がんばりすぎない糖尿病ライフ

2026年05月14日

災害への対策を万全に

 異常気象や台風、地震などの災害。2011年の東日本大震災以降、「糖尿病をもつ人が災害にどう備えるか」は、とても重要なテーマとして扱われるようになりました。日本では毎年のように災害が発生していますが、「そのうち備えよう」と思っていても、つい後回しになりがちですよね。

災害時は血糖マネジメントが乱れやすい

 糖尿病の血糖マネジメントに大切なのは、規則正しい生活、食事、睡眠、運動など、いわゆる「安定した生活」です。でも災害時には、その生活が一気に崩れてしまいます。食事の時間が乱れたり、十分に食べられなかったり、避難生活でストレスや脱水が重なったりと、普段の生活とは大きく異なる状況に置かれます。その結果、血糖マネジメントが悪化し、シックデイや低血糖で体調を崩してしまうことがあります。また、特に災害発生から数日間は、医療機関や薬局へのアクセスが難しくなる可能性もあります。

 2024年に糖尿病ネットワークが行ったアンケートでは、7割弱の人が災害時の対策や備えについて「あまりできていない」「まったく対策していない」と回答しています。また、かかりつけ医療機関から災害対策について指導を受けた人は1割未満と、糖尿病をもつ人の災害対策は十分とはいえない状況です。

具体的には何に気を付ければよい?

 日本糖尿病協会が提供している資料が非常にわかりやすく、こちらを印刷して必要事項を記載、保管しておくのがおすすめです。特に、「糖尿病連携手帳挟み込み型 防災リーフレット」、インスリン使用中の方は、「インスリンが必要な糖尿病患者さんのための災害時サポートマニュアル」もぜひ確認しておきたいところです。

 特に東日本大震災の発生時は、

  • ・食べられないとき、シックデイ(体調不良時)の過ごし方
  • ・具体的に何を備蓄しておくべきか
  • ・何かあったときの具体的な相談先や連絡先を控えておくこと
  • ・エコノミークラス症候群の予防
については、事前に十分な情報提供を受けていなかった方が多く、実際に対応できた方も少なかったと報告されており、今一度確認すべきでしょう。かかりつけ医に確認をしておくのもよいと思います。

自分以外の人でも分かる工夫を

災害への対策を万全に
<筆者撮影(生成AIで背景を取り除いています)>

 最後に私自身の工夫をご紹介します。冷蔵庫の一角に「1か月分くらいの内服薬と注射、注射針」をジップロックにまとめて置いています。水没しても何とかなりますし、家にいるときに避難が必要になれば、そのまま防災バッグに突っ込めばOKですし、もし自分が動けなくても、家族に「あそこのものを持ってきて」で伝わります。

 災害時は、自分自身も混乱しています。まして、家の中が散らかっていたり、停電していたりすると、「薬がどこにあるかわからない」という事態も普通に起こります。また、自分自身が取りに行けないことも多いでしょう。自分自身で管理されている方も多いと思いますが、だからこそ、万一に備え「自分以外の人でもわかる状態」にしておくことをおすすめします

 また、いつも持ち歩いているスマートフォンに、お薬手帳やインスリンの種類を書いたメモを保管しておくのも有用です。逆に、スマートフォンが使えない状況のことを考えて、財布や定期券入れなどに紙のコピーを持っておくのもよいでしょう。
 なお、インスリンポンプを使っている人は、予備の電池の携帯や、ペン型インスリンの在庫保管も忘れずに用意しておく必要がありますね。

糖尿病ネットワーク 災害に備えて

プロフィール

田中慧プロフィール画像

田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士

10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受験し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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