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2008年06月27日

「足の自覚症状」54%、早期診断が有用 日本糖尿病対策推進会議

 糖尿病患者の54%は足に何らかの自覚症状を感じ、58%は足に外観異常を感じている―日本糖尿病対策推進会議が国内約20万例を対象に行った糖尿病神経障害の大規模調査で、神経障害のある糖尿病患者の割合が高いことがあきらかになった。

 糖尿病の合併症のために年間3,000人以上が足を切断している。糖尿病合併症が患者と社会にもたらす損失は大きい。早期発見するために、足の形態や足の症状をチェックすることが重要となる。日本糖尿病対策推進会議では、「足チェックシートなどのツールを活用して、足の症状や外観異常の定期的に診察してほしい」と呼び掛けている。
「自覚症状のない神経障害」も多い
 この報告書のタイトルは「日本における糖尿病患者の足外観異常および糖尿病神経障害の実態に関する報告」。調査期間は2006年10月から07年12月までの15ヵ月間、調査した患者の数は19万8,353例。医療機関を受診している糖尿病患者のおよそ5%に相当する。

 日本医師会、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会、日本歯科医師会、健康保険組合連合会、国民健康保険中央会らで構成する「日本糖尿病対策推進会議」がまとめた。報告書について、6月に東京で開催された「第51回日本糖尿病学会」の特別シンポジウムで発表された。

糖尿病神経障害の頻度(足の症状)(抜粋)
 足の病気を予防するために、血糖コントロールによる糖尿病そのものの治療がもっとも重要となる。糖尿病神経障害の大規模調査では、HbA1c値の高い血糖コントロールが不良の人ほど、足の症状と外観異常の頻度は高くなった。
日本における糖尿病患者の足外観異常および糖尿病神経障害の実態に関する報告(日本糖尿病対策推進会議、2008年)
糖尿病患者が自分でチェックできる「足チェックシート」
 自覚症状がなくても神経障害があらわれているかもしれない。足の異常に気付いたら、「痛くない」などの理由で放置してしまわずに、早めに医師や医療スタッフに相談することが大切。
 日本糖尿病対策推進会議は、糖尿病患者が自分で「足の症状/足の外観」をチェックできる「足チェックシート」やポスターなどを作成し、医療機関に配布している。

日本糖尿病対策推進会議(日本医師会ホームページ)
 調査には、合併症の早期発見を促すために日本糖尿病対策推進会議が作成した「足チェックシート」が活用された。足の症状や外観異常は患者が自己記入し、罹患期間、血糖コントロール状態、アキレス腱反射など神経機能は医師が記入した。

 チェックシートの集計結果によると、患者の平均年齢は64.4歳、男性57%、女性43%で、2型糖尿病が94.8%を占めた。罹病期間は平均10.5年、BMIは平均24.3、空腹時血糖値は平均140.1mg/dL、HbA1c値は平均7.1%だった。治療については、経口血糖降下薬が58.7%、インスリン治療が19.7%、経口血糖降下薬+インスリン治療が4.6%、食事療法のみが17.0%だった。

 「糖尿病性神経障害を考える会の簡易診断基準」を基に神経障害の有無を調べた。アキレス腱反射と音叉による振動覚の両方の検査を実施した症例のうち、「神経障害あり」と判定されたのは47%で、そのうち約4割は、足に自覚症状が現れていないもののアキレス腱反射や振動覚に異常がみられる「無症候性神経障害」だったことが分かった。

 今回の調査では、振動覚の実施率は約36%、アキレス腱反射の実施率は約68%で、アキレス腱反射の実施が多いという結果になった。日本臨床内科医会が2000年に行った「糖尿病性神経障害に関する調査研究(日臨内研究2000)」で、患者の神経障害を診察するときにアキレス腱反射が有用であることが報告され浸透したとみられている。

糖尿病ホームページ(厚生労働省)

関連情報
糖尿病性神経障害の実態調査「日臨内研究2000」
 日本臨床内科医会が行った調査研究によると、医師が神経障害ありと判断した症例は糖尿病患者の37%で、網膜症23%、腎症14%に比べ高率だった。神経障害は加齢に伴って高率になる傾向が網膜症や腎症より顕著で、70歳代では42%に達した。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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