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2006年06月16日
肝臓から糖尿病や肥満を改善させる信号 東北大研究グループが発見
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摂取エネルギーが過剰になったときに、肝臓が基礎代謝を活発にして体重が増えないように調節するよう信号を出していることを、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授(内分泌代謝学)らのグループがマウスの実験で明らかにし、米国の科学誌「Science」に発表した。
脂肪は体内でおもにエネルギーの貯蔵庫としての役割を果たしている。ヒトも含めて多くの動物が生きる上で脂肪が果たす役割は重要だ。しかし過剰に摂取するとさまざまな健康問題をもたらす。 肝臓はエネルギー摂取に応じ、蓄積する脂肪量を変えることができる。肥満の患者では、脂肪肝(肝臓への脂肪の蓄積)を高頻度で合併することが知られている。 今回の研究では、肝臓内に脂肪がたまり過ぎると、肝臓から脳に「危険信号」が発信されることが解明された。脳は、この信号により肝臓に脂肪が蓄積しているという情報を得、全身の脂肪組織に代謝を活発にし脂肪を分解するよう指令を出していると考えられている。 マウスに脂肪肝を誘発させたところ、肝臓内に脂肪を過剰蓄積させたマウスは、意外にもエネルギー消費(基礎代謝)が通常より3割増え、1週間で脂肪が半減した。糖尿病の症状も改善したという結果を得たという。 今回の研究成果は、肥満に糖尿病などの伴う患者などの新しい治療の開発につながる研究として期待されている。 Science, Vol 312, no 5780, 1656-1659, June 2006. ●詳細は「Science」のサイトへ(英文/要約)
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日本医療・健康情報研究所
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