患者さんのほんね、医療者のホンネ

2013年08月27日

Q. 東日本大震災で被災された方、過去に自然災害などを経験された方より〜糖尿病の療養生活上でお感じになられたことや、注意が必要と思ったこと、今後の教訓〜

A. 患者さんのホンネ

  • 今回、出張時に被災しました。自宅にはインスリン等の備えはあったのですが、出張時には持ち歩いていなかったので、非常に困りました。幸い翌日に帰宅がかないましたので大事には至りませんでしたが・・・・今後は旅行、出張時にも、数日分のインスリン、測定チップ等を持ち歩く必要があると感じました。
  • 1型糖尿病で、仙台市内在住のものです。

    <被災から3週間ぐらいの状況について>
    今回の震災でこの準備が有効な対策であることが証明されてしまいました。(室内は散乱しましたが自宅倒壊はしなかったことも背景としては大きいのですが)避難所でも数日でインスリンの必要な避難者に対して申請用紙・受付が開設されていたようで、この点は阪神淡路大震災時の経験が活かされていると考えます。ライフラインが全滅した中で、ネットワークアンケート(7)に記載されていた水の確保についても、H5N1型鳥インフルエンザのパンデミックに備えて購入していたペットボトル入りの長期保存水、消毒洗浄剤で対応しました。(鳥インフルエンザのパンデミック対策はそのまま被災時対策にもなります)しかし、物流停止による食料調達は非常に困難でした。避難所での炊き出し以外に、限られた食料品の争奪状態になると、開店待ちの行列並び等も含め、どうしても通常以上の体力(血糖)を消耗します。鳥インフルエンザパンデミック対策で普段から低血糖対策以上の食料品備蓄をしていたことが如何に安心につながったかが今回身に染みて分かったような状況でした。

    <インスリンの入手と使用について>
    インスリンについては、東京で開かれた阪神淡路大震災を期に発足された防災NPOの方によるI型DM患者のための被災時の心得をテーマにしたセミナーに参加した際、「非常時は医師の処方が無くてもインスリンは買える」ということを教えられていたのであわてることなく対応していました。但し以前主治医から「薬局が無事であった場合は自分が使用しているタイプのインスリンが入手できる可能性はあるが、非常時に支給されるインスリンはNPHタイプのみなので血糖管理に注意すること」と指導されていました。このため「非常時にいつも使っているインスリンは入手できないと考え、極力自分で確保しておくべきである」といえると考えます。私の通院先は津波被災もなく建築被害も小さかったため、震災発生日2週間後の予定になっていた外来検診は通常通りで行え、長期に及ぶ薬剤入手不可には至らずに済みました。ですが、これはたまたま良い条件であっただけのことで、どこで被災するか分からないことを前提に物事を考えるべきと思いました。もし、津波被災だった場合は自宅備蓄インスリンは全滅したでしょうし、常時携帯していたとしても使用不能になったでしょう。また、今回のように燃料を含む物流が大きく滞ってしまうと通院不能、医薬品も長期に渡って入手できない期間が続きます。こればかりは被災時の状況次第なので、可能な限り二重三重の用意をすべきであると考えます。

    <万一に備えてここまでやってみるのも必要?>
    また、上記主治医の指導の「NPHタイプしか支給されない」という点については、普段使用している以外のインスリンを使用した場合に自身の血糖変化がどうなるか非常に不安になると思います。自分は特効型+速効型の組合わせで生活していますが、以前わざとNPHタイプを処方してもらい、SMBGで血糖の日動変化がどうなるのかを試行・確認していました。一般のI型DM患者の方がここまでやろうと考えることはまず無いとは思いますが、確認しておいて損はないと思います。無論、リスク覚悟の行為なので主治医の理解が必要ですが。

    <今後想定される東海・東南海・南海連動型地震や首都直下型地震に対して>
    自分はかなり以前から想定宮城県沖地震に対する意識があったので、上記のような準備で助かりましたが、他の地域のDM患者の方々は今回の大震災を踏まえても恐らくなかなか実行には至らないと思います。東海・東南海・南海連動型地震は、発生すると今回と同規模(M9.0クラス)といわれています。津波被害も今回以上の規模になると考えるべきでしょう。インスリンメーカー各社も阪神淡路大震災を期に在庫管理拠点を国内各所に分散していたようですし(実際には国内製造はしておらず日本国内は単なる梱包・物流センターでしかありませんが)、インターネットによる情報配信など、阪神淡路大震災時から大きく改善された一面もありますが、個人的には今回の大震災以上に原発事故・物流不能・避難困難・血糖管理維持困難が大きくになると考えますので、やはり最後は自身の準備次第で生き残れるかが左右されると考えます。このアンケートを元に今まで以上に大きく取り上げての注意・準備の喚起を望みます。

  • 震災当日、たまたま手持ち(携帯している)インスリン残量が少なかったため、意地になってインスリンがある自宅まで6時間もかけて夜中まで歩いて帰った。それ以降は常に十分なインスリン、針を持ち歩くようにしている。
  • インスリンポンプの部品をひとまとめにして、逃げる時に持ち出せるようにしました。
  • インスリンを多めに準備する事、普段も分けて持ち歩く
  • 今(編集部注:このアンケートは2011年5月に実施しました)、関東ブロックの糖尿病教室では地震対応についての講義が盛んになされています。非常持ち出し、避難所の生活対応は馬鹿にせずに何度も聞いておくことと思いおり、東西南北中央のブロック教室に出来る限り参加しています。生々しい状況の報告と講義はどこか脳の中に残りやすく感じます。それで、訓練や授業は回数を多くこなしていないと実際には役に経たないと思っている所です。
  • 帰宅できなかった。会社にインスリンを保管したあったが、持ち出さずに近所の公民館で一夜を過ごした。翌朝会社に行ったが、エレベータが止まっていて事務所に入れず、持ち出せなかった。建物に被害がなくても、何が起こるか分からないので避難するときに持ち出すべきであった。夜間の低血糖防止用の食品、ブドウ糖は、携行した。

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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