糖尿病アジアネットワーク

2007年07月25日

ベトナムの糖尿病をめぐる現状

 インドシナ半島の東部分を占めるベトナム社会主義共和国は、国土面積は約32万9,000km2で、現在の人口は世界の13番目の約8,410万8,000人となっています。人口増加率は1.21%です。

 近年、ベトナムは国外に向けて解放政策、国内で協調政策を進め、力強い経済成長を遂げつつあります。

 GDPは1994年から2005年まで毎年6.81%(平均値)上昇し、2006年には8.4%、2007年の上四半期は前年に比べ7.7%上昇しました。そして、2007年1月11日にはWTOの150番目の公式加盟国として承認されました。

 このような目覚ましい経済発展が物質的な豊かさをもたらした反面、伝統的な生活スタイルや食習慣が失われており、結果的にこれらを原因とする疾患(生活習慣病)が増えています。

 ベトナム-MOH(ベトナム厚生省)は調査結果を基に、ベトナムの2型糖尿病は驚くべき速さで増えており、対策が必要だと警告しています。

1. ベトナムの糖尿病有病率

 ベトナムの糖尿病有病率に関する調査のいくつかをみてみましょう。

 Van Haiらが2000年にハノイで行った2,017人(16歳以上)を対象とした調査によると、糖尿病有病率は表1の通りです。

表1
ハノイ
平均3.62%
男性3.95%
女性3.46%

 Huy LieuとMaiによるハノイ、フエ、ホーチミン市の糖尿病有病者率の調査によると、結果は表2の通りです。

表2
 1990-19911992-1993
ハノイ1.2%1.4%
フエ0.96%0.98%
ホーチミン市2.52%2.68%

 国立内分泌内科学病院(National Endcrine Hospital)グループによるベトナム大都市(ハノイ、ハイファン、ダナン、ホーチミン市)での2002年の調査(30-64歳)の結果は表3の通りです。

表3
糖尿病有病者2.7%
IGT7.3%

 しかし、糖尿病の詳しいデータは限られた大都市だけに限られるなど、まだまだ十分なものとはいえません。

2. 糖尿病有病者率の地域差

 Dr.Ta Van Binhらの2002年の調査によると、ベトナムの糖尿病有病率は、都市部4.4%、平野部2.7%、山間部および沿岸部2.2%、山岳部2.1%と地域によって大きな差がみられました。都市部で糖尿病が増加している傾向が示されました。

ベトナムの地域別糖尿病有病率

 この調査結果を基に人口比率から算出した全国の糖尿病有病者率は2.7%になります。

3. 糖尿病治療と予防に対する理解と関心

 2002年に科学技術省、厚生省、国立内分泌内科学病院によるベトナム全国で9,122人を対象に行った糖尿病発症の理解に関する調査では、78.8%の人は糖尿病の原因を知らない、そして、70.5%の人は予防方法を知らないという結果になりました。そして、知っていると答えた人のなかでも、十分熟知している人の割合はとても少ないことが示されました。

 国民の糖尿病とその予防への自覚は非常に低く、医療関係者のなかでさえ糖尿病の治療とその予防について好ましくない見解がみられました。糖尿病の適正な治療と予防は一部に限定されているのが現状です。

4. ベトナムの糖尿病は増加する

 2000年の全国人口調査(General Department National Population Survey 2000)では、人口の自然増が1.43%とした場合、成人(30歳以上)の糖尿病有病率は5年間で5.8%に上昇するとしています。

 WHO(世界保健機関)は、発展途上国を対象とした今後25年間(2032年まで)の予測の中で、ベトナムの糖尿病有病率は全体で4.0%、都市部では6.5%になると発表しました。

 しかし、今後のベトナムの経済と社会がとても大きく複雑に変化することを考えれば、WHOの長期予想はもとより、5年先の予測であっても単なる概算とみるべきでしょう。

[ DM-NET ]

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