になりましたが、日常での使用は迅速かつ簡単で、操作に戸惑うことはありませんでした。

 英アンドリュー スティーブンソン保健大臣は、「1型糖尿病を抱えて生きる人々は、糖尿病合併症を予防し、健康を維持するために、血糖値を厳格に管理する必要があり、そのため絶え間ないストレスに直面しています。この新しいテクノロジーにより、患者さんの負担が軽減され、糖尿病の管理がより改善し、簡単になることを歓迎します」と述べている。

 「これは、糖尿病の転帰を改善し、重篤な合併症を抑制し、管理を簡素化することで、人々の生活をより良くするために、最新のテクノロジーをどのように活用しているかを示す好例となります」としている。

NHS England Rolls Out Artificial Pancreas To People With Type 1 Diabetes (英国糖尿病学会 2024年3月28日)
NHS rolls out artificial pancreas in world first move (英国国民保健サービス 2024年4月2日)
Closed loop systems (artificial pancreas) (英国糖尿病学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲