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2008年05月16日

ミャンマーのサイクロン被災者を支援 糖尿病患者にインスリンを届けたい

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 ミャンマーは5月2日から3日にかけて、大型サイクロン「ナルギス」に襲われた。ナルギスによる災害から2週間が経過し、世界各国が支援を申し出ているが、復旧は進んでいない。被害の大きかったデルタ地帯は壊滅状態だという。

 ミャンマーでは時間が経過するにつれ、感染症を含む病気を発症、けが、慢性的な病気が悪化する人が増え、死者の数も増えている。国連は14日、「ナルギスにより深刻な被害を受け、緊急の援助を求めている人の数は160万から250万人に上るだろう」と発表した。推計によると死亡者と行方不明者を合わせた数は6万人から10万人に上る。

被害の大きかったエヤワディ管区のデルタ地帯


国際赤十字のプレスリリース
より

インスリン・フォー・ライフ(IFL)
のホームページ
insulinforlife.org(英文)

 ミャンマーの災害では、すでに世界各国から支援が発表されている。日本政府も9日、国連などを通じて1,000万ドル(約10億円)の緊急支援を行うことをあきらかにした。しかし、ミャンマー政権が海外からの人道支援スタッフ受け入れに消極的だ。

 国際赤十字の発表によると、特に被害の大きかったエヤワディ管区のデルタ地帯は、原形をとどめないほど壊滅しているという。こうした自然災害では、まず感染症の大規模発生の対策が施される。糖尿病などの慢性疾患の対策はどうしても後回しになることが多い。

 海外から寄せられた情報によると、被災した地域ではインスリン療法を必要とする糖尿病患者が少なくないという。1型糖尿病患者はインスリン治療をできないと、死亡してしまうおそれがある。

使われなかったインスリンが命を救う
 医療体制が整備されていない途上国や、自然災害で被災した国や地域を対象に、糖尿病患者を救うため国際的な活動を展開している「インスリン・フォー・ライフ(IFL)」という組織がある。今回のミャンマーのサイクロン災害でも、IFLはいちはやく支援を呼びかけた。

 IFLはオーストラリアを本拠地に活動している。主な内容は、先進国で使われなくなったインスリン製剤や測定センサー、注射針、血液検査などのための医療資材を収集し、途上国などの糖尿病専門医のいるクリニックや糖尿病協会、地域の協力者に送付すること。

 先進国の糖尿病協会や市民団体などがIFLの活動を支援している。根底で支えているのは市民の運動であり、世界中の糖尿病患者や医療スタッフたちだ。

 IFLはオーストラリア、米国、英国、ドイツ、ニュージーランドなどで未使用の医薬品や医療資材の収集を、現地の糖尿病協会や市民団体、個人の糖尿病患者などの協力を得ながら行っている。活動の輪は広がっており、収集し途上国などに寄付したインスリンの量は2002年には2万7,700mLだったが、2006年には10万5,000mLと4倍近くに増えた。

 IFLの活動の中心となるロン・ラーブ理事長は、国際糖尿病連合(IFL)の副理事長を務める1型糖尿病患者でもある。今回のミャンマーの災害について、ラーブさんは「インスリンや医療資材が集まり、糖尿病患者を診ることのできるクリニックや信用できる組織が見つかれば、インスリンや医療資材を緊急に、1日で送ることができる」と話している。

 サイクロン災害の5日後にはインスリンなどの医療資材をまとめ、シンガポールのミャンマー大使館を通じ送付できる準備ができていたという。荷物の内容は、インスリン(速効型インスリンと中間型インスリン) 5,000mL、血糖試験紙 1,000枚、血糖測定器 6台、測定センサー 200枚、0.5mL注入器 2,000本などだ。

途上国でも糖尿病は増加
 ミャンマーに限らず、途上国で2型糖尿病は爆発的に増加している。ほとんどの場合、糖尿病患者が医療機関で適切な治療を受けるは困難で、糖尿病の療養や予防についての知識も十分ではない。

 日本でインスリン・フォー・ライフ(IFL)の活動を支援している国際糖尿病支援基金の森田繰織会長はミャンマーを訪れ聞き取り調査を行った。2006年の時点で「糖尿病専門医は5人しかおらず、しかも料金の高い私営の医療機関にいる」という。

エンジョイツアークラブ14周年記念パーティー
日 時2008年6月28日(土)10:30
受付開始 11:00 開会 14:00 閉会
会 場ホテルパシフィック東京(JR品川駅前)
1階 早蕨(さわらび)
連絡先(株)創新社
東京都港区西新橋2-8-11 第7東洋海事ビル8階
Tel.03-5521-2881
主な内容 記念セミナー「途上国の糖尿病事情とIFLの活動」 他
Neil Donelan(インスリン・フォー・ライフ)

エンジョイツアークラブ

 ミャンマーの糖尿病患者は「民間療法を取り入れながら、糖質を減らし、野菜を中心とした自己流の食事療法を実践している」のが実情だという。

 国際糖尿病支援基金は、今回の災害の支援としてIFLに対し30万円を寄付したが、現地の糖尿病患者のケアは今後難航が予測されており、「もっと多くの支援が必要だ」と支援参加のための募金を広く呼びかけている

 IFLで途上国や被災地へのインスリンの送付や、援助活動を指揮しているNeil Donelan氏が6月28日に来日し、海外旅行などを通じて糖尿病患者による国際交流を実施している「エンジョイツアークラブ」の記念パーティーで、海外の糖尿病患者の支援活動について講演する。

関連情報
国際糖尿病支援基金
インスリン・フォー・ライフ(IFL)(英文)
海外の糖尿病事情「ミャンマー」(わが友、糖尿病)
国際交流 エンジョイ(EJ)ツアー

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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