糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2006年11月01日

2. “ED”という言葉について考える

その2

 ここで一つ、その関連で注目すべき事実を紹介しておきたいと思います。現在、この性機能問題を医学的に議論・研究する学会の名が「日本性機能学会」なのですが、かつては「日本インポテンツ学会」と称しておりました。その“インポテンツ”という呼称は、一般の方々はもちろん医学研究者の間でも、心理的抵抗が強かったのです。男性の性的インポテンツを主訴として来院される症例のみを中心とする医師たちが、その名称になんの抵抗もないとする主張と、もっと広く性機能低下による諸問題を検討する研究者の集まりにふさわしい名前にすべであるいう意見とが対立し、僅差で後者の意見が勝って、「日本性機能学会」と改名したのでした。そのおかげで、その学会も広く基本的な性機能に関連したテーマに関心のある研究者が集まるようになり、最近は女性の性機能全般にも学会内議論が広がるような研究者の集まりに発展しているのです。要するに、この専門的医学も、病院の診察室、ベッドの上の問題でなく、“性”という大きな“総合医学”的視野をもつことで、広く多方面の人々の関心を集め得ることで、具体的に実現したといって過言ではありません。“性”はかなり底辺の広い大きな問題であり、“病院医学”ではなく、病院受療者以外の多くの悩みある方々をも対象とした“社会医学”であることを物語っているわけです。

 この最も基本的なことが、多くの性機能問題の医学者方から現在でもまだ忘れられているのです。現在最も利用率の高い医学生用の生理学の教科書にも「勃起は性的刺激で起こる」としか書いてないという、全くの、男性医学では考えられない珍現象があるのです。生理学の大家方々でさえ、そのような状況の中で、男性の勃起機能が断片的にしか理解されていないのが、残念でなりません。勃起はすべて、異性の存在において起きるという“遅れた生理学”から脱却し、広い視野に立つことから理解し直していただきたいと思います。

 そのため、筆者は“ED”という医学用語を、“男の性の障害用語”にすることを、医学的立場からも賛成しかねていており、“性機能低下”(Sexual dysfunction or hypofunction) という用語を用いることを勧めております。

 ことに男性糖尿病症例における最も合併率の高い合併症である“男の性”の障害を、単純に“ED:Erectile Dysfunction”として捉えることは、問題の本質を見失うことになるわけで、筆者は“性機能低下”として問題提起したいと思っております。

 それには、そもそも男性の性とは何かというところから始めなければならないかもしれません。

 その理解のために、この「糖尿病ネットワーク」のホームページの「男の悩み」のコーナー内にある「男の人生の活力と性」に詳しく説明してありますので、その項をぜひ参照して理解を深めていただきたいと思います。

[ DM-NET ]

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