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2009年01月07日
インスリンポンプを使ったCSII 世界で利用者が増えている
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今後はインスリンの頻回注射に加え、「持続皮下インスリン注入(CSII)療法」も増えそうだ。CSII療法についての海外の話題を紹介する。
これに対して「持続皮下インスリン注入(CSII)療法」は、インスリンポンプを用いてインスリンを持続的に注入する治療。インスリンポンプは携帯電話ぐらいのサイズで、本体は服のポケットに入れて持ち運ぶことができる。腹やお尻などの皮下脂肪に入れたカテーテル(細い管)から、微量のインスリンを24時間、自動的に注入し続ける(基礎分泌に相当)。食事前などにスイッチを押せば、追加注入できる(追加分泌に相当)。
強化インスリン療法を行う1型糖尿病患者のうち、インスリンポンプの使用者は世界中で急速に増えており、25万人以上とみられている。使用率は米国、イスラエル、ドイツで15%から20%に達し、オランダ、スウェーデン、フランス、スイスでも10%前後となっている。

「Insulin Pump Services - Report of the Insulin Pumps Working Group」(Diabetes UK、2007年) |

低血糖がよく起こる糖尿病患者では、低血糖の原因や症状をよく理解し、低血糖になったときに対応できるようにトレーニングを行うことが必要となるが、海外ではインスリンポンプ療法により血糖コントロールが改善し、低血糖の発生回数が減ったという報告がある。
患者にとって魅力的なのは、インスリンポンプの最近の機種は利便性が向上しており、食事時間の変動や患者のライフスタイルに柔軟に対応できるようになっていること。時間帯に合わせてインスリン注入量が変わるようにプログラムする機能を使えば、例えば睡眠中に低血糖を起こしやすい人はその時間帯は注入速度を落とし、早朝に高血糖になりやすい人はその時間帯に速度を上げるなどして、血糖値を安定的に維持できる。運動を行う場合などは一時的に注入速度を落とすこともできる。
英国保健省と国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence: NICE)は、2008年7月にインスリンポンプ療法ガイダンスの改訂版を発表した。そこでは、インスリン頻回注射(強化インスリン療法)を行っている12歳以上の1型糖尿病の患者で、低血糖が起こったり、HbA1cが8.5%以上で血糖コントロールをもっと改善する必要がある場合は、インスリンポンプ療法という選択肢があることが示されている。
2005年より活動をしているDiabetes UKの「インスリンポンプ ワーキンググループ」がまとめた報告書では、中間型や持効型溶解など作用時間の長いインスリン製剤を含むインスリン注射による強化療法で、良好な血糖コントロールを得られなかった成人の1型糖尿病では、インスリンポンプ療法を考慮するべきだと示唆している。
報告書では、インスリンポンプ療法の対象となるのは、(1)「HbA1c7.5%未満で合併症がない」あるいは「HbA1c6.5%未満で合併症がある」場合で、QOL(生活の質)に深刻な悪影響をもたらす低血糖が頻繁に起こる患者、(2)血糖コントロールを改善するために厳格な治療を行っており、そのため深刻な低血糖が起こっている患者としている。
Diabetes UKは、インスリンポンプ療法が適用となるが治療を受けられていない患者は5万人以上と推測している。サイモン・オニール医師は「インスリンポンプがすべての糖尿病患者に勧められるわけではないにしても、治療が必要であったり望んでいる患者にとって、この治療が有用であることはあきらかだ」と強調している。
糖尿病の治療目的は、網膜症、腎症、神経障害といった合併症を予防し進行を抑え、動脈硬化による心筋梗塞、脳卒中などを防ぎ、健康な人と変わらない寿命を確保すること。長期的にみた場合、合併症のあらわれない時期から血糖コントロールを良好に行い
Raising awareness of insulin pump therapy in the UK
Diabetes UKがインスリンポンプについて発表したニュースリリース(英文)
インスリンポンプ療法を推奨(2007年3月)
インスリンポンプ・キャンペーンにご参加ください(2007年6月)
英国でインスリンポンプを利用できないでいる患者は5万人(2007年12月)
インスリンポンプ療法の新ガイダンス(2008年7月)