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2008年07月08日

インスリンを生産するβ細胞を新たに生成 米の幹細胞研究

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 膵臓に3種類の遺伝子を入れるだけで、血糖値を下げるインスリンを分泌するβ細胞を作り出すことに、米ハーバード大学幹細胞研究所のダグラス・メルトン教授らの研究チームがマウスの実験で成功した。この研究成果は6月に米フィラデルフィアで開催された「国際幹細胞研究学会」で発表された。

 1型糖尿病はインスリンを生産するβ細胞が破壊されることで発症する。そのβ細胞を胚性幹細胞から生成する研究を、ダグラス・メルトン教授らは10年間以上をかけ行っている。

 幹細胞は体内のさまざまな細胞に分化することのできる未分化な状態の細胞で、「胚性幹細胞(ES細胞)」「体性幹細胞」「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」などがある。このうち受精卵から作られるES細胞は、細胞分裂を経てさまざまな組織に成長する。体を構築する皮膚、骨、神経、血液、心臓など200種類の細胞に変化する能力があるので「万能細胞」とも呼ばれている。

 幹細胞から細胞を増殖し、壊された臓器などを再生できれば、1型糖尿病、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病などの治療が困難な病気を根治する方法を開発できる可能性がある。

 膵臓のランゲルハンス島は、インスリンを生産するβ細胞を含むさまざまな細胞からなる。研究チームは、膵臓の細胞に関連した遺伝子を注入すれば、新しいβ細胞の増殖や分化を刺激し、β細胞を作りだせるのではないかと考えた。β細胞の生成のさまざまな過程に関与する遺伝子を識別し、遺伝子操作でβ細胞を作れないようにしたマウスの膵臓に注入した。1000種類以上を試し、受精卵からβ細胞をつくる信号となる遺伝子をつきとめるのに成功した。

 胚には膵臓の部分を生じさせる前段階の前駆体や幹細胞がある。これを分化させ自己複製による単純な過程で新しいβ細胞を生成することができれば、倫理的な課題のあるES細胞などを使わずにβ細胞を生成できるという。「まだ研究過程であり、治療に応用するにはいっそうの研究が必要」としながらも、成功すれば糖尿病患者へ移植にβ細胞の線源を供給する治療法の開発につながるとしている。

ハーバード大学幹細胞研究所(英文)
国際幹細胞研究学会(英文)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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