ニュース

2014年04月09日

「ビグアナイド薬の適正使用に関する勧告」を改訂

キーワード
医薬品/インスリン
 日本糖尿病学会は「ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation」を3月28日付けで改訂した。 ビグアナイド薬を投与された糖尿病患者で、副作用である乳酸アシドーシスが報告されたのを受け、日本糖尿病学会は「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」を立ち上げ、勧告(レコメンデーション)を2012年2月に公開した。今回の改訂は、比較的若年者でも少量投与でも、乳酸アシドーシスの発現が報告されているのを受けたもの。乳酸アシドーシスに関し「迅速かつ適切な治療が必要」としている。

 ビグアナイド薬には、主に肝臓で乳酸からの糖新生を抑制することで血糖を下げる作用がある。乳酸アシドーシスはビグアナイド薬の重大な副作用で、血中乳酸値が上昇することで引き起こされる。主な症状は意識障害、嘔吐、倦怠感、過呼吸、腹痛など。

 これまで発症の頻度は低いが、ビグアナイド薬を投与された糖尿病患者で乳酸アシドーシスが報告された。乳酸アシドーシスの予後不良の症例や死亡例も報告された。同委員会が乳酸アシドーシス症例を検討したところ、以下の特徴が認められた。

・すでに各剤の添付文書において禁忌や慎重投与となっている事項に違反した例がほとんどだった。添付文書遵守の徹底がまず必要とされている。

・投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や、投与開始直後あるいは数年後に発現した症例も報告された。

 同委員会ではこうした状況を鑑み、「乳酸アシドーシスの発現を避けるためには、投与にあたり患者の病態・生活習慣などから薬剤の効果や副作用の危険性を勘案した上で適切な患者を選択し、患者に対して服薬や生活習慣などの指導を十分に行うことが重要」と述べている。

 乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴として、「腎機能障害患者(透析患者を含む)」、「脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態」、「心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者」、「高齢者」が示されている。今回(2014年3月)の改訂では、「高齢者だけでなく、比較的若年者でも少量投与でも、上記の特徴を有する患者で、乳酸アシドーシスの発現が報告されていることに注意」という記述が追加された。

■「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」からのRecommendationとして、具体的な注意事項がまとめられている。
〔Recommendation〕
まず、経口摂取が困難な患者や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以下の事項に留意する。
1)腎機能障害患者(透析患者を含む)について
メトグルコを除き禁忌である。
メトグルコは中等度以上の腎機能障害で禁忌である。
SCr値(酵素法)が男性1.3mg/dL、女性1.2mg/dL以上の患者には投与を推奨しない。
高齢者ではSCr値が正常範囲内であっても実際の腎機能は低下していることがあるので、eGFR等も考慮して腎機能の評価を行う。
2)過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水などの患者への注意・指導が必要な状態について
禁忌であり、患者に以下の注意・指導を行い、必要に応じて家族にも指導する。
・過度のアルコール摂取を避け、適量にとどめ、肝疾患などのある症例では禁酒する。
・シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し、主治医に相談する。
・脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける。
3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者について
心血管・肺機能障害、手術前後(食事制限のない小手術を除く。)は禁忌である。
肝機能障害についてはメトグルコを除き禁忌。メトグルコは軽度〜中等度までは慎重投与。
なお、経口摂取が困難な患者や寝たきりなど全身状態が悪い患者には投与すべきではない。
4)高齢者について
メトグルコ以外は禁忌
メトグルコは慎重投与である。特に75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要であり、原則として新規の患者への投与は推奨しない。

日本糖尿病学会
関係学会等からの医薬品の適正使用に関するお知らせ(医薬品医療機器総合機構)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲