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2015年08月17日
糖尿病性腎症の病態と治療〜バイオマーカー・尿中L-FABPの可能性
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前述のように糖尿病性腎症は、アルブミン尿が陽性になった後から腎機能が低下するものと想定されていたが、実際のところ腎機能評価に必要なクレアチニンやイヌリンのクリアランスは測定の繁雑さのためあまり行われておらず、実態は詳らかでなかった。その後、血清クレアチニン値から腎機能を推算するeGFRが普及したわけだが、それによって明らかになったことは、すべての糖尿病患者でアルブミン尿が現れた後に腎機能が低下するわけではないということだ。アルブミン尿が陰性にもかかわらずeGFRが60mL/分/1.73m2未満の患者が当科での検討では12.9%、JDDM研究では11.4%存在すると報告されている。
このような症例をどのように扱うべきかの検討が続けられ、一昨年に改訂された日本糖尿病学会と日本腎臓学会の合同委員会による糖尿病性腎症の病期分類では、eGFRが30mL/分/1.73m2未満の場合にはアルブミンの有無を問わず腎不全期とするとされた。
ここで糖尿病性腎症を早期診断することの重要性を改めて指摘したい。早期診断が重要な一つ目の理由はもちろん腎不全のリスクが高い患者を知ることだが、二つ目の理由は、アルブミン尿陽性の患者は心血管死のリスクが高いということだ。図2に示されるようにGFRが30mL/分/1.73m2を切ると心血管イベントの頻度が高くなるが、GFRが正常から中等度の低下であっても尿アルブミンレベルが高ければ心血管死ハイリスク状態にある。これを「心腎連関」と呼んでいる。
糸球体濾過量の低下および尿アルブミンの増加に伴い心血管死リスクが上昇する。
〔Matsushita K, et al. Lancet 375(9731): 2073-2081, 2010より作図〕
早期診断が重要な三つ目の理由は、微量アルブミン尿期に適切に治療すればアルブミンが陰性化し寛解に至るからである。報告により差があるが、微量アルブミン尿の3〜5割は陰性化が可能とみられる。さらに、アルブミン尿が寛解に至ると腎不全への進展リスクが低下するばかりでなく、心血管イベントのリスクも低下することが明らかになっている(図3)。
早期腎症が寛解した群は、不変群、進行群に比べ腎・心血管イベントの発症率が抑制されていた。
〔Araki S, et al. Diabetes 56: 1727-1730, 2007より作図〕
次は...低血糖や食後高血糖を極力減らしつつ、良好なHbA1cをめざす
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