糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2006年04月01日

1. 男の人生の活力と性

F. 加齢による生理的変化

a. 男性ホルモンの加齢性変化はバラツキが多い

 さて、生殖年代を終えた更年期から熟年期にいる中高年の男性は、加齢により当然のことながら、その三つの本能、またそれを支えている各種生理機能にそれ相応のかげりが生じてくることは避けられないわけです。

 ただ問題なのは、加齢により徐々に生理機能が低下していくだけでなく、図19に示すように、人間 生き物が生殖を最大の使命として、この世に生まれた任務を果たすために、性ホルモンが思春期から更年期まで与えられているのですが、生殖年代を終えると、図のように下降していく。女性は図20のように、その下降はかなり急ですが、男性では、必ずしも女性に見られるような比較的一様な急な下降でなく、図21のようにかなりバラツキの幅の大きい下降をしているのです。

図19

図20

図21

 この下降の違いが更年期症状の発現頻度や症状内容分布の男女差になっているわけですが、このような男性ホルモンの変動と加齢による全身的生理的変化とが折り重なって、いろいろな体調変化、ことにここで問題にしている性機能の変化が現れてくるのです。

 男性の性機能を司る性中枢機能は血中男性ホルモン・テストステロン濃度につよく依存していますので、先に説明している男性機能のシンボルである夜間睡眠時勃起現象も、そのテストステロンの低下変動に連れて減退していきます。先に示した図11が、その間の事情を反映して、早朝勃起自覚頻度が大きくバラツキながら徐々に低下していくのを示しております。この早朝勃起自覚率の低下にかなり個人によるバラツキが多いことが注目されます。

図11

 このバラツキの多い加齢問題にどのように内分泌学的医学対処があるかについては、後章で詳しく議論させていただきます。ただ問題は、更年期の男性には、ちょうど年齢的に管理職的立場にあってさらされている強い心理的ストレスによる引き起こされているため、それにより情緒中枢さらに性ホルモン分泌管理中枢なども変調し、それによる男性ホルモン低下に加えて、心身症的諸症状などの、Mid-life crisis(中年の危機)と言われる状態に追い込まれ、つらい思いに悩まされることが少なくありません。

b. 中年の危機と言われるものの医学的治療は?

 男子更年期障害はこの男性ホルモン低下と強い心理ストレスという二つの原因が重なることにより発症し、55〜59歳を中心に中年男性を悩まします。その発症病理を図示しますと下の図のようになります。(図22 & 23)

図22

図23

 脳の大脳辺縁系と視床下部とがその二つの原因が折り重なってのしかかってくることにより、かなりな変調を来たします。うつ不安反応と睡眠障害、種々な自律神経失調症さらに性機能障害が臨床症状として出てきます(男子更年期障害については後章で詳しく細述します)。

 この更年期障害が出てきていることを自ら確認しやすいのは、性機能低下、ことに男性更年期障害ではないでしょうか。他の各種症状は、自分では忙しい仕事の疲れと思い込んでいて病識がなく、我慢しつつ必死に仕事に励んでいることが少なくありません。そのためやはり早朝勃起の消失が、人には言えないが、男性更年期障害のサインと自覚しやすいのではないかと考えています。

 中年男性における早過ぎる性の喪失は、男性個人として、深刻なはずでが、欧米諸国とは違い、わが国では意外と問題視されません。これは、現代日本人の性意識の低さ、“あっさり性”によるのかもしれません。しかし次第に欧米並みに性機能障害を注目視するようになりつつあり、徐々に臨床上の問題点となりつつあります。

 要するに、生殖年代を終えたら、性は無用という理解は今や通用しなくなっております。その後の年代である更年期さらに塾年期を通して性の生き物としての意義は高く、“性は生の確認”といっても過言ではなくなってきています。(図24)

図24

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