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2014年11月25日

40歳を過ぎると体力は低下 体力向上に効果的なインターバル速歩

キーワード
運動療法
 年齢が上がるに伴い進む「体力低下」。体力を維持するための運動として、「インターバル速歩」が注目されている。
40歳を過ぎると体力は低下していく
 40歳を過ぎたあたりから、体力低下の下降カーブは急になる。ただ、50~60歳代までは衰えがあっても、日常生活に支障を感じない。しかし、そのままにしていると70歳代で、要介護の状態になりかねない。そのために、体力を維持する運動の継続が必要になる。

 年齢を重ねても今の体力をできるだけ維持し、将来も自立した生活を送りたい。そのためには日ごろの運動が必要だ。しかし、「体力が低下している」「膝や腰を痛めている」「忙しくて運動の時間をとれない」という人にとっては、それが難しい。

 そこで注目されているのが、安全に運動の強度を高められる「インターバル速歩」だ。

「サッサカ歩き」と「ユックリ歩き」を繰り返すウォーキング
 「インターバル速歩」は、信州大学の能勢博教授(スポーツ医科学)らが、中高年者の健康増進を目的に開発した運動法だ。高齢者や体力に自信のない人が安全・効果的に行える運動として考案された。数多くの医学研究で健康増進の効果が実証されている。

 インターバル速歩は「サッサカ歩き」と「ユックリ歩き」を数分間ずつ交互に繰り返すウォーキング法。筋肉に負荷をかける「サッサカ歩き」と、負荷の少ない「ユックリ歩き」を合わせることで、筋力・持久力を無理なく向上させることができる。

 1日15分から始められる手軽さも、運動を長く続けられるポイントとなる。体力のない高齢者や、忙しくて時間がとれないという人でも、無理なく続けられる運動法だ。

 インターバル速歩には、一律のノルマが課されていない。1人ひとりの体力にあった回数をこなすよう指導が行われる。ふだん運動していない人であれば、1日30分・週4日以上を5ヵ月継続することを目標とする。

体力低下を防ぐために最大体力の70%以上の運動が必要
 体力は20歳代にピークを迎え、30歳を過ぎると、歳を重ねるとともに低下していき、歳を10歳とるごとに5~10%ずつ低下していくという。

 体力を低下させないために、最大体力(最大酸素摂取量)の70%以上の運動を続ける必要がある。「長時間ただ歩くより、最大体力の70%以上の運動を一定の頻度で、一定の期間続けることが、健康・体力づくりには効果的です」と能勢教授は説明する。

 しかし、こうした運動は「ややきつい」と感じる負荷の高い運動となる。3分間継続すると、血中の乳酸レベルが上昇し「きつい」と感じるようになる。

 そこで、インターバル速歩では、3分間の「サッサカ歩き」の後、3分間の「ユックリ歩き」を挟むことで、尿酸レベルが低下し、ふたたび速歩が可能になる。結果的に長時間の歩行を達成できるようになる。

腰や膝に不安のある人でも続けられる
 生活習慣病の運動療法では、運動習慣のない人や、筋力が落ちている人に、強度の高い運動が勧められることは少ない。筋力が弱いと腰や膝に負担がかかりやすいからだ。

 しかし、ある程度の負荷を体に与えないと、運動の効果は得られにくい。インターバル速歩は、安全に運動の強度を高められる運動法として注目されている。

 個人の体力にあった個別運動プログラムを実施するには、専門のトレーナーに自分の最大体力を測定してもらい、それに合わせてトレッドミルなどのマシンを用いた個別運動プログラムを作成する必要がある。

 しかし、「このやり方は費用が高くなり、専門家の指導も必要であり、実行するのは難しい。決められた時間と場所に行かねばならない、という不便さもある。インターバル速歩であれば、いつでも取り組める」と、能勢教授は言う。

インターバル速歩でインスリン抵抗性が改善
 インターバル速歩の効果は、さまざまな研究で確かめられている。デンマークのコペンハーゲン大学の研究チームは、インターバル速歩が通常のウォーキングに比べ、血糖コントロールをより向上させることを実験で確かめた。

 研究チームは、薬物療法で治療を受けている2型糖尿病患者に、1時間の運動を週に5回行うよう指導した。その結果、インターバル速歩に取り組んだ患者では、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが筋肉や肝臓、脂肪細胞で正常に働かなくなる「インスリン抵抗性」が改善されたことが明らかになった。

 研究ではインスリン感受性の指数は50%近く改善していた。この変化はインターバル速歩を行った群のみでみられ、通常のウォーキングを行った群では認められなかった。

インターバル速歩の指導を行うシステムを開発
 熟年体育大学リサーチセンターと信州大学は、インターバル速歩の指導を行うシステム「i-Walk System」を開発した。12月より健康保険組合や企業の健康管理センターなどに向けてサービスを提供する予定だ。

 熟年体育大学は、松本市と信州大学が1997年に立ち上げた健康・体力づくりプロジェクト。活動の一環として、長野県内で5,400人超の中高年者がインターバル速歩に取り組んできた。

 このシステムでは、活動量計で測定した運動のデータや推定体力年齢、アドバイスなどをiPhoneアプリなどで見られる。アドバイスは約3万通りを用意。過去2週間のデータをもとに選び出して配信する。

 よりインターバル速歩に取り組みやすくするために、気圧センサーと加速度センサーを内蔵した専用の活動量計「i-Walk Pro」も開発した。

 測定データをもとに、保健師などのトレーナーがサポートする仕組みが考えられている。今後は、インターバル速歩を適切に指導できるトレーナーを養成・サポートする「i-Walk Partner」事業も展開し、普及を促進する。

 普及が進んでユーザーが10万人規模になれば、データベースを活用した運動効果予測アルゴリズムを開発したり、糖尿病患者の運動効果など、疾患別のデータを予防や治療に役立てることもできるという。

NPO法人熟年体育大学リサーチセンター
The Effects of Free-Living Interval-Walking Training on Glycemic Control, Body Composition, and Physical Fitness in Type 2 Diabetic Patients(Diabetes Care 2013年2月)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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