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2014年01月24日

米国糖尿病学会が新しい臨床ガイドラインを発表 患者中心の医療へ

米国糖尿病学会(ADA)「2014年版 糖尿病臨床ガイドライン」 主な内容(2)
食事療法(サプリメント)
・ビタミンE・Cやカロテンといった抗酸化物質のサプリメントの長期の安全性と効果は確かめられていない。これらのサプリメントを糖尿病患者には推奨しない。(グレードA)

・n-3系脂肪酸(EPAとDHA)のサプリメントが心血管疾患の予防に効果的というエビデンスはないので、糖尿病患者には勧めない。(グレードA)

塩分(ナトリウム)
・1日の塩分(ナトリウム)量を5.8g(2,300mg)未満に抑えることが勧められる。塩分摂取量を減らすことは、糖尿病と高血圧の治療でも重要となる。(グレードB)
2型糖尿病の予防
・将来に2型糖尿病を発症するリスクが高い人には、生活スタイルの変更が勧められる。食事を管理しカロリーと脂質を抑えて、体重の7%を減らすことと、週に150分の中強度の運動を続けると、糖尿病の発症を抑えられる。(グレードA)
糖尿病のセルフマネージメント教育
・糖尿病を自己管理が必要な病気だ。全ての患者は、糖尿病のセルフマネージメントに関するサポート(DSMS)を受けられるようにすべきだ。(グレードB)
運動と身体活動
・糖尿病の人は、最大心拍数の70%くらいの中強度の有酸素運動(エアロビクス)を週に150分以上行うようアドバイスすることが必要。運動は週に3日以上行い、運動をしない日が2日以上続かないよう指導する。(グレードA)

・危険が伴わない場合は、筋肉に負荷をかけて行うレジスタンス運動を、週に2回取り入れることを勧める。(グレードA)

心理・社会的なケア
・糖尿病患者ではうつの発症が増えるので、糖尿病の治療には患者の心理的・社会的な状況に配慮したアセスメントを含めることが大切。医療者は、患者の治療にともなう苦痛や不安、認知障害、摂食障害など、心理的・社会的な問題にも耳を傾ける必要がある。(グレードB)
低血糖の予防
・インスリン療法を行っている糖尿病患者では、無自覚性低血糖や重症低血糖が起こることがある。そうした患者では低血糖を防ぐために、血糖コントロールを緩めるなどの対策が必要になることがある。(グレードA)

・低血糖への対策としては、意識がある患者に対しては、ブドウ糖(15〜20g)やブドウ糖を含む食品を摂取させるのが望ましい。約15分後に血糖自己測定を行い、低血糖が持続するようであれば、同じ量を摂取させる。(グレードE)

高血圧の治療
・糖尿病患者の血圧コントロール目標は、収縮期血圧(最高血圧)が120mmHg未満、拡張期血圧(最低血圧)が80mmHg未満とする。血圧値を定期検診で検査し、高血圧が判明した場合は、別の日に患者が家庭で血圧を測定できるようにする。(グレードB)

・血圧値が140/80のmmHgを超えている場合は、生活スタイルを改善することに加え、降圧薬による治療を開始する。(グレードB)

・過体重や肥満の患者には体重減少を指導する。塩分(ナトリウム)の摂取量を減らし、野菜などのカリウム摂取量を増やす、アルコール摂取量を減らす、運動を行うことなどを指導する。(グレードB)

・薬剤を使用する場合、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いる。単剤で効果が不十分であれば、多剤をつかう。(グレードC)

脂質異常症の治療
・糖尿病患者に脂質異常症が合併した場合、心血管疾患のリスクがさらに高まる。糖尿病患者には脂質の検査を年に1回以上行う。(グレードB)

・食事では飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・コレステロールの摂取を減らし、n-3脂肪酸・食物繊維・植物性脂質を摂取しを摂取するよう指導する。(グレードA)

・治療目標は、心血管疾患(CVD)がない場合はLDLコレステロール 100mg未満、ある場合は70mg未満。高LDLコレステロールに対する第一選択薬はスタチン系薬剤。(グレードB)

糖尿病腎症
・糖尿病腎症を発症リスクを下げ、進行を抑えるために、血糖コントロールと血圧コントロールの最適化が必要。(グレードA)

・糖尿病を発症して5年以上が経過する1型糖尿病患者と全ての糖尿病患者は、アルブミン尿検査を年1回以上受けるべきだ。(グレードB)

・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が、糸球体濾過率(GFR)の上昇を抑え、尿タンパクの増加を抑制する。(グレードA)

・糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、推奨するに足る十分なエビデンスはない。目標は個別に行われるべきだ。(グレードC)

糖尿病網膜症
・糖尿病網膜症を発症リスクを下げ、進行を抑えるために、血糖コントロールと血圧コントロールの最適化が必要。(グレードA)

・糖尿病を発症して5年以上が経過する1型糖尿病患者と全ての糖尿病患者は、眼の検査を既往歴のない場合は2年に1回以上、既往歴のある場合は毎年受けるべきだ。(グレードB)

・非増殖糖尿病網膜症(NPDR)、増殖糖尿病網膜症(PDR)を発症している患者は、眼科医の治療が必要となる。(グレードA)

・適切な時期にレーザー光凝固術治療を行うことで失明を予防できる。(グレードA)

神経障害
・糖尿病を発症して5年以上が経過する1型糖尿病患者と全ての糖尿病患者は、糖尿病性末梢神経障害(DPN)の検査を年1回以上受けるべきだ。(グレードB)
フットケア
・糖尿病患者は、年に1回以上はフットケアを受け、足病変について診断を受けるべき。足病変の診断は視診、足脈拍の試験、防御感覚喪失(LOPS)(10gモノフィラメントと、128Hzの音叉を用いた振動覚、針による痛覚、アキレス腱反射、振動覚閾値のうちどれかひとつをテストする)によって行われる。(グレードB)

・全ての糖尿病患者に、一般的なフットケアに関する教育を提供する。(グレードB)

Clinical Practice Recommendations - American Diabetes Association

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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