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2013年05月31日

運動療法の最新情報 運動との上手な付き合い方

第3の脂肪「異所性脂肪」 運動不足が引き金に
 脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪に蓄積すると考えられてきたが、それ以外の肝臓、筋肉、膵臓などにも第3の脂肪ともいうべき「異所性脂肪」として蓄積し、インスリン抵抗性やインスリン分泌に関わっていることが分かってきた。日本人は、皮下脂肪をためる容量が欧米人よりも小さく、少し太っただけで異所性脂肪が蓄積する可能性が高い。

 日本人の脂肪摂取比率は50年で約4倍に増え、交通機関の発達により身体活動量が低下している。高脂肪食や身体不活動が全身の肥満とは別に骨格筋細胞内脂質を増加させ、インスリン抵抗性を引き起こし、メタボリックシンドロームや2型糖尿病、動脈硬化症の発症につながっている。

 順天堂大学の田村好史先生は、骨格筋細胞内の異所性脂肪蓄積が、全身的な肥満から独立してインスリン抵抗性を惹起させる可能性をあきらかにした。実際に2型糖尿病患者が2週間程度入院すると、2〜3kg程の体重が減少し、これに伴い血糖値や中性脂肪値も改善する。その理由は、食事療法により、肝臓内の脂肪(脂肪肝)が減ることと、運動療法により骨格筋の細胞内脂肪が改善することだという。

 肥満症の人でも、1日の食事摂取カロリーを減らし、5〜10%程度の体重減少を行うだけでも、脂肪肝は著明に改善し、中性脂肪値や血圧が正常化することも分かっている。食事・運動療法をしっかりと行っていけば、異所性脂肪が改善し、確実に効果が出てくるという。

ウォーキングを週に5時間行うと死亡率が半分以下に
 40分以上のウォーキングを毎日行った2型糖尿病患者は、ほとんど運動しない患者と比べて、死亡の危険性がほぼ半分以下になることが「Japan Diabetes Complications Study(JDCS)」(主任研究者:曽根博仁・新潟大学教授)であきらかになった。

 研究チームは、JDCSに登録された2型糖尿病患者1,702例(平均58.5歳、女性47%)を対象に、8.05年(中央値)にわたり追跡調査を行った。質問票を用いて、余暇身体活動や職業を含むライフスタイルの調査を行った。種類や時間から1週間当たりの運動量を推計し、3グループに分け比較した。

 年齢、性別、糖尿病罹病期間で調整後、余暇の身体運動が週15.4METs・時以上の群は、週3.7METs・時以下の群に比べ、脳卒中のハザード比は0.55(95%CI:0.32〜0.94)、全死亡率のハザード比は0.49(95%CI:0.26〜0.91)と有意に低下した。

 2006年に健康づくりのための運動指針が改定され、生活活動・運動量を表すために、METs(メッツ)という単位が使われている。METsは安静の状態を1とした時に、その何倍の強さにあたる運動かを表したもので、通常のウォーキングは3METs、速歩は4METs、水泳は6METsなどであらわされる。

 身体活動量の単位「エクササイズ」(METs・時)は、運動強度(METs)と運動時間(時)の積であらわされる。通常のウォーキングなど日常的な運動の強度は3METs程度なので、これを週に5時間ほど続けると15METs・時に相当する。

第56回日本糖尿病学会年次学術集会

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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