糖尿病Q&A1000

Q.895 エコノミークラス症候群について教えてください。

 エコノミークラス症候群は、医学的には深部静脈血栓症による肺塞栓という病気です。
 動脈の血管壁には筋肉があり、たとえて言うなら柔軟なゴムホースのように拡張と収縮を繰り返していて、それによって(動脈硬化などの病気がない限り)内部を流れる血液を先へ先へと送り出しているのですが、静脈の血管壁には筋肉がありません。そのため、長時間動かさず血管に対して外部から物理的な刺激がなにも加わらない状態が続くと、血管内部で血液の流れが滞りがちになります。そして静脈血管(とくに足の静脈)内で血栓という血液の塊が形成されます。
 静脈にできた血栓はなにかの拍子に(例えば血圧が変化したときに)、血管壁から剥がれて血流に乗り、別のところに運ばれることがあります。その血栓が行きついた先が脳の動脈なら脳梗塞(脳塞栓)、心臓の動脈なら心筋梗塞、肺の動脈なら肺塞栓を引き起こす可能性があります。
 日常の環境下では、脳塞栓や心筋梗塞の発症頻度に比べて肺塞栓の発症頻度はあまり高いものではありませんが、例えば長時間の手術を受けたあとなどの特殊な条件下では、肺塞栓も起こりやすくなります(長時間手術に対しては最近、静脈血栓の予防策が施されるようになってきています)。
 乾燥した空気の中、狭い座席に長時間座っていなければいけない旅客機内もかなり特殊な環境といえます。乾燥のために血液中の水分が失われ、血液が濃く固まりやすくなり、肺塞栓を招きます。それがエコノミークラス症候群です。最近の事例では、中越地震の後、自動車内での避難生活を強いられた人たちにこの病気で亡くなる方がいらっしゃったことは、記憶に新しい出来事です。
2006年05月24日

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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