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2010年03月02日

スタチン療法を行った患者で糖尿病リスクがわずかに増加

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 コレステロール降下薬であるスタチンの使用により、糖尿病を発症する可能性が9%増大するが、スタチンにより冠状動脈イベントを低減する場合は絶対的なリスクは低くなることが、13の試験のメタ解析に基づく研究によって示された。研究結果は、英医学誌「Lancet」オンライン版に2月16日掲載された。

 この研究は、英グラスゴー大学(スコットランド)心血管研究センターのNaveed Satar氏とDavid Preiss氏らが、1994〜2009年に実施された計9万1,140例を対象とした13件のスタチンの臨床試験のデータを解析したもの。平均4年間に4278例(スタチン投与群2,226例、対照群2,052例)が糖尿病を発症した。

 全体ではスタチン投与は2型糖尿病の発症リスクの9%増加に関連しており、高齢者のほうがリスクは高くなったが、ベースラインでのボディー・マス・インデックス(BMI)やLDLコレステロール値の変化は、スタチンに関連する糖尿病の発症リスクに影響しなかった。

 Satar氏らは、スタチン投与が直接的な分子メカニズムによって糖尿病リスクを高める可能性は考慮されるべきであるが、明らかな結論を得られていないと強調している。255例に4年間スタチンを投与した場合、糖尿病症例は1例しか増加しなかった。しかし、スタチン投与によりLDLコレステロールが1mmol/L低下するごとに、同じ255例で冠状動脈イベント(冠動脈疾患による死亡や致命性ではない心臓発作)が5例減少することが期待されると指摘している。

 スタチン療法が糖尿病リスクに間接的に関連しているとみることもできるが、スタチン療法群の生存率の向上と、糖尿病リスクの増加を説明できないという。Satar氏らは「スタチンの心臓血管イベントを減少させるという圧倒的な有益性を考慮すると、短期および中期のスタチン療法が推奨される患者での心臓血管に対する有益性は、糖尿病発症の小さな絶対的リスクを上回る。中程度・高度の心臓血管リスクのある患者や心疾患のある患者で、臨床でスタチン療法を変更する必要はないだろう」と示唆している。

 そのうえで、「心臓血管リスクの低い、あるいは治療の有益性が明らかでない患者では、糖尿病リスクが増加する可能性があることを考慮に入れるべきだ」として、「今後の大規模なスタチン試験では、糖尿病の発症を第2のエンドポイントにし、可能であればこれまでの長期の追跡試験の報告に糖尿病を含めることを推奨する」と述べている。

Diabetes risk no reason to stop taking statins(British Heart Foundation)
Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials
Lancet, DOI:10.1016/S0140-6736(09)61965-6

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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