ニュース
2014年11月14日
インスリン治療を続けて50年 「リリー インスリン50年賞」受賞者発表
- キーワード
- 医薬品/インスリン

日本ではこれまで77人が受賞
第12回となる今年は、男性3名、女性8名の合計11名が受賞し、うちの8名が表彰式に参加した。50年以上にわたる糖尿病やインスリン治療の道のりを振り返りながら、糖尿病患者への励ましのメッセージを熱く語った。受賞者には、名前を刻印した純銀製のメダルと、世糖尿病デーのシンボルカラーの「青いバラ」が贈られた。
第12回「リリー インスリン50年賞」表彰式
![]()
池山礼子さん(宮崎県、インスリン治療歴50年)、
内田博子さん(京都府、インスリン治療歴53年)、
小池武志さん(千葉県、インスリン治療歴50年)、
近藤しまさん(千葉県、インスリン治療歴54年)、
鈴木啓子さん(宮崎県、インスリン治療歴50年)、
前畑リツ子さん(宮崎県、インスリン治療歴50年)、
山田タエ子さん(千葉県、インスリン治療歴50年)
(他の4名の受賞者については希望により情報は公開されていない) |
「当時はこんなに長生きできるとは思っていなかった。主治医の先生の熱意、苦労をともに過ごした家族や周りの方々の支え、医療の進歩に感謝したい」「自分に合ったインスリン療法が見えてきたのは最近のこと。自分が糖尿病をコントロールしようという気持ちが大切」と、インスリン50年賞の受賞者のひとりは語った。
「糖尿病の治療は昔は大変だった」
インスリンは20世紀最大の医薬品の発明ともいわれる。インスリンは1921年にトロント大学(カナダ)のフレデリック バンティングとチャールズ ベストによって発見された。その翌年にイーライリリー社がはじめてインスリンの製剤化に成功。1923年に世界で最初のインスリン製剤「アイレチン」が発売され、治療に使われるようになった。
日本でインスリン自己注射の保険適用が始められたのは1980年代になってからのこと。それまでは自宅でのインスリン自己注射は認められておらず、注射は原則として病院など医療機関で行わなければならなかった。
現在治療に使われている使いやすいペン型注入器や、注入器とインスリン製剤が一体になったキット製剤は当時なかったので、小さいガラス瓶に入ったバイアル製剤をガラス製の注射器に吸い出して注射を行っていた。初期のインスリン製剤は作用時間が短いものしかなく、注射器は注射ごとに煮沸消毒が必要だった。注射針も太く、注射をすると強い痛みを伴った。
現在では、健康な人のインスリン分泌パターンを再現するために、多種多様なインスリン製剤が使われている。インスリン療法は個々の病状や生活に合わせて、より安全に行える時代になった。より生理的なインスリン動態に近づけたインスリン製剤も開発され、多くの糖尿病患者の血糖コントロールに役立てられている。
イーライリリー社は、1982年に遺伝子組換えによる世界初の医薬品ヒトインスリンを発売した。遺伝子工学の手法を用いることで、ヒトの膵β細胞が分泌するインスリンと同じ構造のヒトインスリン製剤が治療に使われるようになった。
同社は1996年に超速効型インスリンアナログ製剤「ヒューマログ」を発売した(日本での発売は2001年)。今後も生理的なインスリン分泌パターンを再現できる製剤の開発が期待されている。
インスリン注射用の針も改良され、ほとんどの人は「注射していることさえも感じない」というほど、注射針は細く短くなった。現在、ペン型注入器に使われている注射針には、先端で0.23mmと驚異的に細く、長さも4mmと米粒ほどの大きさのものがある。
日本糖尿病学会理事で永寿総合病院糖尿病臨床研究センター長の渥美義仁氏は、「50年、60年と続けてきた患者さんの苦労は計り知れないものがある。インスリン療法を現在行っている患者さんや、これから始める患者さんにとって大きな励みになる。現在はインスリン製剤が進歩し、血糖コントロールがしやすくなっているが、受賞された患者さんが治療を開始した当時は多くの困難を伴っていた」と、受賞者たちのインスリン治療に対する真摯な態度に感動の意をあらわした。
日本糖尿病協会理事で東京女子医科大学糖尿病センターセンター長の内潟安子氏は、「50年前は、現在のような病態に合わせたさまざまなタイプのインスリン製剤や痛みの少ない注射針は開発されておらず、治療は血糖値がとにかく高くならないようにするというものだった。当時の苦労について、患者さんから教えられることが多い」と述べた。
医薬品/インスリンの関連記事
- 世界初の週1回投与の持効型溶解インスリン製剤 注射回数を減らし糖尿病患者の負担を軽減
- インスリン注射の「飲み薬化」を目指すプロジェクトが進行中!ファルストマと慶応大学の共同研究による挑戦[PR]
- 水を飲むと糖尿病や肥満が改善 水を飲む習慣は健康的 高カロリーの飲みものを水に置き換え
- 【1型糖尿病の最新情報】幹細胞由来の膵島細胞を移植する治療法の開発 危険な低血糖を防ぐ新しい方法も
- 糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬が腎臓病のリスクを大幅に低下 認知症も減少
- JADEC(日本糖尿病協会)の活動 「さかえ」がWebページで閲覧できるなど「最新のお知らせ」からご紹介
- 【世界糖尿病デー】インスリン治療を続けて50年以上 受賞者を発表 丸の内では啓発イベントも
- 【インフルエンザ流行に備えて】糖尿病の人は予防のために「ワクチン接種」を受けることを推奨
- 糖尿病治療薬のメトホルミンが新型コロナの後遺症リスクを軽減 発症や死亡のリスクが21%減少
- 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も