ニュース

2014年12月03日

腎臓の幹細胞から腎臓を再現するのに成功 再生医療の実現に近づく

キーワード
医療の進歩
 岡山大学は、ラットの腎臓からとった幹細胞から、腎臓の複雑な立体構造を再現することに世界ではじめて成功したと発表した。研究が進みヒトの細胞でも実現できれば、腎不全の再生医療につながる可能性がある。

 この研究は、岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科の喜多村真治講師、槇野博史病院長、杏林大学医学部薬理学教室櫻井裕之教授らの研究チームによるもの。
腎臓のネフロンを再生するのに成功 尿を作る機能を確認
ラットの腎臓幹細胞から作った立体的な腎臓組織
 腎臓は、体内の老廃物を尿として体外に排出したり、体内の水分量を調節するなど、重要な機能をもつ臓器であり、腎臓の働きが悪くなると生命の維持に関わる。

 腎臓は、構造がもっとも複雑な臓器のひとつで、再生は難しいとされている。研究チームは今回の研究で、腎臓から取り出したひとつの幹細胞を分化させ、腎臓の立体構造を作るのに成功した。

 腎臓から取り出した幹細胞は、腎臓の組織に分化する能力が高く、さまざまな臓器に分化する能力があるとされる「iPS細胞」や「ES細胞」に比べ、他の臓器へ分化する力は弱い。

 研究チームは、ラットの腎臓から幹細胞を分離。特殊なタンパク質で作られたゲル状の立体培地に埋め、細胞が成長できるようにした。

 すると3〜4週間後に、腎臓の基本単位であるネフロンに酷似した構造体になった。尿を作る機能も一部確認できたという。

 「ネフロン」は、腎臓の機能を担っている最小の構造物で、血液をろ過し尿を作る働きをする。ひとつの腎臓にはネフロンが約100万個ある。

 ネフロンは、細かい糸球体や尿細管などが複雑なループ状につながっている構造をもっており、これまで再生は極めて難しいされていた。

 「実存の臓器構造に酷似した組織レベルの再現は世界ではじめてで、腎不全の新たな治療や、移植可能な臓器の再現に向けた第一歩となる。今後はヒトの幹細胞を使った研究を進めていきたい」と、喜多村氏は述べている。

 立体的な腎臓組織は、これまで熊本大学などが2013年12月に、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作ったと発表している。

岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲