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2012年04月29日
動脈硬化ガイドライン改訂へ 境界域の設定、絶対リスクで層別化など
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
脂質異常症の診断と、薬剤による治療が必要な状態は必ずしもイコールではないことから、診断基準をあえて「スクリーニングのための診断基準」と呼び、診断後の管理目標値も従来の相対リスクではなく絶対リスクで判断することになる。また、リスク評価の際に、糖尿病と耐糖能力障害を区別し評価する。
改訂版ガイドラインは5月末から6月上旬に刊行される予定。
主な変更点等は以下のとおり。
脂質異常症:スクリーニングのための診断基準(空腹時採血) | |||||||||||
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絶対リスクの評価には大規模疫学研究「NIPPON DATE80」から得られたデータを使用。年齢、性、LDL-C(またはTC)、血圧、喫煙の有無別に、向こう10年以内の冠動脈疾患死亡確率が0.5%未満の場合はカテゴリーI、0.5〜2%未満はカテゴリーII、2%以上はカテゴリーIIIとなる。
ただし、糖尿病、脳血管障害、末梢動脈疾患(PAD)、ステージIII以上の慢性腎臓病(CKD)のいずれかがある場合は、それだけで一次予防における最高リスクのカテゴリーIIIとなる。また、低HDL-C、早発性冠動脈疾患家族歴、耐糖能異常(糖尿病は含まない)を「追加リスク」とし、これらのいずれかが該当する場合は1段階厳しいカテゴリーになる。
なお、カテゴリーIの低リスクに該当する場合、患者の治療モチベーションが上がらない可能性が考えられるが、このことに対しては、絶対リスクは低くても相対リスクでみれば血清脂質値正常に比べて数倍から10倍以上リスクが高いというデータを示すことを提案している。
LDLコレステロールの管理目標値 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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二次予防について、LDL-Cをさらに強力に低下させることでプラークが退縮するといった日本人対象の報告も蓄積されつつあるが、現状において3〜5割程度の患者しか現行の管理目標値に到達していないことから、100mg/dL未満という目標値そのものは据え置かれた。この目標値に達することが第一で、必要があればそれ以上厳格な治療を考慮してもよいとしている。
具体的な管理目標値は、LDL-Cの目標値に30を加えた値となる。糖尿病やメタボリックシンドロームでは高TGや低HDL-Cを伴いやすいため、新たな指標としてnon HDL-Cへの配慮が求められる。
なお、今回のガイドライン改訂では、LDL-C測定の直接法の信頼性が確立されていないことから、「LDL-CはFriedwald式で計算する」と明記された。non HDL-Cは、TG400mg/dL以上でFriedwald式を適用できない場合にも使用できる点でも便利。
リスク区分別脂質管理目標値 | ||||||||||||||||||||||||||
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また、動脈硬化進展度の評価法としての頸動脈IMTの有用性、トランス型脂肪酸過剰摂取の注意などが追加された。
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