いま、1型糖尿病は/内潟 安子先生

2009年09月14日

飲みものなら胃に残らないし・・・

夏になると、サラッとしたものが食べたくなったり、食欲がすこし落ちたりと、食べるものがすこし変化することがあります。
 食欲とか、食べるものの変化は、誰にもあることで、自然な人間の営みのひとつといえましょう。
飲みものなら胃に残らないし
暑いときは、冷たいもの、喉越しのいいものをスッと入れたいと思ってしまいますね。
 昼食がいつものように食べられなかったから、夕食までにお腹が空いてきてしまう。だからといっておにぎりなどもスッとは入らないし、それなら、ジュースなどのソフトドリンクで、低血糖予防の意味も兼ねて飲もうと考えてしまいます。

飲みものは飲んでも胃にあまり溜まらないように感じてしまいます。ごはんなど固形物が入ると胃が重い感じがする時候だからなおのこと、飲みもののほうが胃に負担がなく、スッと胃から腸に流れていってしまうから安心という気持ちになってしまいます。

HbA1cがよくなっているつもりが
糖尿病センターでは、来院されると診察室に入る前に採血して、血糖とHbA1cの結果が出てから診察室に呼ばれる、という流れになっています(現在、多くの医療機関がそのような流れになっていると思います)。 診察室に入られると、
 「先生、今回はHbA1cが下がっているでしょう?」と開口一番に聞かれます。
 「何かありました?何かいいことでも??」
 「いいえ、あまり食べられなかったものですから」
 そこで、HbA1cを見ます。あまり下がっていないのですね。同じか、すこし上がっていたりすることも。
 「どうして下がっていないのかな。あまり食べられなかったから。体重もすこし減ったようにも思うのですが」
 体重を測定すると、たしかに増えていませんね。
 「食べられなかったから、インスリンをすこし減らしていたとか?」
 「いいえ、インスリンは減らしていません。低血糖を起こしてくればすこし下げようかなと思っていたのですが大丈夫でしたので」
 さて、どうしたのでしょう。あまり食べられなかったので、HbA1cがよくなっていると思って来院されたら、HbA1cは下がっていない。
 HbA1cがまだ高い方で、過食ぎみの方が食べるものを節制するとHbA1cが下がります。この理屈でいけば、HbA1cが下がってもいいわけですね。

よくよく話しをお聞きしますと、昼に思ったほど食べられなかったから、食事と食事の間に低血糖にならないように飲みものをとっていたことがわかりました。この飲みものが、水とかお茶ではなく、ソフトドリンクのたぐい。
 血糖値が上がってもすぐ下がるから大丈夫という気持ちもわかるのですが、意外とHbA1cは上がってしまいます。量の問題もあるでしょうが。

夏場の注意として
 このようなことは、よくあります。HbA1cがよくなっていると感じる自分の気持ちと結果が一致しない。変な感じかもしれませんが。
[ Terahata ]



プロフィール

内潟安子先生 写真

内潟 安子
YASUKO UCHIGATA
東京女子医科大学名誉教授

1977年金沢大学医学部卒業
金沢大学医学部大学院卒業
富山医科薬科大学医学部 第1生化学に国内留学
米国国立衛生研究所(NIDR)に海外留学
東京女子医科大学 内科学第三講座主任教授 糖尿病センター長、
東京女子医科大学東医療センター 病院長、
東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長を歴任

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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