いま、1型糖尿病は/内潟 安子先生
2010年04月28日
高校生まではうまくいっていたのに・・・

大学生になったら、言うことを聞かなくなった、社会人になったら、言うことを聞かなくなった、このことです。
いつ帰宅しているのかわからない、何をたべているのかわからない、電話をしても通じない、電話しても「うるさい」と言われ、切られてしまう・・・
そして、一番の頭痛のタネは、HbA1cが上がってしまって、下がらない!このことでしょう。
朝の起床もおかあさんに起こしてもらっている、お母さんが起こさなければ遅刻してしまう、こんな具合であったと想像してしまいます。どうでしょうか。
言い換えれば、「自分でなにもできていなかった」ということでしょうか。
しかし、そのような「にがい経験」を通して、学んでいくわけですね。もう二度としないぞ!と。そして、お酒の飲み方が上手になっていき、付き合いも上手にできるようになっていき、体調の悪いときでもうまく仲間と付き合うことを覚えていくわけです。
「高校生時代まで親がかり」のインスリン注射をしている若者はも、大学生になったから、社会人になったからといって、全員がHbA1cを悪化させるわけではありません。
20歳過ぎてもうまくできない若者をみていますと、まず、自分の生活を自分のこととして考えていない、なぜなら、これまですべておかあさんが面倒をみてくださっていたから、これからも「だれかなんとかしてくれるでしょ」という考えが、強くあるように思えてなりません。
ですから、基本的なことをマッタクといってもいいほど、知らない。インスリン注射量の調節の仕方を知らない、食物のうちでどれが血糖を上げやすいものか下がりやすいものか、知らない。言いかえるなら、朝になったら決まった量の注射を打てばいいのでしょ!昼前も打てばいいのでしょ!という気持ちから、前に進んでいないのですね。
食事時に食べるのを逸したらどうしよう?、どうしていいかわからないから、食べないのだから注射も打たないでおこう、ということになってしまう。
簡単にいえば、なぜインスリン注射を自分はしているのか、わかっていない、ということになりましょうか。
もう自分は親から愛させていない・・・、親から無視されてしまった・・・、もうどうでもいい・・・、無気力な若者になっていってしまいます。
うつ状態、ニート、無気力、適応障害、いろいろな名前が、新聞でもでてきますね。
大人になるにはすこし早いのですね。年齢では大人なのですが、選挙権はもらえるのですが、心は大人にまだまだ、なれないのですね。
プロフィール
内潟 安子
YASUKO UCHIGATA
東京女子医科大学名誉教授
1977年金沢大学医学部卒業
金沢大学医学部大学院卒業
富山医科薬科大学医学部 第1生化学に国内留学
米国国立衛生研究所(NIDR)に海外留学
東京女子医科大学 内科学第三講座主任教授 糖尿病センター長、
東京女子医科大学東医療センター 病院長、
東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長を歴任
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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