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2010年03月30日

中国が世界一の「糖尿病大国」に 10人に1人が糖尿病

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 中国でも2型糖尿病の有病数が爆発的に増えており、「流行病」の様相を呈しているという研究調査が発表された。中国の糖尿病有病数は9240万人で、世界で糖尿病有病数がもっとも多いとされるインドの4090万人を抜き、世界一の「糖尿病大国」となった。

 発表によると、中国の成人の糖尿病有病率は9.7%で、10人に1人が糖尿病。さらに15.5%が糖尿病予備群の状態だという。有病率は日本の7.3%を大きく上回り、米国の12.3%に匹敵している。*
急速な経済発展でライフスタイルが変化
 調査は、北京市の日中友好病院の楊文英(ヤン・ウェンイン)医師らが参加し、2007年6月から2008人5月にかけて実施された「国民糖尿病・代謝疾患研究会」によるもので、医学誌「New England Journal of Medicine」3月25日号に発表された。

 対象となったのは中国の14地域の自治体に在住する4万6239人の成人。経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行い、空腹時血糖値(IFG)と2時間値を用いて、診断未確定の糖尿病と、空腹時血糖異常(IFG)あるいは耐糖能異常(IGT)などを含む境界型糖尿病(prediabetes)を判定した。すでに糖尿病と診断されていた患者については、原則として自己報告にもとづき判定した。

 その結果、次のことがあきらかになった

  • 新たに糖尿病と診断された症例を含む中国の成人の糖尿病有病率は9.7%(男性 10.6%、女性 8.8%)。有病数は9240万人(男性 5020万人、女性 4220万人)。
  • 中国の成人の境界型糖尿病(prediabete)の有病率は15.5%(男性 16.1%、女性 14.9%)。有病数は1億4820万人(男性 7610万人、女性 7210万人)。
  • 中国の成人の年齢層別の糖尿病有病率は20〜39歳で3.2%、40〜59歳で11.5%、60歳以上で20.4%、加齢にとともに上昇している。
  • 糖尿病有病率は肥満にともない上昇する。体格指数(BMI)が18.5未満で4.5%、18.5以上25未満で7.6%、25以上30未満で12.8%、30以上で18.5%。
  • 糖尿病有病者は都市部で特に増えている。都市部の在住者が11.4%だったのに対し、農村部では8.2%だった。
  • 耐糖能異常(IGT)が、空腹時血糖異常(IFG)よりも有病率が高い。男性でIGT 11.0%、IFG 3.2%、女性でIGT 10.9%、IFG 2.2%だった。
6割が「糖尿病であることに気づいていない」
 現在、中国には9240万人の糖尿病患者がおり、インドを超え、世界最多の糖尿病患者を抱える国になっている。日本の糖尿病有病数は約890万人とされており、これに比べると中国の糖尿病人口がいかに巨大であるかをうかがい知ることができる。

 糖尿病が増加した背景として、中国の急速な経済発展と、農村部から都市部への人口流入によりライフスタイルが変わり、高エネルギー、高脂肪、高塩分の食生活が好まれるようになったことや、運動不足が指摘されている。

 研究者らは、中国の糖尿病有病率などが国際糖尿病連合(IDF)が公表している数字よりも大幅に高くなったことについて、「より厳格な検査方法が用いられるようになったからだ」と述べた上で、「中国で糖尿病が上昇傾向にあることは過去30年の研究からもあきらか。中国は人口が大変に多い国であり、糖尿病は公衆衛生上のもっとも重要な課題になっている」と強調している。

 恐ろしいことに糖尿病が疑われる人の60.7%が診断も治療も受けていないという。研究者は「政府は糖尿病の治療と予防を強化する国家戦略を早く立ち上げる必要がある」と述べている。

Prevalence of Diabetes among Men and Women in China
New England Journal of Medicine, Volume 362:1090-1101, March 25 2010, Number 12
Diabetes Reaches Epidemic Proportions in China(Tulane大学リリース)

*National prevalence(2010年)、Diabetes Atlas, 3rd Edition(国際糖尿病連合)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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