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2024年04月23日

糖尿病のある人は「がんのリスク」が高い 飲み薬のメトホルミンがリスクを減少 がん予防で必要なことは?

 メトホルミン(ビグアナイド薬)は、2型糖尿病などの治療に広く用いられている血糖値を下げる薬。

 メトホルミンが、血糖値を下げるだけでなく、がんのリスクを軽減する作用がある可能性があることが示された。

 メトホルミンは体重を増やしにくい薬で、体重減少の効果も報告されている。やはり、かかりつけ医に処方された薬をきちんと服用することが大切だ。

メトホルミンは広く利用されている薬 その多面的な作用を調査

 メトホルミン(ビグアナイド薬)は、2型糖尿病などの治療に広く用いられている血糖値を下げる薬。肝臓で糖がつくられる糖新生を抑えることで血糖を下げ、消化管からの糖の吸収を抑えたり、体のインスリンの働きを高める作用などもある。

 メトホルミンは、他の薬と併用しなければ低血糖を起こす危険性は低く、体重を増やしにくい薬なので、肥満のある糖尿病の人にもよく利用されている。

 まれに乳酸アシドーシスと呼ばれる副作用を起こすことがあり、とくに脱水やお酒の飲みすぎなどには注意が必要となるものの、糖尿病の治療に長く使われている実績があり、安全で薬価も安い薬だ。

 そのメトホルミンが、血糖値を下げるだけでなく、がんのリスクを軽減する作用がある可能性があることが、米国国立がん研究所(NCI)などの研究で示された。

 メトホルミンを服用している人は、がんの発症が少ない傾向があり、前向きコホート研究では、がん発症率が35%低下したことが示された。

メトホルミンはがんのリスクを減らす

 研究グループは今回、2023年3月までに公開された160件を超える研究を解析し、メトホルミンについて「使用歴あり」「使用あり」に分類し、がんの診断との関連を調べた。可能な場合には特定のがんの種類ごとに評価した。

 その結果、メトホルミンの服用は、がんの発症を全体的に減らすことが分かった。がんの発症リスクは、メトホルミンを服用している人では、過去から現在へ前向きに観察する研究であるコホート研究では35%、病気にかかった人とかからなかった人の特性を比較する症例対照研究では45%、それぞれ減少した。

 さらに、がんの種類別にみると、前立腺、膀胱、子宮頸、食道、胃、頭頸部、口腔、肺、卵巣、甲状腺の、それぞれのがんのリスク低下についても有意な関連がみられた。

糖尿病のある人はがんのリスクが高い

 「糖尿病のある人は血糖管理が良くないと、がんの発症リスクが上昇することが知られています。血糖管理を改善することで、がんのリスクを減らすことが期待されます」と、オハイオ州立大学がん予防管理部門のホリー ルーマンズ-クロップ氏は言う。

 2型糖尿病がある人は、血糖値が下げるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」があることが多く、そのため血液中のインスリン濃度が高くなることがある。血液中の過剰なインスリンが、発がんに関与している可能性が考えられるという。

 メトホルミンには、このインスリン抵抗性を改善する作用がある。血糖値が高いことによる酸化ストレスや、糖尿病の人にみられる慢性の炎症も、発がんのリスクを上昇させている可能性がある。

 「メトホルミンを服用している人のほとんどは2型糖尿病で、メトホルミンによる直接的ながん予防効果だけでなく、糖尿病の管理を改善したことが、間接的にがんリスクの減少に影響している可能性も考えられます」と、ルーマンズ-クロップ氏は指摘している。 日の歩数の合計が9,000歩から1万歩になるように生活スタイルを調整すると、最良の結果を得られることが示された。

肥満もがんリスクを高める
メトホルミンは体重管理にも役立つ

 メトホルミンは、体重を増やしにくい薬なので、肥満のある糖尿病の人に使われることも多い。メトホルミンによる体重減少の効果も報告されている。

 肥満もまた、がんのリスクを高めることが分かっている。不健康な食事や運動不足により、体内に余った糖を処理するために、多くのインスリンが分泌される。この血液中の過剰なインスリンが、がん細胞を増殖しやすくするとみられている。

 米国内科学会(ACP)の発表した別の研究では、糖尿病予備群と判定された肥満のある人が、食事や運動などの生活スタイルの改善とともに、メトホルミンによる治療を受けると、体重減少を長期間維持でき、糖尿病リスクも減少することが示されている。

 体重管理を成功させ、肥満を解消するために、食事や運動などの生活スタイルの改善がともなうことが重要で、治療薬の服用のみを行い、生活改善にはあまり取り組まなかった人では、糖尿病リスクは減らなかった。

 なお、メトホルミンは主に2型糖尿病の治療薬として使用されており、医師が処方する「処方箋医薬品」に該当する。「ご自分の血糖値や肥満が気になる人は、隠れた病気があるかもしれないので、かかりつけ医に相談することをお勧めします」と、研究者は述べている。

Association of metformin use and cancer incidence: a systematic review and meta-analysis (Journal of the National Cancer Institute 2024年1月30日)
Metformin may help patients maintain weight loss long-term (米国内科学会 2019年4月22日)
Long-Term Weight Loss With Metformin or Lifestyle Intervention in the Diabetes Prevention Program Outcomes Study (Annals of Internal Medicine 2019年4月23日)
Advising Patients on How to Achieve Long-Term Weight Loss (Annals of Internal Medicine 2019年4月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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