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2011年11月24日

寒い時期は心筋梗塞に注意 予防のための10ヵ条を公開

キーワード
糖尿病合併症
 これからの寒い時期は心筋梗塞に注意――。全国の心筋梗塞による死亡件数は冬に増え、1月がもっとも多いことが国立循環器病研究センターの研究グループの調査であきからになった。
寒い部屋へ急に移動すると血圧が上昇しやすい
冬場に心筋梗塞を予防するための10ヵ条
1 冬場は脱衣室と浴室を暖かくしておく。

2 風呂の温度は38〜40度と低めに設定。熱い湯(42〜43度)は血圧が高くなり危険です。

3 入浴時間は短めに。

4 入浴前後にコップ一杯の水分を補給する。

5 高齢者や心臓病の方が入浴中は、家族が声をかけチェック。

6 入浴前にアルコールは飲まない。

7 収縮期血圧が180mmHg以上または拡張期血圧が110mmHg以上ある場合は入浴を控える。

8 早朝起床時はコップ一杯の水を補給する。睡眠時の発汗で血液が濃縮しています。

9 寒い野外に出る時は、防寒着、マフラー、帽子、手袋などを着用し、寒さを調整しましょう。

10 タバコを吸う方は禁煙をしましょう。

出典:国立循環器病研究センター
 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)予防医学・疫学情報部の西村邦宏室長らの研究グループが、消防庁の2005年〜2008年12月までの4年間の病院外心停止の患者の統計であるウツタイン統計から約19万6千件を解析した。

 それによると、心筋梗塞による心停止は、10月から4月頃にかけての寒い時季に増えるという。研究成果は11月の米国心臓病学会で発表される。

 心筋梗塞は、心臓の血管(冠動脈)が閉塞するために起こり、心臓の機能が急激に低下したり、重症の不整脈を合併することで突然死をきたす原因となる。

 同センターでは、冬に心筋梗塞が多い理由のひとつとして「寒冷期の血圧の上昇、特に暖かい屋内から特に寒い部屋や屋外に移動する際の血圧の急激な変動」を挙げている。

 「ヒートショックといわれるストレスが心臓の負担を増やし心筋梗塞を起こしやすくなる。また、寒さで心臓の血管(冠動脈)が過剰に収縮し血流不全に陥ることも心筋梗塞の一因である考えられる」と述べている。

 4年間の死亡件数は19万6032件。最多は1月の2万1954件で、2月以降は減少傾向となり、9月は最も少ない1万3122件だった。10月からは増加に転じ、12月は1月に次ぐ2万135件だった。

 同センターでは「これからますます寒い時期を迎えるにあたって、心筋梗塞の予防、特に寒冷地や震災地の仮設住宅での防寒対策が重要」と注意を呼びかけている。

糖尿病の人は脳卒中や心筋梗塞に特に注意
 糖尿病の人が血糖コントロール不良で、血糖値が高い状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞といった動脈硬化を要因とする病気になりやすいことが知られている。予防するために、ふだんから良好な血糖コントロールを続けることに含め、心筋梗塞の危険性に対し注意しておく必要がある。

 心筋梗塞(虚血性心疾患)は、心臓の筋肉を養う“冠動脈”が細くなる病気で、狭心症と心筋梗塞が該当する。心筋が虚血状態(血液が十分に行き渡らないこと)におちいり、胸痛などの心臓発作が起こる。

 冠動脈が細くなる原因は動脈硬化。糖尿病では動脈硬化が進行しやすく、虚血性心疾患を発症する危険性も高くなる。特に合併症の神経障害がある場合には、痛みに対して鈍くなっているので胸痛発作を感じにくく、病状に比べて自覚症状が軽いことがあり、治療開始が遅れることもあるので注意が必要だ。

 糖尿病の人が虚血性心疾患を発症しやすいことは、日本人を対象とした調査でも確かめられている。糖尿病型では虚血性心疾患の発症リスクが正常群に比べ3倍に高まり、糖尿病予備群と呼ばれる境界群でも1.5倍に上昇することが、日本人3万人を対象の大規模臨床研究であきらかになった。

 この研究は、日本人約3万人を約13年間、追跡して調査した多目的コホート研究「JPHC研究」。研究チームは全国の9保健所管内に在住していた循環器病やがんと診断されたことのない40〜69歳の男女約3万1000人に参加してもらい、2006年まで平均12.9年間、追跡して調査した。

 それによると、全虚血性心疾患の発症の割合は、正常群を1とした場合、糖尿病群で3.05倍に上昇した。また、空腹時血糖値100〜125mg/dLの境界群でも1.65倍になり、心疾患の危険性は糖尿病境界型の段階でも高まることが示された。

国立循環器病研究センター
虚血性心疾患の発症リスク:糖尿病の人では3倍に 日本人3万人を調査(糖尿病NET)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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