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海外の糖尿病事情 7 [ 中国 ]

2005年07月
DITN 2005年1月5日発行号掲載:「海外糖尿病事情」より

医療スタッフ向けの情報紙『DITN(DIABETES IN THE NEWS)』(発行所:メディカル・ジャーナル社)に連載された「海外糖尿病事情」よりご紹介します。
 反日運動が高まり、日中関係の悪化が懸念されますが、近年目覚しい経済発展を遂げる中国への関心を寄せている方は少なくないと思います。

 IDFの資料2003年版によれば、中華人民共和国(香港・マカオを除く)の1型糖尿病有病率は0.02756%、成人糖尿病有病率は3.0%となっています。因みに香港では1型糖尿病有病率0.04%、成人糖尿病有病率12.1%、マカオでは1型糖尿病有病率0.03%、成人糖尿病有病率10.7%です。結論を導くためには遺伝的な要素、診断基準、診断機会に対する条件の比較など、更なる研究が必要となりますが、現時点で入手可能な数字が示す限り、経済発展に伴い、今後、世界一の人口を有する中華人民共和国においても爆発的に糖尿病人口が増加してしまうことが懸念されます。

 一口に「中国」と言っても政治的・経済的・文化的な視点によって、あまりに多様性に富んでおり、なかなか捉えることが難しいという現実があります。今回は、中国北部の天津市の医療関係者からの聞き取りを中心とした糖尿病事情と言うことで述べさせて頂きます。

 まず、医療に関して、つい10年ほど前までは共産主義化の下、全て無料で提供されていました。しかしながら、経済の資本主義化に伴い、医療が有料化されました。日本のような、皆保険、フリーアクセスでは無く、個々人が保険会社と契約し、保険会社が契約した医療機関で受診しなければ保険医療が受けられません。

 患者は、まず、全額自己負担で医療費を支払い、後に保険会社から払い戻しを受ける形となります。イメージとしては米国型の保険制度に近いものと考えて良いと思います。医療の有料化に対し、不満を持つ人々も農村部を中心に多数存在するそうです。保険の種類については非常に多く、紙面の都合上、ここでは省略させて頂きます。

 保険医療の充実に関しては、数年前にSARSが流行した時に一般の人々が普通に医療機関を受診することが難しい状態にあったことが世界的レベルで感染が拡大したという理由で、米国から圧力が掛かったこともあり、政府も重点を置いているそうです。

 しかしながら、現在の保険制度の下で保険医療を受けたとしても、自己負担は4割となり、月々の保険料の支払いを考慮すれば、保険に加入せず、医療機関で受診をする状態になって全額自己負担で支払う方がトータルでは結局安くつく状態であるため、特に農村部では保険の加入は、あまり進んでいないのが現状のようです。

 糖尿病医療については、意外にもインスリンは必須医薬品として、全て国家負担で提供されるそうです。そのことが理由となっているか否かは断定できませんが、1型糖尿病に比べ、2型糖尿病患者が医療機関で受診する率は、あまり高いとは言えないようです。

 中国の国民性として、「できるだけ、医療機関を受診せずに我慢をして、自ら治す」ということが美徳とされており、相当症状が悪化した段階にならないと医療機関で受診しない傾向があり、継続的な受診ということ自体、まだまだ一般的ではない傾向があります。また、七福神に見られるように「太っている方が裕福であることを示す」という考え方が未だに根強く残っており、肥満体は健康体という考え方もあるそうです。

 2型糖尿病の場合、はっきりとした症状があらわるまでに時間がかかることも医療機関で受診ケアを受ける率が低いと言われている原因の一つと考えられます。そのような状況なので、予防のための検診を受けるということが、まだ人々に受け入れられていないため、今後、ライフスタイルの変化も伴い、中国においても2型糖尿病の有病率が増加することが懸念されています。また、2型糖尿病患者の場合、医療機関の指導下におけるケアよりも伝統的な漢方治療に頼る傾向も根強くあります。

 一方、太極拳や散歩など運動療法、医食同源に基づく食餌療法に積極的に取り組む傾向も強くあり、医療に頼り過ぎず、“自己管理”という点を考慮すれば、患者の意識は日本人の患者よりも自立的な面があるのかもしれません。

 医療の面において、わが国は、漢方医療を始め、古来から実に様々な知識を中国から取入れ、恩恵を被ってきました。医療面での交流は、反日感情を超え、平和的な外交を実現しうる手段となるものと信じています。
©2005 森田繰織
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