糖尿病 男の悩み ―糖尿病と性機能低下―

2006年07月01日

1. 糖尿病と性機能低下の不思議な関係

B. 糖尿病は合併症が怖い病気

 まずは、糖尿病という病気の特徴について、ざっと解説します。

 糖尿病は、合併症が怖い病気です。合併症は、血糖値が高い状態「高血糖」が続いていると起きてきます。

 高血糖でもほとんど自覚症状ありません。ですから、糖尿病と診断されても治療の必要性を理解できずに、ついつい高血糖を放置してしまいがちです。しかし、自覚症状がないまま、からだの至る所に合併症が起きてくる点が、糖尿病の特徴です。

 性機能の低下も、糖尿病合併症の一つです。

a. 合併症の原因

 なぜ糖尿病で数々の合併症が起きるのか、その理由は解明し尽くされたわけではありません。ただ、高血糖の状態では――つまり糖尿病の治療が不十分なときは――全身の血管や神経に非常に負担がかかることがわかっています。

 いずれこのコーナーで解説しますが、性機能の低下、特に ED の発病や進行にも、高血糖により血管や神経が障害を受けることが強く関係しています。

b. 合併症の種類

 糖尿病の合併症は、

(1) 糖尿病に特異的なものと、
(2) そうではないもの、

の二つに分けることができます。

(1) は、糖尿病でない人には起こりません。(2) は、糖尿病でない人にも起こりますが、糖尿病の人でその頻度が高くなります。

 性機能の低下は、(2) にあてはまります。

c. 合併症は QOL を著しく低下させる

 糖尿病の合併症が直ちに命に関わるようなことは、あまりありません。しかし一方で、からだの諸機能を低下させます。例えば網膜症では視力や視野が障害を受け、最悪の場合には失明してしまいます。腎症では透析を続けないと生命を維持できなくなります。神経障害では手足がしびれたりして、大変不快になります。合併症は、QOL (quality of life.生活の質)を著しく低下させるということです。

 性機能の低下もやはり、QOL を下げます。特に男性にとっての ED は、性行為をする機会があるかないかということとは別に、物事へ取り組む自信を失ったり人生の喪失感を味わうなど、医学的な検査値の異常としては現れにくいけれども、決して無視することのできない大切な問題であります。さらにご本人だけでなく、パートナーの方の QOL が下がることがあります。(この辺りのことは、このコーナーの第1回目の「男の人生の活力と性」に詳しく解説されています)


合併症で QOL が低下する

d. 糖尿病とは別の原因で合併症が起こるケース

 糖尿病の合併症は、例えば「糖尿病性網膜症」とか「糖尿病性神経障害」とか、すべて最初に「糖尿病性」という言葉がつきます。ということは「糖尿病性」以外の網膜症や神経障害などの病気も当然あるわけです。糖尿病の患者さんに、糖尿病性以外の原因(高血糖以外の原因)で合併症と同じ病気が発病することだってありますし、両者が互いに影響しあって合併症を起こしたり、その進行を速めたりするケースもあります。

 性機能の低下も同じです。糖尿病の患者さんが ED になったからといって、糖尿病だけが原因とは言い切れません。ほかの原因による ED かもしれませんし、糖尿病とほかの原因が重なりあって起きた ED かもしれません。例えば、中高年男性における更年期障害の合併なども、注目されているところです。詳しくは、第3回目以降でお話しします。

e. 治療可能の合併症もある!

 糖尿病の合併症は、いったん発症すると治療が難しいものが多く、進行を遅くすることしかできません。しかしそれでも、治療が可能なケースももちろんあります。医学の進歩とともに、治療できる合併症が徐々に増えています。

 ED もその一つです。かつて ED には、あまり効果的な治療法がありませんでした。しかし今ではみなさんよくご存じのように、レビトラRのような薬があり、大変よく使われています。糖尿病の多くの合併症の中で、ED は治療法が格段に進歩したものの一つと言えます。


治療できる合併症もある

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