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2013年08月26日

血糖値が高いと認知症リスクが上昇 糖尿病予備群も注意

 糖尿病と診断されるほどではないが、血糖値が高めの高齢者は、認知症になりやすいことが分かった。血糖値が高めの高齢者は、7年以内に認知症になるリスクが最大で18%上昇するという。
高血糖が脳のエネルギー代謝を悪化
 この研究は、米ワシントン大学公衆衛生大学院のポール クレーン準教授らが、医学誌「ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン」に発表したもの。

 糖尿病は、血糖値を適正にコントロールしないでいると、目(糖尿病網膜症)、腎臓(糖尿病腎症)、神経(糖尿病神経障害)の三大合併症のほか、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすことが知られている。これに加えて注目されているのが、認知症との関連だ。

 糖尿病者の人ではそうでない人に比べ、将来に認知症を発症する可能性が高まる。その原因はすべては解明されていないが、血糖値を調整するインスリンの作用が低下し、脳内のエネルギー代謝が悪化すると、神経細胞が死滅して認知症が進行する可能性があると考えられている。また、より高血糖が血管の炎症を引き起こすおそれがあるという。

 この研究は、高齢者の認知症発症の原因をさぐる目的で1994年の開始された大規模研究「Adult Changes in Thought研究」に参加した、65歳以上の米国人を対象に行われた。

 研究チームは、認知症と診断されたことのないワシントン州在住の65歳以上の高齢者2,067人(男性839人、女性1,228人)を対象に、平均6.8年間にわたって追跡して調査した。

 研究開始時の参加者の平均年齢は76歳で、登録の時点で糖尿病にかかっていたのは232人だった。終了時に認知症を発症したのは524人で、うち74人が糖尿病も発症した。

 糖尿病患者では、高血糖は認知症リスクの上昇に関係していた。平均血糖値が160mg/dLの患者と比較した場合の認知症の発症率は、170mg/dLで1.01倍、180mg/dLで1.15倍、190mg/dL群で1.40倍だった。

血糖値高めの人も認知症リスクが上昇
 研究チームは、のべ3万5,264回の血糖測定を行い、1万208回のHbA1c測定を行った。HbA1cは、赤血球内の酸素を運ぶヘモグロビンAに血液中のブドウ糖が結合したもので、パーセントであらわされる。赤血球の寿命は約120日なので、HbA1cは過去1〜2ヵ月の血糖の平均値を示す。

 その結果、糖尿病ではなくとも平均血糖値が115mg/dLと高めの人は、平均血糖値が100mg/dLの正常な人に比べ、認知症の発症率が18%高いことがわかった。

 また、糖尿病のある人では、平均血糖値が190mg/dLの人は160mg/dLの人に比べ、認知症リスクが40%高かった。

 「糖尿病ではなくとも血糖値が高めの人は、血糖値が正常の人に比べ、認知症を発症するリスクが高いことが分かりました。ただし、血糖値が上昇するのを抑えれば認知症をどれだけ予防できるかを示した研究結果はまだありません。今後の研究の課題となります」と、クレーン氏は言う。

 米国立衛生研究所によると、血糖値は1日のあいだで変動するが、健康な人は空腹時であれば、126mg/dL以上に上昇することはないという。

 健診で「血糖値が高めです」と指摘された人は、認知症に対策するためにも、食事や運動などの生活スタイルを見直し、定期的な健診を受け続けた方がよさそうだ。

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Dementia risk tied to blood sugar level, even with no diabetes(グループヘルス研究所 2013年8月7日)
Glucose Levels and Risk of Dementia(ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン 2013年8月8日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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