糖尿病セミナー

27. 糖尿病と高血圧

2014年11月 改訂

高血圧のくすり

 減塩、減量、運動などを行っても血圧が十分に下がらないときは、薬による治療を始めます。高血圧に使われる薬(降圧薬)は、長期間服用することが多いので、患者さん自身も薬のことを知っておくようにしましょう。ここでは主な降圧薬を簡単に紹介しておきます。

自律神経障害と血圧変動の異常

 血圧は、からだの姿勢や活動状況に合わせて適切な値になるように調節機能が働いて、常に変化しています。ところが糖尿病で自律神経障害があると、血圧の調節機能が低下し、本来夜間より高くなるはずの日中の血圧が低いままだったり、起立時に血圧が低下したりします。
 とくに注意が必要なのは、降圧薬を服用している人の、起立性低血圧(立ちくらみ)です。立ち上がるときは、しばらく腰掛けたあとにゆっくり立つようにしてください。また、血圧が下がり過ぎていないか確認したり、医師に相談するようにしましょう。
RAA(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン)系抑制薬  レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系とは、おもに、体内にナトリウム(塩分)を保つための仕組みです。この仕組みが必要以上に作用すると、血管が収縮して高血圧になります。この作用を抑える薬は、血圧を下げると同時に血糖値も少し下げ、腎症などの合併症を予防する効果もあるので、糖尿病の患者さんによく処方されています。
Ca(カルシウム)拮抗薬 血管細胞内のカルシウム濃度が高いと、血管は収縮します。この薬は、血管細胞へのカルシウム流入を防ぐ作用をもっていて、降圧作用が比較的強い薬です。安静狭心症(睡眠中などの安静時に発作が起きる狭心症)にも処方されます。長時間作用型のCa拮抗薬(血管をゆっくり広げるタイプ)は、血糖値を少し低下させます。
利尿薬 尿中へのナトリウムの排泄を促すことで、血液量を減少させて血圧を下げます。血糖値を少し上げることもあります。
β遮断薬 交感神経の働きを抑えて血圧を下げます。労作狭心症(おもに運動によって発作が誘発される狭心症)などにも処方されます。低血糖の症状を現れにくくしたり、低血糖状態を長引かせることがあるので、糖尿病の薬物療法をしている人は注意が必要です。
α遮断薬 血管を収縮させる神経の働きを抑えます。血糖値や血清脂質濃度を低下させます。ときに、起立性低血圧を起こすこともあるので、神経障害がある人は要注意です。

糖尿病は自己管理が大切な病気といいますが、高血圧も同じでしょうか?

. 同じです。高血圧が「治る」ということはありません。生活習慣の改善で血圧が下がったからといって、元の生活に戻してしまえば、また血圧は上がってきます。高血圧の薬も、高血圧の原因そのものを治すわけではありません。高血圧の治療では、患者さん自身の生活管理が大きな意味をもっています。

家庭用血圧計で血圧を測定する際の注意点を教えてください。

. まず、測定器の使い方説明書をよく読んで、正しい測定方法を覚え、次のような点に気をつけながら測定してください。
 (1) 腕を机や台に乗せて心臓と同じ高さにし、リラックスした状態で測定する、(2) 腕を圧迫しない(袖を腕まくりしない)、(3) 測定中はからだを動かさない、(4) 信頼性の高い測定器を使う(指先や手首で測る測定器には手軽に測れるメリットがあるが、正確さの点では腕で測るタイプがよい)。
 また、血圧は時々刻々変化していますので、起床後(排尿後、服薬前、朝食前)や就寝前などに、安静座位で一機会2回測定しましょう。そして、その平均値を必ず記録し、通院の際に医師に見せてください。普段の生活の中での測定により、病院だけでの測定ではわからない血圧の状況が明らかになり、治療法の決定・変更に大変役に立つ情報です。

病院で血圧を測ると、家で測るより高くなるのはなぜですか?

. 「白衣高血圧」と思われます。家庭ではそれほど血圧が高くなくても、病院に行き医師や看護師の姿を見ると、緊張して血圧が上がる現象です。病院と家庭で測る血圧の差が大きいケースでは、ストレスに敏感で環境に左右されやすく、普段の生活でも血圧が高くなる場面が多いと考えられ、その点を考慮しながら治療を進めていきます。
 なお、白衣高血圧とは反対に、診察室で測るとあまり高くないのに家庭血圧が高い「仮面高血圧(逆白衣高血圧)」というタイプもあります。このタイプは見逃されやすく、結果的に合併症が起こりやすい傾向があるので、より注意が必要です。

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