一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会

理事長挨拶

一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会 理事長
杉山 隆
愛媛大学大学院医学系研究科産科婦人科学教室教授

 2022年11月4日に開催されました第38回日本糖尿病・妊娠学会の臨時理事会において理事長を再任いただきましたので、会員の皆様ならびに関係各位にご挨拶申し上げます。

 私はこれまで、本学会主導の多施設共同研究等の幹事を通して妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠に関する疫学研究に携わる機会をいただきました。平松祐司前理事長の下、妊娠糖尿病の新診断基準(2010年)の改訂、DREAMBeeスタディの立ち上げ、妊娠糖尿病に対する血糖自己測定の適応拡大、妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアルの改訂などの事業にも直接関与させていただきました。

 2020年から理事長を拝命し、本学会の伝統を守りつつ発展させるべく尽力したつもりです。まず、妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアルの改訂を行いました。本改訂では、旧版と最新の日本糖尿病学会や日本産科婦人科学会の診療ガイドラインとの齟齬を確認の上、理事の先生方のご協力のお蔭で改訂することができました。また、DREAMBeeスタディにおいては、事務局である成育医療研究センターを中心に最初の論文を投稿いただきました。今後、様々なクリニカルクエスチョンに対する疫学研究が行われ、わが国発のデータ発信を行えるものと期待されます。これらの研究結果に基づきガイドラインが改定されることが重要であると考えます。ただし、今後、持続的な研究を行うべく、研究体制の支援・強化も図る必要があると考えます。非常時の妊娠糖尿病の診断等に関する研究ワーキンググループも発足し、今後、新興・再興感染症に対する方策を立てる予定です。さらに、糖代謝異常合併妊娠の管理として、血糖コントロールが重要であることは言うまでもありませんが、その基本となる食事療法も重要です。妊娠糖尿病に対する妊娠中の体重増加量は重要な指標であると考え、妊娠アウトカムに基づく望ましい体重増加量設定も本学会に与えられた重要なテーマと考え、今後検討を行う予定です。

 今後とも会員の皆様のご協力をいただきながら臨床研究を行うとともに基礎研究も重視する必要があると考えます。糖尿病と妊娠に関する領域は、母体のみならず、胎児、新生児、さらにはその後の児の将来の健康にも関連するので、広い視野を持って、precision medicine、さらにはpreemptive medicineを見据えた多面的な研究や取組等が必要になります。これらの連携を図ることも本学会の役割であると考えます。

 また海外の学会との連携も重要であると考え、引き続き内外の連携を果たします。今後も世界各国の構成員からなる欧州糖尿病学会の分化会であるDiabetes Pregnancy Study Groupや米国糖尿病学会との連携のみならず、わが国の他学会との連携も重視し、リエゾンとして機能しながら学会運営に尽力します。

 さらに、多職種から構成される本学会ならではの多職種連携を重視すると共に、若手医師、看護職、栄養士の方々の本領域における育成を意識した学会体制の構築も図りたいと思います。  

 これまで本会の礎を築いていただきました諸先輩の方々の恩恵を大切にしつつ、皆様のご意見・ご提案を頂戴しながら、本会のさらなる発展に向け尽力する所存です。役員のみならず会員の皆様のご理解ならびにご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。  

2022年11月

2023年11月 更新

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