インスリンポンプSAP・CGM情報ファイル

インスリンポンプSAP・CGM情報ファイル

投稿者ルーさん
主治医山田 英二郎 先生
群馬大学医学部附属病院内分泌・糖尿病内科助教

2015年07月 公開

プロフィール

年 齢19歳
性 別女性
職 業学生
病 態1型糖尿病
糖尿病歴14年
ポンプ療法歴0.5年
使用製品ミニメド 620G
photo

 19歳女性です。1型糖尿病は5歳の時に発症しました。半年前までインスリン注射での生活をしており、人目を避けて血糖測定、注射をしてきました。また、血糖測定が小さい頃から億劫でなかなか測る気になれず、さらに高校生になると、忙しくなり、食事やおやつが不規則な中、1日1回も測らずに勘でインスリン注射をしていました。そんな生活を続けているうちにHbA1cが9.8%になってしまいました。「注射さえ打っていれば大丈夫よ」と小さい頃からお母さんが安心させる為に言ってくれていた言葉を「なら測らなくてもいいんだ!」と勝手に解釈し、最初はただの反抗だったのに、いつからかそれが「習慣」になってしまっていました。

 でも高校を卒業し大学に入ると、まだまだ遠い未来だと思っていた結婚や妊娠がごく間近である事に気づき焦りを感じました。「今のままでは将来の旦那さんに迷惑をかけるだけでなく赤ちゃんに悪影響を及ぼしてしまう。女性としての自信を持ちたい。」、そう思ったのがポンプ導入のきっかけです。そのため小児科から内科に移りました。

 そして内科に転科してインスリンポンプを導入しました。半年前はまだSAPが連動していないポンプであったため、血糖測定を1日に必ず行うということが私にとっては本当に大変で血糖測定回数が不安定でした。そんな時、今回のポンプの話を聞きました。1日最低3回の校正を使って強制的に血糖測定をしなくてはならないと聞いたので、「これを利用しよう」と自分で決め、新しいポンプに変えました。

 実際に着けてみると就寝時や食後の血糖の動きが目で見えるようなり、インスリン量を考えやすくなりました。また、今までHbA1cを下げるという漠然とした目標だったのが、血糖値とボーラスのデータが残る事で、時間別に具体的なアドバイスを貰えるようになり、小さな目標を立てられる様になりました。目標を達成できた時はとても嬉しいです。

 特に面白いのは映画館で映画を見ている時です。ジュースやポップコーンを食べながら映画に集中していると、なかなか血糖コントロールまで気が回らないのですが、このポンプにしてからはトイレに行かなくても血糖値がわかり、インスリンも注入できるので、とても感動しました。今では見終わると300mg/dL近くになってしまっていた血糖値も入館時から変動なく安定しています。

 ポンプ療法を導入してHbA1cは7.1%になりました。そして今の目標は6.8%です。お母さんにこの先、「仕事と妊娠の両立はどうすれば良いと思う?」と聞いたところ、「HbA1cを常に正常にしていれば良いのよ」とアドバイスを貰いました。なぜか今まで以上にこの言葉にはっとさせられている自分がいます。今後もそれを実行していこうと思っています。

主治医より

山田 英二郎 先生 群馬大学医学部附属病院内分泌・糖尿病内科助教

 ルーさんは小児科医である私のマンションのお隣さんからの紹介でした。最初に診察したときにはHbA1cは悪い状態でしたが、『内科への移行を機会に血糖コントロールを良くしたい』という強い意思を感じ、インスリンポンプ療法も是非考えたいとの事でした。インスリンポンプ導入には、外来導入と入院下での導入と2種類あり、患者さんに選択していただくのですが、ルーさんは外来導入を希望されました。偶然なのですが、ちょうど同時期に、ルーさんのお姉さん世代にあたる1型糖尿病の方がインスリンポンプ導入を希望されました。当院では外来導入はそれまで一人ずつ行っていたのですが、どちらもご理解が早いだろうという憶測と、一緒に導入する事で患者さん同士の新たな"つながり"ができるのではないかと考え、医師、糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師で構成されるインスリンポンプチームで話し合い、あえて同時導入することにしました。導入に関してはやはりスムーズに行う事ができ、彼女達は今でもその"つながり"を持って1型糖尿病患者さん主体に行っているDMカフェなどで一緒に行動しています。

 ほどなくして、糖尿病療養指導士の看護師に血糖測定が少ないと報告を受けました。今まであまり血糖測定をしてこなかったため、おそらく血糖測定に関して、何か抵抗感みたいなものがあるのではないかと考えました。ポンプ療法を選択している人にとって血糖測定は必須です。ペン型であれば高血糖であってもインスリンが必ず体内に入るので、そうそうケトアシドーシスになることはありません。ただインスリンポンプの場合、インスリンがちゃんと体内に入っているかどうかを調べる方法は血糖測定しかありません。それなので困ってしまいました。今までやってこなかった事を急にしろと言われても、なかなかうまく行きません。ただ、これに対してルーさんはSAPを導入するという答えを自分で出しました。そこには自分で考え、実行に移そうという意思がありました。今ではSAPを導入して血糖測定もきちんと行っています。まだ血糖コントロールがどのようになっていくか、また今後もSAPやインスリンポンプを継続するかどうかはわかりませんが、今回のことはとても良い経験になったのではないかと考えています。

導入医師データ

■CSII導入患者数(年間)
12名(2014年)

■CSII療法導入歴
2年

■どのような患者さんに導入を勧めますか? 選択のポイントを教えてください
CSII:
1型糖尿病の方。2型糖尿病でインスリン分泌が枯渇している方。糖尿病合併妊娠の方。
SAP:
SAPのメリット、デメリットが理解できる方。経済的に余裕のある方。

■CSIIやSAPでメリットに感じていること、また、CSII導入手順等を教えてください
CSIIのメリット:
基礎インスリンの微妙な調整による低血糖の抑制。ボーラスウィザードを利用した食後血糖の調節。
CSII導入手順:
今年からは、半数以上が外来導入(担当医師、看護師、管理栄養士による指導)。
SAPのメリット:
血糖の変動を見ることで、低血糖や高血糖に対して早期に対応できるようになる。また、そうすることで糖尿病とより向き合えるようになる。

■導入に際しての課題、悩みなど
CSII/SAPとも導入後により多くの診療時間が必要となる。
看護師、管理栄養士、検査技師、事務などが糖尿病チームの一員としてCSII/SAPを理解して、一様に患者指導できるようになる必要がある。

■ホームページURL
群馬大学医学部附属病院内分泌・糖尿病内科 ▶

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