HealthDay News

2023年03月09日

COVID-19の3年間:パンデミックで再形成された世界で生きる――AHAニュース

HealthDay News
 2020年3月11日、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを宣言した時、誰もが感染拡大を阻止する方法を知りたがっていた。その後3年間に、米疾病対策センター(CDC)により米国では110万人が死亡したとされるほどの悲劇がもたらされた。その一方で、科学の力により、一部の有識者が「問題は、COVID-19に対して世界がどのように適応するかという点に移った」と言うほどに、状況が変化してきた。COVID-19が居ついている世界に、われわれはどのように適応していけば良いのだろうか?

 米国心臓協会(AHA)でCOVID-19関連心血管疾患レジストリのチェアパーソンを務めている、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのSandeep R. Das氏は、「状況はかなり好転してきているが、今でも重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が非常に危険な存在であることに変わりはない」と語る。また、米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのAmesh Adalja氏は、感染防止対策の重要性は、個々の状況次第だとしている。

マスクはまだ不可欠か?

 CDCは、COVID-19有病率が中から高レベルにある地域では、マスク着用と社会的距離の維持を「考慮することを特に推奨する」としている。他方、米ミシガン大学のNicole Bhave氏は、「高齢者や基礎疾患のある人にとって、マスクは非常に重要」とした上で、実際の患者へのアドバイスは「個々の患者に合わせて調整している」という。例えば、同氏が診ることの多い透析患者、腎臓や肝臓の移植治療を受けた患者に対しては、混雑した公共スペースに行く時のマスクの着用を強く推奨し、ワクチン接種の最新情報を伝えているとのことだ。

今後もワクチン接種が必要なのは、どのような人か?

 CDCは、生後6カ月以降の全ての人に対して二価ワクチンの接種を推奨している。Adalja氏によると、「ワクチン接種の考え方は、接種によってCOVID-19罹患を防げるか否かで判断するのではなく、罹患した場合の影響を最小限に抑えられるという効果に目を向けるべきだ」と語る。昨年12月にCDCが発表したデータによると、ワクチン接種を受けていない成人が罹患した場合の入院率は、最新の二価ワクチンのブースター接種を受けた人の16倍だったという。「あなたが重症化ハイリスク者であるなら、ワクチン接種は文字通り、生死を分かつほどの意味がある」とAdalja氏は話す。

 一方で、Bhave氏は「若くて健康な人にとっては、今後のワクチン接種はそれほど重要ではないかもしれない」としている。「質問が、『介護施設で暮らしている90歳の高齢者はワクチン接種を受けるべきか?』なら、全く疑問を差し挟む余地はない。しかし、『極めて健康な20歳の若者が受けるべきか?』と問われれば、それは個人の判断だ。高齢者に比べれば、絶対的なメリットははるかに少なくなる。もちろん、それでも受けることを選択してもよい」と解説する。

SARS-CoV-2との共存

 「COVID-19はこの世界にとどまる」とAdalja氏は強調する。「われわれは今、パンデミック発生後の3年について話しているが、恐らく30年後も、COVID-19は依然として脅威であろう」とのことだ。SARS-CoV-2は進化し続け、新たな亜種が出現し続けることが予測される。一方で同氏は、この3年間で科学が急速に進歩した事実を称賛している。「3年前まで、COVID-19やSARS-CoV-2の存在は知られていなかった。しかし現在、COVID-19の治療ツールは、恐らく他の呼吸器疾患ウイルスよりも多いのではないか」と話す。

 Adalja氏は、「COVID-19という死に至ることもある、深刻で、医療システムも崩壊させるような感染症に対して、人類が短期間で打ち勝つ能力を身に付けてきたことから、私は今後を楽観的に考えている。しかし、個人レベルで考える場合は全く別で、各人が自分の重症化リスクをどこまで許容し、どのように行動するかという、パーソナライズされた問題となる」と話している。

 Das氏もこの3年間の科学的躍進を高く評価し、また今後、人々が自分の状況に適したバランスを判断して生活していくべきだとする。そして、「怖がる必要はないかもしれないが、心血管疾患を抱えているような人にとっては、COVID-19は依然、軽い病気ではない。例えば、インフルエンザは大半の人にとっては深刻な病気ではないかもしれないが、一部の人の命を奪う病気であるのと同じことだ」と指摘する。

 Das氏はまた、COVID-19パンデミックが続く社会の状況を以下のように表現している。「今から3年後に人々は、COVID-19について、もう考えたくないと思うようになっているかもしれない。多くの問題は、われわれが、自分自身が設定したタイムラインにそって行動できないことに起因している。パンデミック以降われわれは、SARS-CoV-2が作り出すタイムラインに合わせて行動しなければならない状況が続いている」。

[American Heart Association News 2023年3月9日]

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Photo Credit: Luis Alvarez/DigitalVision via Getty Images
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