HealthDay News

2023年07月25日

糖尿病のシックデールール:何を食べ、何を飲み、何をすべきか――専門家のアドバイス

 糖尿病患者が風邪やインフルエンザなどに罹患した時(シックデー)には、血糖コントロールが乱れやすく、健康上の問題が発生するリスクが高まる。

 シックデーには何を食べ、何を飲むかといったセルフケアの方法、および、どのような状態になったら医師に連絡すべきかなどの「シックデールール」を、事前に知っておいた方がよい。

何を食べれば良いか

 米国疾病対策センター(CDC)は、シックデーには血糖値の下がりすぎを防ぐために、4時間ごとに約50gの炭水化物を摂取することを推奨している。米クリーブランド・クリニックのDiana Isaacs氏は具体的に、次のような食品を口にすることを提案している。

  • スープやブイヨン
  • クラッカー
  • パン
  • アイスキャンディー
  • 糖を加えていないアップルソース

 スープやブイヨンは、水分と炭水化物の双方の需要を同時に満たすことができる。

 「1型糖尿病の患者やインスリンを使用している2型糖尿病患者にとって、炭水化物を摂取しながらインスリンの投与を続けることが重要だ。ふだんのように飲食できなければ、血糖値が低下するリスクが生じることがある」とIsaacs氏は解説する。

 米国糖尿病協会(ADA)は、「15-15ルール」の有用性を啓発している。つまり、血糖値が低すぎる時には炭水化物を15g摂取し、15分後に血糖値を測定して確認するという方法だ。

 Isaacs氏は、「吐き気や嘔吐がある時には、パンやクラッカーのような胃に優しい食べ物がよい」とアドバイスしている。また、体調が悪くて固形物を食べることができない場合には、スープやブイヨンと同様に、アイスキャンディーや糖を加えていないアップルソースなども、水分と炭水化物を同時に取り入れるための選択肢になるという。

何を飲めば良いか

 「体調が悪い時に最も重要なことは、十分に水分を補給することだ。水分補給のみが目的の場合、砂糖を含まないものを選択することが大切」とIsaacs氏は語る。水のほかに、ジンジャーエード(生姜を加えた飲み物)、ジンジャーエール(生姜を加えた炭酸水)、紅茶なども良い選択肢だという。

 米アラバマ大学バーミンガム校(UAB)は、糖尿病患者は脱水症状により血糖値が上昇する可能性があるため、水分摂取量に注意するよう呼びかけている。

 この点に関連してクリーブランド・クリニックは、「血糖値が極めて高くなると、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスクが高まる」と解説。Isaacs氏は、「DKAは生命を脅かす合併症になり得る」とし、「水分の摂取も困難なような場合には、お茶やジンジャーエードであれば胃の調子が整えられて、摂取可能になることがある」とアドバイス。

 米マウント・サイナイ・ヘルスのwebサイトでも、生姜は伝統的に吐き気や嘔吐を抑えるために使用されてきており、最近の多くの研究から、胃のむかつきを抑制する可能性が示されていると解説されている。

 一方、米メイヨー・クリニックは、1型糖尿病患者は血中のインスリンが不足することから、電解質レベルが低下する可能性のあることに注意を促している。

 さらに、クリーブランド・クリニックによると、発熱や嘔吐、水分摂取不足による脱水症状も、体内の電解質レベル低下につながる可能性があるとしている。Isaacs氏は、「低糖のスポーツドリンクなどには電解質が含まれているため、それらが良い選択肢ではないか」と話している。

セルフケアのヒント

 Isaacs氏は、水分補給と十分な休息を取ることに加え、血糖値を頻繁にモニタリングすることの重要性も強調している。「持続血糖モニター(CGM)を用いると血糖値のモニタリングが容易になり、高値または低値の警告もしてもらえる。CGMを使用していない場合は、少なくとも3〜4時間ごとの指先穿刺による血糖測定を推奨する」とのことだ。

医師に連絡すべきタイミング

 「DKAから身を守るために、ケトン体レベルが上昇したり血糖値が300mg/dLを超えたりする状態が数時間続いていて、インスリンを追加しても下がらない場合は医師に相談すべきだ」とIsaacs氏は語る。このほかにCDCは、次の症状のいずれかに気付いた場合は、すぐに救急外来を受診する必要があるとアナウンスしている。

  • 体温が華氏101度(摂氏およそ38度)を超えている状態が24時間以上続いている
  • 水分を摂取できない状態が4時間以上続いている
  • 食事を摂取できない状態が24時間以上続いている
  • 嘔吐または重度の下痢が6時間以上続いている
  • 思考がまとまらない
  • 呼吸困難
  • 5ポンド(約2.3kg)以上の体重減少

 Isaacs氏は、「糖尿病患者は、医療従事者と相談しながら、個別のシックデールールを事前にまとめておく必要がある。そのルールには、医療従事者に連絡を取るべき状態も明示しておくべきだ。また、血糖測定器、ケトン体試験紙、低血糖時用のブドウ糖の錠剤・ジェルやグルカゴン、体温計、無糖の咳止めドロップやシロップ・のど飴、医療従事者の連絡先といったものをひとまとめにした、『シックデーキット』を用意しておくと良い」と助言している。

[HealthDay News 2023年7月25日]

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