インスリンポンプSAP・CGM情報ファイル

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トラブル対策 SAP体験談

1型糖尿病になって世界が変わった私...SAPになって再度変わる!

投稿者kumi さん
主治医廣田 勇士 先生
(神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教)

2014年11月 公開

プロフィール

年 齢49歳
性 別女性
職 業保育士
病 態1型糖尿病
糖尿病歴12年
ポンプ療法歴4年11カ月
使用製品ミニメド 620G
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 私は37歳で1型糖尿病を発症しました。直後から血糖値のHi&Lowが乱高下し、意識喪失することが頻繁にあり、1人で行動できなくなりました。身体の異変に心がついていけず、泣き疲れて「どうせなら早く死にたい」と思い詰める毎日でした。カロリー計算とインスリンペンの治療をできるかぎり取り組んでも、HbA1cは8〜10%と劣悪状態。毎月、数字で人生を判定されているような通院生活に、とても深い無気力感を感じていました。

 転機が訪れたのは40歳で第3子を神戸大学病院で出産したことでした。その際に最先端医療を受けることになったのです。それがインスリンポンプ(CSII)療法で、カロリー計算→カーボカウントで2%。ペン治療→CSII(インスリンポンプ)で2%と、HbA1cは一気に4%も下がり、以降6%台は自然な日常となりました。

 しかしその後、予測不能な低血糖に悩まされました。先生によると更年期障害の一種なのではとのことでした。私の生理はしっかり30日周期のサイクルなのですが、生理初日の基礎体温低下にズレがでてくるようになりました。そして、生理の始まる日の24〜36時間前に突然インスリンの効きが良くなり( ベーサル・ボーラスともに)、運動効果も加わって、意識が喪失するというアクシデントが頻発するようになったのです。さっき外来で測ったら120だったのに、受付を目指している途中で突然ふらふらになる。でも自覚はなくてそのうち意識が飛んだり、周りが異変に対処し始める。つまり、生理が始まる36時間内前。予測してベーサルを下げたり、ボーラスを減らして、高血糖の補正をインスリンで対処すると、それがまた倒れる原因になるという・・。倒れ方が尋常でないことが(痙攣や失禁)ほとんどだったため 1人で行動できず(家族が倒れるのを繰り返し見ているので)、それが生活の中の足かせになってしまいました。

 そこで、2014年10月から、女性ホルモンの変化による予測不能な低血糖での意識喪失を防ぐ治療として、CGM付きのインスリンポンプ「SAP」を使用することになりました。閉経に向けてSAPをつけてからは同じことが起こっていてもアラートやアラームが事前に知らせてくれますので、女性ホルモンの影響かどうかわからなくても、とにかく急降下している現実は知らせてくれるので、迅速に低血糖対策ができるようになりました。そんな過去の様々な経験値とSAPのアラーム音が私のQOLを見事に高め、社会復帰を実現してくれました。

 CSIIのみではわからなかったリアルな血糖の変動を知ることでSAP機能をフル活用し、食直前の血糖値から血糖変動が終わるまで波を起こさない工夫の数々に挑戦。血糖急上昇が始まる時だけ上昇を抑える「スクエアウエーブ」*を使用し、脂質のコントロールには変動幅50mg/dl以内のほぼ直線を描く血糖コントロールを12時間にわたり操れる実生活を楽しんでいます。

 女性ホルモンの影響で起こる予測不能の低血糖も体感やセンサーグルコース値、アラーム音でブドウ糖とベーサルダウンを使って事前に対処できるようになりました。今、SAPの優れた機能を充溢できるのはペン治療ではできない長時間投与や少量の投与が可能になったことを経験したからだと思います。

 いま、発症した12年前には考えられなかった生活を、最先端医療で変えて下さった廣田先生に、深く感謝しています。同様の患者さん皆が、医療費を気にせず治療に専念し続けられる未来を願っています。

*SAPでは、主に3種類の追加インスリン注入(ボーラス)方法があります。
■ノーマルボーラス
必要時に行う追加インスリン注入。毎日の食事・間食で糖質量の多い食事をとったときや、血糖値の補正のために使用します。

■スクエアウェーブボーラス
長時間(30分〜8時間)をかけて均一に追加インスリンを注入する方法。吸収に時間のかかるたんぱく質や脂肪の多い食事をとるとき、パーティなど長時間にわたって少量ずつ炭水化物をとるような食事のとき、胃不全麻痺による消化遅延で吸収が遅れるときなどに用います。

■デュアルウェーブボーラス
ノーマルボーラスの後、スクエアウェーブボーラス注入を行う方法。素早く吸収される食べ物と、吸収に比較的時間のかかる食べ物を同時に食べる場合などに用います。ボーラスの一部をノーマルボーラスとして(今すぐ)、一部はスクエアで(時間をかけて)という形で注入します。

主治医より

廣田 勇士 先生 神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科 助教

 私とKumiさんの出会いは約9年前になります。出産を契機に当院へ来られました。当時、お子さんを出産されたばかりでしたが、血糖値の乱高下に悩んでおられました。しかし、大変な中でもいつも元気で、周囲の人々を気遣い、面白いことを言うKumiさんに「すごいパワフルな人だな〜」と圧倒されていました。

 その後、なかなかコントロールがうまくいかず、大変苦労されていました。そんな状態から脱してもらえるよう、まずはカーボカウントの事をお話ししました。その後、みるみるカーボカウントを身につけられ、どんどんコントロールは改善していったのです。次はポンプです。インスリンポンプ療法で安定した血糖コントロールができるようになりました。彼女の言葉を借りれば、『Dr.自分』として成長されました。

 その後、閉経に近づき月経前のインスリン調整が困難になってしまい、突然の重症低血糖を起こす状態が頻発するようになりました。女性ホルモンのレベルが変化したためか、いままでの調整方法ではコントロールが難しくなったのです。そこで、ちょうどSAPが登場しました。当初は、これまでの『Dr自分』 としてコントロールされてきたイメージと、実際に620Gの画面に示されてくるセンサ値の線との違いに悩まされることもあったようです。しかし、チャレンジ精神旺盛な彼女は、スクエア、デュアルウェーブ、テンポラリーベーサルと様々な機能を駆使し、いろんなものを食べて、その後の血糖を制覇していきました。『Dr自分』は、SAPによってさらに進化したようです。

 私は1型糖尿病ではありませんが、彼女の行動とSAPの推移を見せてもらうことにより、まるで実体験しているかのような錯覚に陥ることがあります。SAPをつけることにより、医療者と患者さんが、血糖推移を共有することができ、患者さんの体験を、まるで目の前の映像かのように捉えることが出来るようになったと感じています。

 Kumiさんは1型を発症してから生活が一変しましたが、SAPによってまた一変したようです。SAPを手に入れこれまで以上にパワフルに活動し、1型患者会「DMF KOBE」では、なくてはならない存在となって、患者さんたちを励ましておられます。そんな彼女が元気で過ごすことができるよう、今後もサポートしていきたいと思います。

導入医師データ

■CSII導入患者数(年間)
20~30名

■CSII療法導入歴
10年

■どのような患者さんに導入を勧めますか? 選択のポイントを教えてください
CSII:
CSIIを望む1型患者さん、特に暁現象がある患者さん、低血糖が多い患者さん。
SAP:
血糖変動に興味がある患者さん、無自覚低血糖のある患者さん、低血糖不安がある患者さん、妊娠希望のある患者さん。

■CSIIやSAPでメリットに感じていること、また、CSII導入手順等を教えてください
CSIIのメリット:
CSIIは血糖コントロールが改善したり、低血糖が減ったりというメリットがありますが、患者さんのQOLがあがることが一番のメリットだと思います。SAPになれば、血糖推移が分かることから、低血糖不安などが強い患者さんには特に有用だと思います。
CSII導入手順:
CSIIの導入手順としては、導入前から資料などを用いて、ポンプの事を理解していただきます。そして、まずはポンプを装着してもらい、ボーラス手技の獲得、その後絶食試験を行いながらベーサルインスリンを適正な量に設定します。また導入当初から安全面の指導としてトラブルシューティングをしっかり行います。使用に慣れてきたら、Wizard機能など便利な機能を追加していきます。
血糖の変動を見ることで、低血糖や高血糖に対して早期に対応できるようになる。また、そうすることで糖尿病とより向き合えるようになる。

■導入に際しての課題、悩みなど
導入の課題は、知識提供をしっかりと行うためには、導入に時間がかかるということです。看護師、管理栄養士、検査技師なども含めたチームで携わり、様々な角度からサポートすることで課題は解決すると考えます。また、導入後も、慣れるのに時間がかかることもありますので、外来でのサポート体制が非常に重要だと考えています。

■ホームページURL
神戸大学医学部附属病院 糖尿病内分泌内科学部門 ▶

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