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2020年09月07日

「人工膵臓」が6歳以上の1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善 ポンプとCGMの組合せがさらに進化

米国立衛生研究所(NIH)/米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)

 米国の4ヵ所の小児糖尿病センターで実施された臨床試験で、血糖値を自動的にモニターしインスリン投与を自動的に調整する新しい"人工膵臓システム"が、6歳以上の小児の1型糖尿病患者の血糖コントロールを改善することが明らかになった。
CGMとインスリンポンプを組合せた"人工膵臓"
 この試験は、国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)にって実施されたもので、研究の詳細は医学誌「ニューイングランド ジャーナル オブ メディシン」に発表された。

 「現在の治療法では、血糖値を理想的で健康的な範囲に保つことができている1型糖尿病の子供は5人に1人未満です。1型糖尿病の人の健康を長期にわたり維持し、生活の質(QOL)を改善するために、血糖コントロールをさらに改善する治療法が求められています」と、NIDDKの糖尿病技術プログラムのディレクターであるギジェルモ アレアサ-ルビン氏は言う。

 「これまでの研究で、新たに開発した"人工膵臓"が、14歳以上の1型糖尿病患者にとって安全で効果的であることが示されました。今回の研究では、より年少の子供に実際に使ってもらい、安全性と効果を検証しました」。

 "人工膵臓"は、血糖コントロールを改善するために新たに開発された技術で、「クローズド-ループ コントロール」とも呼ばれている。これにより、健常者にみられる血中インスリンの変動パターンにより近づけられると考えられている。

 持続血糖モニター(CGM)*を使用して血糖値を連続してモニターし、インスリンポンプにより必要なときに適切な量のインスリンを自動的に投与する、「オールインワン」の糖尿病管理システムだ。

* 持続血糖モニター(CGM)は、連続して皮下の間質液のグルコース濃度を測定し、血糖値を推定することのできる装置。日本でも1型糖尿病患者と血糖コントロールの難しい2型糖尿病患者に使用可能であり、SMBGでは発見しがたい夜間・早朝の低血糖や食直後の高血糖、さらに血糖値の上下動などをモニターすることができる。(出典:日本糖尿病学会編著「糖尿病治療ガイド2020-2021」)
血糖値を目標範囲内に保てた時間が7%増
 多くの1型糖尿病患者は、1日に3~4回インスリン頻回注射と、指先などを穿刺して行う血糖自己測定(SMBG)により、良好な血糖コントロールを目指している。

 このシステムは、毎日のインスリン頻回注射、あるいはインスリンポンプ(CSI)療法に置き換わる、あらたなインスリン療法として開発された。

 研究グループは今回の研究で、6~13歳までの101人の小児の1型糖尿病患者を対象に、新しい"人工膵臓"を使用したグループと、または標準的なCGMとインスリンポンプを使用した対照グループに無作為に割り当て、4ヵ月ごとに検証とデータ収集を行った。

 このシステムが実際にどのように機能するかが分かるように、参加した小児患者たちに、それまで通りの日常生活や日課を続けてもらった。

 その結果、"人工膵臓"を使用した患者は、日中の血糖値を目標とする範囲内に保てた時間が7%増え、対照グループに比べ、夜間の血糖コントロールは26%改善したことが明らかになった。

インスリンポンプ・ SAP・CGM情報ファイル
夜間の低血糖が減少 子供と家族がよく眠れるように
 1型糖尿病患者にとって、高血糖を是正するとともに、低血糖を防ぐことがとても重要だ。重症の低血糖は昏睡や発作を起こし、さらには死に至る可能性もあり、とくに夜間の血糖管理をいかに改善するかが課題になっている。

 今回の研究は、"人工膵臓"により1日を通して血糖値を目標とする範囲内に保てた時間が11%増え、1日の到達時間は2.6時間増えるという結果になった。

 「血糖コントロールを改善でき、とくに夜間の時間帯の改善が大きかったのが印象的です。子供たちが夜間もより安全であることが分かり、両親や介護者も夜はよく眠れるようになりました」と、コロラド大学のバーバラデービス小児糖尿病センター小児科のポール ワドワ教授は言う。

 「この"人工膵臓"の技術により、子供とそのご家族が、糖尿病のために他のことができなくなる回数を減らすことができます。子供たちはその代わりに、子供であることを全力で生きることができます」。

 "人工膵臓"により発生した有害事象は16件あったが、すべて深刻なものではなく、ほとんどはインスリンポンプ装置の問題によるものだった。研究中に重度の低血糖または糖尿病性ケトアシドーシスの症例は発生しなかった。
1型糖尿病患者の負担を軽減し、糖尿病の管理を改善
 「NIDDKは何十年もの間、研究と技術の開発に資金を提供し、インスリン投与量の計算から継続的なモニタリングまで、1型糖尿病患者の負担を軽減し、糖尿病の管理を改善する、使いやすい自動化されたデバイスの開発を目指してきました。それは、患者を指先でのSMBGやインスリン注射から開放し、糖尿病合併症を短期および長期に予防するために必要です」と、アレアサ-ルビン氏は述べている。

 「"人工膵臓"はここ数年の努力の集大成であり、この技術により、1型糖尿病の子供とそのご家族に、そして将来的には糖尿病とともに生きるすべての人々に利益をもたらすことができる可能性があります」。

 この研究で使用された技術である「Control-IQ」システムは、リアルタイムの血糖モニター情報と、数学モデルにもとづく高度なアルゴリズム制御でプログラムされたインスリンポンプにより、インスリン投与量を自動的に調整する。この技術は、米バージニア大学(UVA)で開発されたものを、NIDDKの資金援助により発展させたものだ。

 今回の研究は、「国際糖尿病クローズド-ループ(iDCL)研究」の一環として行われたもの、この研究には、コロラド大学やバージニア大学に加えて、スタンフォード大学、イェール大学、ジェイブ医療研究センターなども参加している。

 iDCL研究のデータにもとづき、タンデム ダイアベティス ケア社は、6歳以上の子供での「Control-IQ」システムの使用について、米国食品医薬品局(FDA)から認可を受けた。今回の研究も、NIDDKと同社による資金提供を受け行われた。

 「1型糖尿病の子供が利用できる安全で効果的な"人工膵臓"を開発できれば、若年者や壮年、高齢者にいたるまで、1型糖尿病患者のQOLを改善するための主要なステップになります。今後も1型糖尿病の治療法の開発を続けます」と、NIDDKのグリフィン ロジャース氏は述べている。

Artificial pancreas effectively controls type 1 diabetes in children age 6 and up(米国立衛生研究所(NIH) 2020年8月26日)
A Randomized Trial of Closed-Loop Control in Children with Type 1 Diabetes(New England Journal of Medicine 2020年8月26日)

インスリンポンプ・ SAP・CGM情報ファイル
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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