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2026年05月08日

加熱式たばこの糖尿病リスクは紙巻と同等? 2.9万人を追跡した最新の疫学調査結果

キーワード
2型糖尿病 予防

 最新の疫学研究により、加熱式たばこ(たばこ葉を燃焼させずに加熱し、発生するエアロゾルを吸入する製品)の使用が2型糖尿病の発症リスクに与える影響が明らかになった。国立健康危機管理研究機構(JIHS)が勤労者約2万9,000人を対象に行った大規模なコホート研究(特定の集団を平均4.8年間追跡して病気の発生を分析する研究手法)の結果、加熱式たばこ使用者の糖尿病発症リスクは、非喫煙者の約1.6倍に達することが示された。これまで「紙巻きたばこより健康リスクが低い」と期待されてきた加熱式たばこだが、血糖管理の観点からは慎重な判断が必要だ。

非喫煙者と比較して発症リスクは1.6倍、併用では1.76倍に上昇

 今回の調査では、定期健康診断を受診した約2万9,000人の勤労者を平均4.8年間追跡した結果、2,141人が新たに糖尿病を発症した。統計的な調整(年齢や生活習慣など、結果を歪める可能性のある他の要因を考慮すること)を行った解析によると、非喫煙者に対する各使用群の糖尿病発症リスクは以下の通りだ。

  • 加熱式たばこ単独使用者:発症リスクは1.61倍
  • 加熱式たばこと紙巻きたばこの併用者:発症リスクは1.76倍
 さらに、加熱式たばこの使用量が多いほど、糖尿病の発症リスクが高くなる「量反応関係」も認められている。これらのデータは、加熱式たばこの使用が血糖値の悪化に直接的、あるいは間接的に関与している可能性を強く示唆している。

紙巻きたばこからの「切り替え」によるリスク低下は認められず

 喫煙歴のある人に限定した解析において、加熱式たばこ使用者の糖尿病発症リスクを紙巻きたばこ(紙で巻いた一般的なたばこ)使用者と比較したところ、その差はほぼ認められなかった(ハザード比1.01)。つまり、紙巻きたばこから加熱式たばこへ切り替えたとしても、糖尿病の発症リスクを有意に下げることにはつながらない可能性が高い。この点は、将来的な合併症予防を考える上で、非常に重要な科学的知見と言える。

血糖代謝を阻害する「酸化ストレス」と「インスリン抵抗性」

 なぜ、加熱式たばこが2型糖尿病(インスリンの分泌や作用が十分でなくなることにより、血糖値が慢性的に高くなる病気)のリスクを高めるのか。その背景には、加熱式たばこの成分が引き起こす生物学的な反応があると考えられている。

  • インスリン抵抗性の増大:インスリン(血糖値を下げる働きをもつホルモン)の効きが悪くなり、糖の取り込みがスムーズに行かなくなる状態。
  • 膵β細胞機能障害:インスリンを分泌する膵臓の細胞(膵β細胞)がダメージを受け、分泌能が低下すること。
  • 酸化ストレスと炎症:体内で活性酸素が過剰に増え、細胞や組織にダメージを与える「酸化ストレス」や全身の炎症が引き起こされ、糖代謝を阻害する。
 紙巻きたばこに比べて有害物質が少ないと謳われることもある加熱式たばこだが、上記のような糖尿病の病態に関与するプロセスを誘発する可能性については、依然として否定できないのが現状だ。

過去の喫煙習慣の残存影響と今後の展望

 今回の結果を解釈する上で留意すべき点は、加熱式たばこ使用者の多くが「過去に紙巻きたばこを使用していた」という事実だ。そのため、今回観察されたリスクの高さには、過去の喫煙によるダメージが残っている影響が反映されている可能性がある。
 現在、研究グループは追跡期間を延長し、紙巻きたばこの使用歴が全くない人が加熱式たばこを新規に使用した場合の影響や、長期的な切り替えの効果について、さらなる検討を予定している。

加熱式たばこ使用と2型糖尿病の発症リスク― 勤労者におけるコホート研究 ―(国立健康危機管理研究機構)

[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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