糖尿病の本

2023年09月15日

総合診療 2023年 3月号
特集 自信がもてるようになる!

エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全
新薬からトピックスまで

  • 編・著:大西由希子(朝日生命成人病研究所附属医院)
  • 発行日:2023年3月 6日
  • 判型・頁:B5・136
  • 価 格:定価2,750円 (税込)
  • 出版社:医学書院
  • 概要: 告白しなければならない。研修医時代、私は糖尿病診療が苦手だった。「雨が多かったので、ウォーキングできませんでした」「外食が多かったので、インスリンを打てない時が多かったのです」と、患者さんは血糖管理がうまくできない理由を外来でおっしゃる。私自身は日々の忙しさを言い訳に、食生活は乱れ、運動らしい運動もせずに仕事ばかりしていたにもかかわらず、自分のことは棚に上げて「糖尿病患者さんの言い訳ばかり聞きたくないなぁ」と思うことさえあり、患者さんたちに全く寄り添えていなかった。
     糖尿病を専門として志した理由は、大学院で糖尿病研究室の先輩方と一緒に研究させていただきたいと思ったからで、糖尿病診療を熱望していたわけではなかったかもしれない。そんな大学院生の頃、患者さんに「先生だって、おいしいものをおなかいっぱい食べたいでしょう?」と聞かれ、はたと気づいた。振り返ると、この1カ月に飲み会が何回あって、雨の日が何回あって、栄養バランスに気をつけた食事を何回できたか、自分は即答できるだろうか。「糖尿病患者さんは、食事・運動療法をいつも気にしながら生活しているなんて、えらいなぁ」と、患者さんに敬意をもって診療するようになった。
     糖尿病診療は、血糖管理をしつつ、合併症をスクリーニングして早期発見・早期治療することも大事だ。糖尿病網膜症のスクリーニングをしたら緑内障が見つかった、脂肪肝をフォローして腹部エコーをしたら早期の腎臓がんが診断されて手術できた、何十年も診ていて元気だった人がいつもと違う様子でうつ病を疑い精神科での治療にすぐにとりかかれた、といったエピソードは日常茶飯事である。糖尿病で定期的な通院をしていなかったら、新たな病気の発見が遅れただろう。まさに「一病息災」だ。
     今、私の外来には、90代で糖尿病のある人も少なからず元気に通われている。40~50代で糖尿病と診断されて以来、食事・運動療法に日々取り組み、常に血糖管理が完璧というわけではなかったかもしれないが、その時代その時代に一番よいとされる食事・運動・薬物療法を順守する努力を重ね、月々の外来に通い、実施すべき検査や検診を受け、新たな病気も早期発見・早期治療で克服している。「糖尿病と診断されて、同世代のなかで一番早く死ぬと思っていたのに、今となっては僕が一番元気に長生きしちゃったよ」と笑顔で話してくださる。
     そうだ、糖尿病はうまく付き合えば、一病息災で元気に幸せに長生きできる病気なのだ。自分の診療が少しでも糖尿病をもつ人のお役に立てればと思い、また本特集が、より多くのみなさまの幸せにつながればと願う。

目次:
特集 自信がもてるようになる! エビデンスに基づく「糖尿病診療」大全──新薬からトピックスまで
■I章 「薬物療法」の新スタンダード
①2型糖尿病の薬物療法の「考え方」
 能登 洋
②糖尿病に合併した「高血圧症」「脂質異常症」の薬剤選択
 横溝 久│川浪大治
③メトホルミンとイメグリミン
 藤嶋 伶│宮塚 健
④DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬
 酒井麻有│加藤丈博│矢部大介
⑤SGLT2阻害薬
 田中健一│岡田洋右
⑥SU薬とグリニド薬
 中西修平
⑦インスリンとさまざまな配合注射剤──比較的新しい注射剤と総合診療医が活用する注射剤
 岩田葉子│弘世貴久

■II章 基本が大事! ちゃんとできてる? “おさらい”糖尿病診療
①2型糖尿病の病態
 山田 悟
②糖尿病患者が定期的に行ったほうがよい検査
 及川洋一│島田 朗
③血糖自己測定(SMBG)と持続グルコース測定(CGM)
 安藤精貴│西村理明
④2型糖尿病の合併症──眼
 池田恒彦
⑤2型糖尿病の合併症──腎臓
 和田健彦
⑥2型糖尿病の合併症──神経
 水地智基│三澤園子
⑦2型糖尿病の合併症──冠動脈疾患と脳血管障害
 堀内 優│田邉健吾
⑧糖尿病の足病変とフットケア
 富田益臣
⑨2型糖尿病の治療──食事療法
 上野慎士│清野祐介│鈴木敦詞
⑩2型糖尿病の治療──運動療法
 田村好史
⑪いろいろな世代の糖尿病
 荒田尚子
⑫どうする? 高齢糖尿病患者の「マルチモビディティ」と「ポリファーマシー」
 大浦 誠
⑬「1型糖尿病」の患者が受診した際の注意点
 高池浩子
⑭「耐糖能異常」の段階で行うべき指導と治療
 大塚雄一郎│中神朋子

■III章 知っておきたい! NEWトピックス
①2型糖尿病と「スティグマ」
 加藤明日香
②「コロナ禍」における糖尿病診療
 大杉 満
③糖尿病患者の「災害」への備え
 石垣 泰
④糖尿病と「認知症」
 荒木 厚

今月のQuestions
今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題

●Editorial
一病息災:糖尿病とともに生きる
 大西由希子
●What’s your diagnosis?|243
お酢を足せば少ないはずなのに…v  浜田 禅|風間 亮|牧 隆太郎|北村 大|浅川麻里
●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|35
「先生は、何もわかっていない」
 浜田久之
●対談|医のアートを求めて|2
医療×映画──社会の枠組みからはみ出した「声にならない声」を表現する 映画『MOTHER マザー』より
 大森立嗣|平島 修
●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|36
タマゴは1日1個までしかダメですか?
 上田剛士
●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|3
“Residents are alright!” 研修医の「心理的安全性」を守るには?
 佐田竜一|木村武司|長野広之
●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|74
“Hi-Phy-Image”で乗り越えよう!
 比嘉真凡|佐藤直行|徳田安春(監修)
●臨床小説|後悔しない医者|今と未来をつなぐもの|35|最終回
未来へ向かう医者
 國松淳和
●投稿 Update’23
末期腎不全期の糖尿病治療では、DPP-4阻害薬よりGLP-1受容体作動薬を選ぶべきか?──最新研究より
 大城 譲

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