開催報告

第32回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ

東京女子医科大学糖尿病センター 小林浩子

第32回目のミーティングには患者さん26名、ご家族3名、スタッフ医師4名、栄養士1名が集いました。5割の方がインターネットでこのミーティングのことを知り、4割の方が初めてミーティングに参加されました。
以前は病気を発症しても、患者、家族、主治医の間で問題を抱え込み、解決していくしかありませんでした。しかし現在はインターネットが普及し、一歩踏み出せば、様々な情報が入ってきます。
そのような中、今回は発症して間もない3組のご夫婦が参加されました。1型糖尿病は家族にも正しく理解していただきたい病気です。ご家族の方も、先輩患者さんと話し、不安を分かち合うことで、改めてパートナーをサポートしていく勇気と自信を得ていただけたと思います。

さてチャプレンはこの夏、看護師向けのセミナーを行いながら、医学用語に“pain”はあっても“suffering”という言葉がないのはなぜか、と考えたそうです。確かにペインクリニックに受診すると身体の痛みを和らげる薬や方法のアドバイスはもらえます。ですが、心の痛み、すなわち不安や苦しみとどう向き合っていくかは患者さんが答えを出すしかありません。では、医療者はどうすれば患者さんの心の痛みにまで目を向けることができるのでしょうか。

発症して3か月の女性は、新しい職場で糖尿病をどう伝え、どこで注射するのかを質問されました。患者会では度々、話題に挙がるテーマです。このミーティング中も人前でインスリン注射をする人、トイレに行かれる人、色々です。注射を始めて30年の方も、毎回トイレに行くそうです。以前、病院の片隅でインスリン自己注射をする男性の姿をみて、危ないと思い、目に焼き付いてしまったそうです。しかし勿論どこであっても気にせずに、ササッと注射する方もいます。模範回答はありません。
人はそれぞれプライバシーエリア(他人に侵入されたくない空間)があり、それは本人にしかわかりません。他人にはわかりません。性別や年齢、文化によっても考え方は異なりますが、色々な体験談をきき、経験を重ねる中で、自分の心地よい方法を見つけていきます。

後日、外来で70代の患者さんが、「昔は仕事の都合で、食前に注射できないことも多く、食後にあわてて注射してなんとかやってきました。でも今はインスリンに感謝しながら丁寧に注射するんです。そうすると不思議なもので、身体の中でとても上手く働いてくれます」と話していました。医療者は“インスリン注射”を“糖尿病の治療”としては知っていますが、患者さんが日々どんな気持ちでインスリンを注射しているのかは知りません。心の痛みに目を向けるために、患者さんから学ぶべきことは多いと感じました。

チャプレンは以前、幼稚園の園長だった時に美しい花をみつけ、園児たちに「きれいな花だねえ〜」と言ったそうです。ですが、子供たちは花の近くまで行って「ギャー!!! 蜘蛛がいる〜」と駆けもどり、抱きついてきたそうです。“美しい”ものでも視点を変えれば、“怖いもの”ものになります。つまり自分が感じていることだけが正しいわけではありません。
しばし自分の言動や考えを省み、謙虚に生きることで、他人にも寛容になれます。自分にとって大切なものを見失わないよう、時には子どものように「怖い」と言ってしがみつく素直な気持ちも大切です。
いつの日か“suffering”が医学用語として使われるように、患者と医療者が互いを尊重し、医療者として患者さんの言葉に耳を傾けていきたいと思います。